いびき外来・睡眠時無呼吸症候群
次のような症状がある人は、睡眠中に呼吸が止まる『睡眠時無呼吸』かもしれません
主に、睡眠中に起こる症状
〇毎晩、いびきかうるさいと家族に言われる 〇寝ているとき、呼吸が止まっていると家族に言われる 〇アルコールを飲んでいない日でも、眠ると必ずいびきが出る 〇いびきが止まったと思ったら、大きな音とともに再開する 〇夜、眠りが浅く、よく目が覚めたり、トイレに起きたりする 〇息苦しくて目が覚めることがある |
主に日中に起こる症状
〇仕事中の会議などで、気がつくと居眠りをしてしまう 〇車を運転していて、渋滞や信号待ちの時に眠くなってしまった 〇たっぷりと睡眠をとったはずなのに、朝になっても疲れがとれず、だるい 〇朝起きたときに頭痛がする 〇肥満がある 〇首が太くて首が短い、あごが小さい方である 〇高血圧症である |
睡眠時無呼吸外来では、睡眠中に呼吸が止まる『睡眠時無呼吸』やいびきの検査をして、治療が必要な人を診断します。
当院では、睡眠時無呼吸の検査を行っています。
この検査は自宅でも簡単にできます。いびきや日中の眠気が気になる人は、一度試してみることをおすすめします。
当院で使う簡易SAS検査器具は、手の指や鼻、手首に簡単な機械をつけて、自宅で一晩寝るだけの検査です。
睡眠時無呼吸症候群ってなに?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、寝ているときに呼吸がとまってしまう病気のことです。SAS (サス、Sleep Apnea Syndrome)と略されます。いびきをかく人に多い病気ですが、そもそもいびきってなぜかくのでしょう?
人間は普段呼吸をするとき、鼻から空気を吸って、その空気は鼻、のど、気管を通って肺に入ります。でも、寝ているときに筋肉が緩んでくると、舌(舌根=舌の最も奥)やのどちんこ(=口蓋垂こうがいすい)などが下がって、空気の通り道が狭くなってしまいます。その際に空気が通るに、震えて音が鳴るのがいびきです。
睡眠時無呼吸症候群の人は、体型が肥満だったり、あごが小さいなどの理由で、もともと空気の通り道が狭く、寝ているだけで大きないびきをかいてしまいます。
さらに、深い眠りになると、空気の通り道がふさがってしまい、呼吸ができなくなってしまいます。呼吸が止まると、いびきも止まります。
家族や周りの人は、大きないびきが急に静かになったら、その人がちゃんと息をしているか確認してみてください。
呼吸が止まる時間は数十秒程度ですが、その間に体内の酸素が減って、息苦しくなります。息苦しくなると眠りが浅くなり、呼吸が再開します。これが何度も繰り返されるため、本人は深い眠りになれません。眠りは浅くなるだけで、完全に目が覚めるわけではないので、本人は無呼吸に気付いていません。
以上が、睡眠時無呼吸症候群の簡単な説明です。
眠っている時に呼吸が止まるのは、どうして問題なのでしょうか?
呼吸が止まると、眠りが浅くなって、また呼吸が再開します。でも、一晩中繰り返すと、熟眠できなくなります。
その結果、日中にとても眠くなって、会議や車の運転中に居眠りをしてしまうことがあります。電車やバスの運転手が居眠りをして事故を起こすこともあるので、注意が必要です。
でも、それだけじゃありません。
重症のSASの人は、1時間に40回以上呼吸がとまり、一回の呼吸停止が一分間以上にもなることもあります。
一分間、呼吸を止めてみてください。
苦しくて、まず止められないと思います。でも、頑張って止めてられたら、心臓が速く鼓動し、意識もぼんやりしてくるかもしれません。
呼吸が止まることは、心臓と脳に負担をかけることになります。
居眠りや交通事故は社会生活での問題ですが、睡眠時無呼吸を放置すると、最も問題となるのは合併症です。
毎晩血中の酸素濃度が下がり、脳や心臓など、酸素が最も必要な臓器が酸欠状態になります。そのため、高血圧や心不全、心筋梗塞、脳卒中のリスクが高くなり、夜間突然死される方もいます。
重症のSASの人は、普通の人よりも生きる期間が短いという報告があります。
SASの治療は、日中の眠気を改善するだけでなく、合併症を減らして生きる期間を延ばすためにも必要なのです。
睡眠時無呼吸を放置すると・・・
〇交通事故を起こすリスクは、約2倍 〇脳卒中になるリスクは、3.5倍 〇うつ病になるリスクは、5.0倍 〇高血圧になるリスクは、2.1倍 〇心不全になるリスクは、4.3倍 〇心筋梗塞、狭心症になるリスクは、2.5倍 〇糖尿病になるリスクは、2.3倍 〇睡眠時無呼吸のない人と比べ、8年後の生存率は約60% |
睡眠時無呼吸の検査はどのようなことをするのでしょうか?
まず、睡眠時無呼吸を心配する方が当院にいらした場合、
問診および日中の眠気の程度を評価するアンケートに答えてもらいます。
そして、その結果、SASの疑いがある場合、簡単なSAS検査を行います。
もし、その検査でSASの可能性がある場合、詳しい検査(ポリソムノグラフィー)をします。これによって、正確にSASかどうかを診断します。
簡易SAS検査
この検査は自宅で行います。 |
ポリソムノグラフィー(PSG)
PSGでは血中酸素濃度、鼻の気流以外に、脳波、胸郭と腹部の動き、筋電図を測定します。 PSGでは、脳波で眠っていない時間帯が分かるので、その時間帯を削除することで睡眠中の無呼吸の正確な回数が分かります。 睡眠1時間あたりの無呼吸もしくは低呼吸の回数が 5回以上15回未満のときは軽症、 15回以上30回未満のときは中等症、 30回以上のとき重症と判定します。 20回以上の無呼吸があれば、後述するCPAP療法の適応となります。 |
睡眠時無呼吸の治療はどのようなことをするのでしょうか?
生活習慣の改善
睡眠時無呼吸の重症度にかかわらず、生活習慣の改善が必要です。 肥満のある方は減量、飲酒や睡眠薬をのむ習慣がある方は制限します。 仰向けで寝る癖のある方は、横向きになるように背中にテニスボールを貼るのがお勧めです。 |
軽症SASの治療:口腔内装置による治療
無呼吸が1時間あたり20回未満の軽症患者さんには、口腔内装置(マウスピース)を歯科で一人ひとり作成します。 中等症以上のSASにはマウスピースでの治療では効果が十分ではなく、次のCPAP療法をお勧めします。 |
中等症から重症SASの治療:CPAP(シーパップ)療法
無呼吸が1時間あたり20回以上の患者さんには、CPAP(持続陽圧呼吸)療法を実施します。 この方法を適切に行うと、使用開始したその日から効果が現れ、いびきや無呼吸がなくなり、日中の眠気も改善します。 基準を満たせば、CPAP療法は健康保険の適用となります。
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