脂質異常症(コレステロール、中性脂肪の異常)
次のような方は脂質異常症かもしれません。もし自分に当てはまる項目があれば、この記事をさらに読み進めて頂き、内科受診を検討してください。
〇健康診断の血液検査の結果がD判定以上だった 〇近親者に心筋梗塞や脳梗塞になった人、または脂質異常症で治療中の人がいる 〇20歳の頃より体重が20kg以上増加し、お腹周りが気になるようになった 〇以前、コレステロールや中性脂肪の薬を飲んでいたが、正常値になったので飲むのを止めてしまった 〇最近、健康診断を受けたことがない 〇肉類や卵などの脂っこい食事や甘い物が好きで、野菜や魚をあまり食べない。また、運動は苦手である。 〇毎日2杯以上のアルコールを摂取している |
脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症は、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が血液中に多く存在し、HDL(善玉)コレステロールが足りなくなる状態を指します。これらは動脈硬化を進める原因になります。
脂質異常の原因には、遺伝的な家族性高コレステロール血症や甲状腺の機能低下症などもありますが、一番多い原因は生活習慣です。脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、健康診断などの血液検査で発見されることが多いです。
血液中には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4つの脂質があります。これらは体に必要なものです。
コレステロールは、細胞膜の材料として必要で、LDLやHDLという脂質によって血液中で運ばれます。LDLコレステロールが多すぎると、動脈壁に蓄積して動脈硬化を引き起こし、様々な病気の原因になります。HDLは組織で余ったコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ働きがあります。HDLが少ないと、動脈硬化を進める原因になります。
中性脂肪は、生きるために必要なエネルギーの一つですが、過剰になると脂肪組織に蓄積され、内臓脂肪となります。中性脂肪がたまりすぎると、脳卒中や心筋梗塞の原因になります。
脂質異常症の診断基準(すべて空腹時採血) 高LDLコレステロール血症=LDLコレステロールが140mg/dL以上 低HDLコレステロール血症=HDLコレステロールが40 mg/dL未満 高中性脂肪血症=中性脂肪が150 mg/dL以上 |
脂質異常症という病気には、決められた基準があります。血液中の脂質の濃度が基準値より高いか低いかで、脂質異常症と診断されます。でも、基準に当てはまっても、必ず薬を飲まなければいけないわけではありません。
脂質異常症(高脂血症)を放っておくと
脂質異常症を放置すると、何も症状は現れませんが、体の中では異常が起こっています。
LDLコレステロールが増加すると、動脈の壁に傷がつき、動脈内壁にコレステロールがたまってしまいます。
このたまったコレステロールが細胞に取り込まれ、血管内側に軟らかく破れやすいプラークと呼ばれるコブをつくります。このコブができると、血管内腔が狭くなり、コブに亀裂が入りやすくなります。亀裂を補修するために、血小板が集まって血栓ができしまい、血管が詰まってしまうことがあります。
心臓の血管がつまると心筋梗塞や狭心症になり、脳の血管がつまると脳梗塞になります。このような重い病気にかかって初めて、脂質異常症に気づく人も少なからずいるので、予防が大切です。
中性脂肪が多い場合、HDLコレステロールが減少し、余ったコレステロールが回収されず、血管壁に蓄積します。その結果、血管が詰まりやすくなります。中性脂肪が1,000mg/dL以上の非常に高い状態が続くと、激しい痛みを伴う急性膵炎が起こることがあります。
脂質異常症は、糖尿病や高血圧、肝臓に脂肪が蓄積する脂肪肝を合併することもあります。高血圧が合併すると血管に圧力がかかり、血管内壁が傷つきやすく、動脈硬化が進行しやすくなります。だからこそ、脂質異常症を放っておかずに、早めに治療することが大切です。
生活習慣の改善について
■悪玉コレステロールを下げるために
