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肝機能障害

肝機能障害とは

肝臓の病気は相当程度進行しなければ、自覚症状が出ません。
これが「沈黙の臓器」と呼ばれる理由です。

肝臓は腹部の右上、横隔膜のすぐ下にあり、腹腔内臓器の中で最大の臓器です。肝細胞は再生能力が高く、壊れても修復されます。しかし、ウイルスやアルコールなどにより、肝細胞が長期間少しずつ障害されると、線維化が進み、肝臓が硬くなります。

これが肝硬変と呼ばれ、肝硬変になるとようやく症状が現れますが、進行すると治療は非常に困難になります。

肝臓はアルコールの分解だけでなく、タンパク質の合成、胆汁の生成、薬物の分解など、3つの重要な役割を担っています。これらの機能が失われると、現時点では代替する人工臓器は存在せず、肝移植をしない限り生存できません。肝臓の病気を検査する方法として、簡便で感度の高い血液検査があります。血液検査は手軽なので、健康診断でもよく利用されていますし、多くの方が知っているかもしれません。

肝臓の血液検査は一般的に肝機能検査と呼ばれ、血中に放出された肝酵素(損傷した肝細胞からのアミノトランスフェラーゼの放出や、胆汁うっ滞によるアルカリホスファターゼの放出など)を測定したり、胆汁排泄(ビリルビンなど)を評価することで肝機能を評価します
また、肝臓の合成能を評価するためにプロトロンビン時間[PT]やアルブミンなども使用されます。

ASTとALT

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、別名GOT)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT、別名GPT)は、元々肝細胞内に存在する酵素です。肝細胞が炎症などの原因で損傷すると、これらの酵素が血液中に漏れ出し、血液検査で高い値を示します。

ASTやALTが500IU/Lを超えるような明らかに高い値の場合

肝細胞が急速に損傷している可能性があり、急性ウイルス性肝炎、毒性物質や薬物による肝炎、虚血性または低酸素性肝炎、肝梗塞、自己免疫性肝炎の急性増悪、B型慢性肝炎の再活性化、総胆管内結石などが考えられます。

ASTやALTが300IU/L未満の軽度な増加が見られる場合

ウイルス性肝炎に続発した肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、胆汁うっ滞性肝障害、肝細胞癌、アルコール性肝疾患およびアルコール性肝炎などが考えられます。

AST/ALT比

ASTは肝臓以外の臓器にも存在するため、AST値が上昇していても肝臓以外の臓器の損傷を反映している可能性があります。一方、ALTは比較的肝臓に特異的に存在するため、ほとんどの肝疾患ではAST/ALT比は1未満となります。ただし、アルコール性肝疾患ではAST/ALT比が2以上となることがよくあります。

γGT(別名γGTP)

γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γGT)は肝臓だけでなく、胆石などの胆汁のうっ滞する病気でも上昇し、次に説明するアルカリホスファターゼ(ALP)と同様の動きを示します。 また、γGTは飲酒によって高い値を示すことが知られており、アルコール性肝炎などでは特に高い値となります。γ-GTと飲酒量は比例するわけではありませんが、禁酒によってγ-GTを低下させることができます。

ALP

アルカリホスファターゼ(ALP)が高い場合、胆汁のうっ滞が起こっている可能性が考えられます。ウイルス性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、薬剤性肝障害などが考えられます。ただし、ALPは肝臓以外の様々な臓器にも存在しているため、高い値が出ていても必ずしも肝臓の病気とは限りません。

LDH

乳酸脱水素酵素(LDH)は肝機能検査の一つとして測定されますが、肝臓以外の多くの臓器にもLDHは存在しています。LDHが高いからといって、必ずしも肝臓の病気があるとは限りません。他の検査項目の値も参考にしながら、総合的に判断する必要があります。

ビリルビン

ビリルビンは、主に老化した赤血球内のヘモグロビンが分解されて生成される物質であり、肝臓でグルクロン酸と結合した後、胆汁として腸内に排泄されます。血液検査では、抱合されていないビリルビンを「間接ビリルビン」とし、抱合されたビリルビンを「直接ビリルビン」として測定し、両者の合計を「総ビリルビン」として測定します。
総ビリルビンが高い場合は、ビリルビンの生成が亢進している、肝臓への取り込みや抱合が減少している、胆汁の排泄が減少しているなどの原因が考えられます。
間接ビリルビンが高い場合は、溶血などによりヘモグロビンの分解が増加している可能性や、肝臓への取り込みや抱合の異常が考えられます。
直接ビリルビンが高い場合は、胆汁の生成や排泄が減少しており、胆汁がうっ滞している可能性が示唆されます。

肝機能障害の原因

ウイルス感染や薬物の使用、アルコールや脂肪の過剰摂取などの食生活、自己免疫疾患、遺伝的要因、環境要因など、さまざまな原因によって肝細胞が傷害や壊死を起こし、それによって肝機能障害が生じます。これらの原因に基づいて、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎などの疾患名が付けられています。

肝機能障害を放っておくと

肝細胞が傷害されると、ASTやALTの上昇など臨床検査値の異常だけでなく、自覚症状や他覚症状も引き起こすことがあります。肝臓はタンパク質の合成、胆汁の生成、薬物などの分解といった機能を担っているため、肝機能が障害されると全身的な倦怠感や黄疸、浮腫、肝性脳症などの症状が現れ、肝疾患に伴う消化管出血の合併症が発生することもあります。

肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれる理由は、肝臓の機能が相当程度に障害されなければ症状が現れないからです。最も一般的な肝疾患としては、生活習慣が原因で脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝/脂肪肝炎や、飲酒が原因となるアルコール性肝障害があります。

また、B型やC型などの肝炎ウイルスが原因となる慢性肝炎もあります。これらは肝臓に炎症を引き起こし、肝細胞の傷害と再生を繰り返すことで肝硬変と呼ばれる線維化の進行を招きます。肝硬変が進行すると元に戻ることは難しくなります。

また、肝臓の重要な機能である解毒ができなくなると、肝不全と呼ばれ、意識レベルが変わる肝性脳症に進行します。また、肝臓への血流が滞ると、脾臓が大きくなり、食道に静脈瘤ができ、腹部が膨満する腹水やへその周りの静脈が太くなります。また、白目が黄色くなる黄疸や手の震えである羽ばたき振戦なども現れます。

肝不全や肝硬変に進行すると、治癒が難しく、肝移植が唯一の治療方法となります。

したがって、自覚症状が現れる前の段階で、臨床検査値の異常のみをもとに早期に肝機能障害を発見し、早めの治療を行うことが非常に重要です。

肝機能の精密検査

肝臓の精密検査には、超音波検査、CT検査、MRI検査などがあります。

腹部超音波(腹部エコー)検査では、超音波を利用して腹部から肝臓、胆嚢、胆管、膵臓、腎臓、脾臓などを観察します。これは最も安全で経済的な方法であり、超音波検査技師または医師が行います。検査前には食事を3〜4時間程度断つ必要があります(ただし、栄養のない水分は摂取できます)。

この検査により、肝硬変や脂肪肝などの肝臓全体の病気だけでなく、肝血管腫、胆石、胆のうポリープなどの良性疾患、肝臓がんや胆管がんなどの病変、脾腫などの門脈圧亢進症の示唆も検出できます。ただし、腸管ガスが多い場合や肥満患者の場合は、観察が難しくなることがあり、微小な病変を検出できるかは検査者の技量にも影響されます。

CT検査では、造影剤を使用して肝臓の詳細な画像を得ることができます。特に肝臓がんなどの腫瘍の検出に有用です。また、肝膿瘍や脂肪肝などのびまん性の肝疾患の発見にも役立つ場合があります。

腹部超音波検査やCT検査以外の精密検査については、一般内科では通常実施することはできませんので、この記事では省略します。

肝機能障害の治療

肝機能障害の治療は、原因となった病気に応じて異なります。どの病気が原因であっても、傷ついた肝細胞が再生しやすい状態にするためには、適切な健康管理が必要です。アルコールの摂取を控え、脂肪の摂取を制限した食事療法や脂肪を燃焼させる運動療法が必要です。肝機能を早期に回復させるためには、早期の発見と治療が重要です。

アルコール性肝疾患の治療

もちろん禁酒が最も重要です。ただし、禁酒を達成することは困難な場合もあり、患者のモチベーションを高めるためには、行動面や心理社会的なサポートも必要です。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療

主なアプローチとして生活習慣の改善が重要です。

食事や運動療法による体重減少は肝機能の改善およびNAFLDの病理組織所見に役立ちます。体重を5%減少させると生活の質が向上し、体重を7%以上減らすと非アルコール性脂肪肝炎における肝内脂肪蓄積や炎症細胞浸潤が緩和されます。エネルギー摂取量の適正化に加えて、炭水化物または脂質の摂取制限も推奨されます。

NAFLDの治療にはまだ十分に効果的な薬物は存在しませんが、多くの場合、糖尿病や脂質異常症も同時に存在しており、それぞれの疾患に対する薬物治療により肝機能が改善することがあります。

B型慢性肝炎の治療

B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の長期にわたる慢性炎症です。

B型肝炎ウイルスに感染している全ての人が治療が必要なわけではありません。
HBV持続感染者に対して抗ウイルス治療を行うかどうかは、年齢、病期、肝病変(炎症と線維化)の程度、病態進行のリスク、特に肝硬変や肝細胞癌への進展のリスクなどを総合的に判断します。治療の対象を選ぶ際には、個々の患者の組織学的進展度、血液中の肝酵素(ALT)検査値、およびHBV DNA量が最も重要です。そのため、治療は通常、経験豊富な肝臓専門医によって行われます。

C型慢性肝炎の治療

C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝臓の長期にわたる慢性炎症です。

C型肝炎治療の目標は、HCV持続感染による慢性肝疾患の長期的な予後改善であり、つまり肝臓がんや肝硬変の発生を防ぎ、肝疾患に関連した死亡を防ぐことです。この目標を達成するためには、抗ウイルス治療を行い、HCVの除去を目指します。HCVが排除された後でも、予後改善のためには肝臓がん発生の有無のフォローアップが必要です。肝硬変を含むすべてのC型肝炎患者が抗ウイルス治療の対象とされ、年齢やALT値、血小板数に関係なく、すべてのC型肝炎患者に対して抗ウイルス治療の検討が推奨されています。特に、ALT値が上昇している例(ALTが30 U/L以上)や血小板数が低下している例(血小板数が15万/μL未満)のC型肝炎患者は、抗ウイルス治療の適切な候補です。治療は通常、経験豊富な肝臓専門医によって行われます。

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