COPD急性増悪の予測ツール(ACCEPT)は有用 (Lancet Respiratory Medicine誌より紹介)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は気管支の狭窄が年々進行していく慢性の病気です。正常な人でも年々気管支は老化していくので、100歳を超えればみんなCOPDになると思われます(100歳以上の肺機能データがないので、推測です)。しかし、タバコ煙などで老化していくスピードが速くなると、若くしてCOPDになってしまいます。その結果、年々息切れなど症状が悪くなっていきます。
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COPDの増悪
COPDは少しずつ悪くなる慢性進行性も問題なのですが、(急性)増悪と言って急に悪くなり、息切れなど症状がひどくなることがあります。その多くは風邪などウイルス感染をきっかけです。風邪をひいたあと、咳や痰がなかなか止まらず、喘鳴や低酸素血症が出現し、入院が必要となることがあります。COPD増悪の治療は喘息発作の治療と似ており、気管支拡張剤の吸入や抗菌薬、ステロイドを使用します。治療の効果があれば、咳痰や喘鳴は消失し、ほぼ元の状態に戻ります。しかし、ほぼであって、元通りになることは少ないのです。増悪から回復しても、増悪前と比べると、一段レベルが低下します。程度には個人差がありますが、以前より息切れなしで歩ける距離が短くなったり、以前より痰が増えたり、増悪が再発しやすくなったりします。
そのため、COPDの治療目標には、症状の改善だけではなく、増悪を予防することも含まれます。
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増悪しやすいCOPDを予測する
COPD増悪を予防するために、増悪しやすいCOPDの患者さんはどのような特徴があるのか知ることは重要です。特徴が分かれば、治療法を厚くし、増悪を予防しやすくなるためです。
現在のガイドラインでは、過去の増悪回数と自覚症状の程度という2つのマーカーを使用して患者を分類し、治療方針を立てることになっています。しかし、もっとマーカーを増やすことで、もっと正確に増悪予測ができないかという疑問に答えるため、今回紹介する研究が行われました。
増悪の既往、年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙歴、在宅酸素療法、肺機能、症状負荷、現在の治療薬を予測因子として検証したところ、正確にCOPD増悪の件数を予測することができたと本論文で結論しています。
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以下は論文要旨です
Published:March 13, 2020
DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30397-2
概要
背景
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪リスクを正確に予測すれば、個別医療が可能になる。 COPD増悪の発生率と重症度を個別に予測するために、一般化可能なモデルを我々は開発し検証した。
方法
今回のリスクモデリング研究では、COPD増悪の既往がある患者を対象とした3つのCOPD試験のデータをプールした。 増悪を予測する混合効果モデルを1年以上かけて開発した。 重症の増悪は入院治療を要するものとした。 予測因子は増悪の既往、年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙歴、在宅酸素療法、肺機能、症状負荷、現在の治療薬とした。 多施設コホート研究(ECLIPSE:予測代替エンドポイントを特定するためのCOPDの縦断的評価)を外部検証として使用した。
結果
開発データセットには2,380人の患者が含まれ、そのうち1,373人(58%)が男性であった。平均年齢は64.7歳(SD 8.8)であった。平均の増悪率は1年あたり1.42件であり、重症増悪は年0.29件であった。ECLIPSE(平均増悪率は1年に1.20件であり、重症増悪は年0.27件)に登録されたCOPD患者すべてに検証したところ、2件以上の増悪の場合は曲線下面積(AUC)が0.81(95%CI 0.79–0.83)、1件以上の重症増悪の場合のAUCは0.77(95%CI 0.74–0.80)であった。予測された増悪と観察された増悪率は類似していた(すべての増悪については年1.31件 vs 年1.20件、重症増悪については年0.25件 vs 年0.27件)。 ECLIPSEでは、増悪既往(平均増悪率1.82件/年、重症増悪率1.40件/年)のある患者において、2件以上の増悪の場合のAUCは0.73(95%CI 0.70–0.76)、1件以上の重症増悪の場合のAUCは0.74(95%CI 0.70–0.78)であった。重症増悪(予測件数 0.37件/年 vs 観測された件数 0.40件/年)およびすべての増悪(予測件数 1.80件/年 vs 観測された件数 1.82件/年)に対して校正は正確であった。
解釈
今回のモデルは、COPDの個別化治療、増悪防止ため、方針決定ツールとして有用である。
資金提供
カナダ健康研究所