まず、食事に含まれる飽和脂肪酸をを減らすことが大切です。飽和脂肪酸は悪玉コレステロール値を上昇させる作用があり、肉の脂身(バラ肉の白い部分や鶏肉の皮など)やバター、ラード、生クリームなどに多く含まれています。また、パームヤシやカカオの油脂、インスタントラーメンなど加工食品にも多く含まれています。冷蔵すると固まるような油脂には飽和脂肪酸が多く含まれていますが、サラダ油や魚油のように冷蔵しても液体の油は、不飽和脂肪酸が多く含まれています。
次に、食事中のコレステロールを減らしましょう。食事中のコレステロールは主に鶏卵の黄身や魚卵に多く含まれています。
もし、高LDLコレステロール血症と言われたら、まず飽和脂肪酸を減らし、次いで卵などコレステロールの多い食品を食べすぎないように気をつけましょう。
■中性脂肪を下げるために
食べ物や飲み物の取りすぎにも注意しましょう。特に、甘いものやアルコール、油っこいもの、糖分が多いものは控えましょう。
ソフトドリンクには多量の砂糖が入っていることが多いので、あまり飲まないようにしましょう。このような食べ物や飲み物を控え、運動を心がけて減量すれば、中性脂肪を下げることができます。また、青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は中性脂肪を下げる働きがあるので、食べることをおすすめします。
HDLコレステロールが低いと、中性脂肪も高くなりやすくなります、運動や減量、禁煙をすることで、HDLコレステロールが上がることが考えられています。
また、アルコールを飲みすぎると、高血圧や肝臓の機能を悪化させることがあるので、1日の飲酒量を抑え、休肝日を作るようにしましょう。
脂質異常症(高脂血症)の治療
脂質異常症と診断された人は、生活習慣の改善をすることが大切です。改善方法として、食事療法や運動療法を行います。しかし、これだけで脂質異常症が治らない場合は、薬物療法を開始するか考えます
薬物療法には、様々な種類の薬があります。ただし、どの薬を使うかは、患者さんの年齢や性別、危険因子の数、病気の合併症の有無、既往歴、家族歴などを点数化し、治療方針を決定しています。
高血圧や糖尿病などの病気の危険因子がある人や、家族性高コレステロール血症と診断された人は、動脈硬化による病気のリスクが高いので、すぐに薬を使って治療を始めることがあります。
でも、どの薬を使っても、副作用が起こることがあるから注意が必要です。薬によって、副作用の種類や出方が異なります。また、他の薬と一緒に使うと、副作用が起こることもあります。
薬を飲み始めても、食事や運動の改善は続けてください。生活習慣の改善によって、薬の効果が上がり、最終的には薬をやめられることもあります。
ただ、長い間生活習慣が乱れていた場合、治療期間も長くなります。検査の数値が良くなったからといって、薬を自分でやめてはいけません。数値が良くなっても、通常それは薬の効果によるものです。そのため、薬をやめると、元の数値に戻ってしまうことがほとんどです。
脂質異常症や高脂血症は、生活習慣の改善や薬の治療などでコントロールすることができます。定期的に内科で検査を受けて、治療を続けることが大切です。
症状がなくても、気になることがあれば、お気軽に当院に相談してください。
Q1. 脂質異常症を予防するにはどうすれば良いですか?
脂質異常症を予防するには、健康に必要な様々な栄養素をバランスよく摂取し、脂質に偏らずに食事をとり、有酸素運動を中心とした適度な運動を行い、自分に合った健康的な体重を維持することが重要です。また、定期的に健康診断を受けて、血液中の脂質値を確認することも大切です。
Q2. 脂質異常症の症状は何ですか?
脂質異常症では、動脈硬化によって引き起こされる症状として、胸痛や息切れ、めまい、倦怠感、手足のしびれや痛み、視力の低下などがあります。しかし、自覚症状がない場合が多く、定期的に健康診断で脂質異常症かどうかを確認することが大切です。
Q3. 脂質異常症を持っている場合、どのような食事が良いですか?
脂質異常症になってしまった場合は、特に動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸や、コレステロールが多く含まれる食品を控え、代わりに野菜や果物、魚などの低脂肪・低コレステロールな食品を積極的に摂取することが大切です。また、植物や魚の脂に多く含まれる不飽和脂肪酸や、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することをおすすめします。