糖尿病とは
ブドウ糖を身体が利用するためのホルモンであるインスリンの分泌が不十分またははたらきが弱くなることで発症する病気を糖尿病と言います。
糖尿病はゆっくりと進行し、全身の臓器に障害を引き起こす可能性がある病気です。高血糖が持続すると、全身の微細な血管や神経に障害が生じます。その結果、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの病気を発症するリスクが高まります。これらは糖尿病の「三大合併症」として知られています。
また、肺にも障害を引き起こす可能性があります。これまでの臨床結果では、糖尿病患者が感染症にかかりやすいこと、間質性肺炎や肺線維症が糖尿病を悪化させる傾向があることが知られています。そして、最近の研究では、重度の糖尿病患者が新型コロナウイルス感染症にかかりやすく、重症化しやすいことも明らかになっています。
糖尿病の原因と種類
糖尿病は1型と2型に分かれます。
1型糖尿病は、膵臓の細胞が破壊されてインスリンを作れなくなるために発症し、2型糖尿病は肥満や過食などが原因でインスリンの作用や分泌能が低下して発症します。
日本では、糖尿病患者の99%が2型糖尿病です。糖尿病の症状
糖尿病の典型的な症状は
- 口の渇き
- 多くの水を飲むこと
- 多尿
- 体重減少
- 疲れやすさ
などがあげられますが、初期の糖尿病では症状があまり現れませんので注意が必要です。
また、糖尿病は放置すると動脈硬化や腎障害などさまざまな合併症を引き起こす可能性があるため、早期に血糖値をコントロールすることが大切です。
糖尿病の診断基準
糖尿病の診断は、日本糖尿病学会が定めた基準により行われます。
以下の条件のいずれかが確認された場合、「糖尿病型」と判定されます。
- 朝の空腹時の血糖値が126mg/dL以上
- 75gのブドウ糖を摂取した後、2時間後の血糖値が200mg/dL以上
- 随時の血糖値が200mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
HbA1cは、採血時から過去1〜2か月間の平均血糖値を示しています。
さらに、以下の条件が満たされる場合には「糖尿病」と診断されます。
- 別の日に行った検査でも「糖尿病型」が確認される
→ 少なくとも1回は血糖値が「糖尿病型」であること - 別の日に行った検査でも「糖尿病型」が確認される
→ 少なくとも1回は血糖値が「糖尿病型」であること - 血糖値とHbA1cを同時に測定し、両方が「糖尿病型」であることが確認される
- 血糖値が「糖尿病型」を示し、糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲など)や糖尿病網膜症の症状のいずれかが認められる。
2型糖尿病とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
2型糖尿病とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、成人によく見られる慢性疾患です。2型糖尿病は、インスリンの効果が弱くなるインスリン抵抗性と高血糖が特徴です。一方、COPDは進行性の炎症によって気道の流れが制限される呼吸器疾患です。
COPD患者さんが2型糖尿病を併発するケースはたくさんあります。炎症によって血糖値が高くなりやすく、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが高まります。COPDが悪化すると全身性のステロイド薬が必要になりますが、これによって糖尿病が悪化する可能性があるため、注意が必要です。
同様に、2型糖尿病患者さんがCOPDを併発することもあります。両方の疾患には適度な運動が勧められますが、COPDを持つ糖尿病患者は強い息切れを経験している場合があり、運動量を増やすことが難しいことがあります。また、細菌感染にも注意が必要であり、高血糖が続くとCOPDの予後が悪化する可能性があります。
糖尿病の治療
現時点では、糖尿病を完全に治す方法はありません。糖尿病の治療では、合併症を防ぐことが重要です。
そのためには、血糖値を適切にコントロールすることが求められます。つまり、適切な血糖値を維持することで、合併症を予防し、健康な人と同じような生活を送ることができると言えます。
血糖値をコントロールする方法
血糖値を適切に管理するためには、次のような方法があります。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法(インスリンや経口血糖降下薬)
患者さんの糖尿病の種類や症状、他の基礎疾患の有無、日々の生活習慣などを考慮して、最適な治療方針を立て、適切な治療を行います。
※当院ではインスリン治療は行っておりません。
1型糖尿病と2型糖尿病の治療の違い
糖尿病が1型なのか2型なのかによって、治療のアプローチが異なります。
1型糖尿病の場合
患者さんは自身でインスリンを分泌できないため、インスリン注射が必要です。これに加えて、食事療法や運動療法が重要です。
2型糖尿病の場合
インスリンの投与は必ずしも必要ではありません。通常は食事療法と運動療法で血糖値を管理し、血糖値が高くなる傾向がある場合には経口血糖降下薬などの薬物療法を考慮します。ただし、血糖値を管理するのが難しい場合やインスリンの分泌が不足している場合には、2型糖尿病患者さんでもインスリンを使用することがあります。