メニュー

肺がんの診断と治療とは

~肺がんはどのようにしてできるのですか~

肺がんの原因として最も明らかなものはタバコです。

タバコの煙には発がん物質が数多く含まれています。発がん物質は気管支粘膜や肺胞の細胞に吸収され、細胞内にあるDNAにキズ(遺伝子変異)を作ります。正常の細胞には遺伝子変異を修復する機構が備わっています。しかし、毎日のように発がん物質にさらされると、遺伝子変異は修復しきれなくなります。

遺伝子変異が細胞内にある程度集積すると、細胞はがん細胞に変化します。がん細胞はブレーキが利かなくなった車のようにどんどん増殖します。

生体内には、できてしまったがん細胞を殺すシステムを持っています。血液中などに存在する白血球の一種であるリンパ球は、正常細胞とがん細胞の違いを認識し、がん細胞のみ殺すことができます。これば免疫です。

がん細胞の多くは免疫によっては殺されます。 しかし、がん細胞の中には、リンパ球にブレーキをかけ、攻撃を受けないように変化したものが出現してきます。そうなると、がん細胞を抑制するものはなにもなくなり、がん細胞はどんどん増殖し、がん(腫瘍)が形成されます。

細胞が発がん物質にさらされる

細胞に遺伝子変異が集積

がん細胞の誕生

免疫系からの攻撃をがん細胞が回避

がん細胞の増殖

がん(腫瘍)の形成

がんができるまではこのような流れをとると考えられています。

~肺がんを予防するにはどうすればよいですか~

我々ができる肺がんの予防法は、発がん物資から肺を守ることです。

タバコを吸わないことは勿論ですが、他人が吸っているタバコの煙(=受動喫煙、副流煙)を避けることも必要です。

タバコ以外にも、大気汚染(PM2.5、車の排気ガスなど)にも要注意です。その他にもいろいろな原因が考えられていますが、現代でも解明されていない発がん物質や原因があると思われます。

肺がんを完全に予防することは現在不可能です。そのため、早期発見、早期治療が重要なのです。

~肺がんを早期発見するにはどうすればよいですか~

肺がんになると自覚する症状には、咳や痰、血痰、胸痛、息切れなどがあります。しかし、これらは肺がん以外でも起こり得る症状です。肺がんにしかでない特異的な症状というものはなく、「この症状がでたら肺がんです」というものはありません。

症状がでたら、クリニックや病院を受診しようという方がいます。しかし、症状がでる頃には、肺がんは進行してしまっていることが多いのです。 進行した肺がんの治療はがん薬物療法を主体に行うことになりますが、完治してしまうような強力な薬はまだ開発されていません。肺がんは早期発見して手術するのが現在でも最も良い方法です。

それではどうやって肺がんを早期発見すればよいのでしょうか。

住民健診などで一般的に行われいる肺のレントゲン写真は、肺全体を一枚の写真にします。レントゲン写真を撮るとき、背中からX線が照射され、様々な密度の臓器を通過します。まず、背中の皮膚を通過、その後、皮下脂肪、筋肉、骨、肺、血管、そして胸側の骨、脂肪、皮膚を通過し、写真となります。そのため、一枚の写真には色々な臓器が重なり合って映ることになり、診断を難しくしています。

できた場所によって、レントゲンでわかる肺がんとわからない肺がんがあります。1cmくらいの小さな肺がんが骨や血管と重なってしまうと、レントゲンでは見つけられません。たとえ3cmくらいに肺がんが大きくなっても、心臓や肝臓の裏側などにできてしまうと、やはりレントゲンで見つけられないことがあります。

肺がんを見つけるために最も効果が高い(=感度が高い)検査法はCTです。CTでは肺を100枚から200枚の断層写真にしますので、レントゲンと違い、肺が心臓や骨に重なることもありません。そのため、大きさが5mm程度の小さな肺がんを見つけることも可能です。

肺がんを早期発見するにはCTが強力な武器となります。

~胸部レントゲン写真で要精査といわれたら~

健康診断の胸部レントゲン写真で「要精査」、「E判定」という結果がでると、「自分は肺がんではないか」と、誰でも心配になります

しかし、「レントゲン異常=病気」とは限りません。

「胸部レントゲン異常」を単純に言い換えれば、「黒いはずの肺に白く見える影がある」ということです。(日光による影は黒く、X線の影は白い。)レントゲンで異常があっても、それは骨が重なって白く見えているだけかも知れませんし、血管が重なって白く見えているだけかも知れません。

健康診断で要精査となった場合、胸部レントゲンの異常が肺の中にあるのか、肺の外にあるのか、X線写真のみで判断することはできません。そこで、CTが役にたちます。

人間の体は3次元の立体ですから、X線写真という2次元の平面で正確に観察するのは所詮無理があります。CTでは、体を1-5mm間隔のスライスにして、100-200枚の断層写真にしますので、1枚のX線写真と比較すると診断精度が格段に良くなっています。

影(病変)が本当にあるのかないのか、あるとしたら肺の中にあるのか外にあるのかを診断することはCTが得意とするところです。

しかしながら、CTにも弱点があります。影(病変)の病名までつける(=確定診断をする)ことがCTだけではできないのです。

「がんを疑う影が肺内にあります」とCTで言うことはできても、「肺がんです」とはCTで言い切ることはできないのです。言い切るためには気管支鏡(肺カメラ)や手術などでさらに精密検査が必要になってきます。

さらに、CTの問題は、肺がんなどの病気だけ見つかるのではなく、放置しても問題のない影(病変)もとらえてしまうことです(=特異度が低い)。

CTで5mm程度の陰影を見つけたとしてもそれがガンなのか炎症などの良性病変なのか、CTだけでは判断できません。

CTの結果を説明するときに、「CTでは肺がんの可能性がある病変が見つかりましたが、本当に肺がんかどうかは手術で確認するまでは分かりません」という曖昧な説明になってしまうのです。

CTが住民健診にまだ導入されない理由がここにあります。

院長ブログでは肺がんの最新情報を記載しています。
⇒肺がんの最新論文紹介

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME