メニュー

COPD急性増悪の予測ツール(ACCEPT)は有用 (Lancet Respiratory Medicine誌より紹介)

[2020.06.14]

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は気管支の狭窄が年々進行していく慢性の病気です。正常な人でも年々気管支は老化していくので、100歳を超えればみんなCOPDになると思われます(100歳以上の肺機能データがないので、推測です)。しかし、タバコ煙などで老化していくスピードが速くなると、若くしてCOPDになってしまいます。その結果、年々息切れなど症状が悪くなっていきます。

 

  • COPDの増悪

 COPDは少しずつ悪くなる慢性進行性も問題なのですが、(急性)増悪と言って急に悪くなり、息切れなど症状がひどくなることがあります。その多くは風邪などウイルス感染をきっかけです。風邪をひいたあと、咳や痰がなかなか止まらず、喘鳴や低酸素血症が出現し、入院が必要となることがあります。COPD増悪の治療は喘息発作の治療と似ており、気管支拡張剤の吸入や抗菌薬、ステロイドを使用します。治療の効果があれば、咳痰や喘鳴は消失し、ほぼ元の状態に戻ります。しかし、ほぼであって、元通りになることは少ないのです。増悪から回復しても、増悪前と比べると、一段レベルが低下します。程度には個人差がありますが、以前より息切れなしで歩ける距離が短くなったり、以前より痰が増えたり、増悪が再発しやすくなったりします。

 そのため、COPDの治療目標には、症状の改善だけではなく、増悪を予防することも含まれます。

 

  • 増悪しやすいCOPDを予測する

 COPD増悪を予防するために、増悪しやすいCOPDの患者さんはどのような特徴があるのか知ることは重要です。特徴が分かれば、治療法を厚くし、増悪を予防しやすくなるためです。

 現在のガイドラインでは、過去の増悪回数と自覚症状の程度という2つのマーカーを使用して患者を分類し、治療方針を立てることになっています。しかし、もっとマーカーを増やすことで、もっと正確に増悪予測ができないかという疑問に答えるため、今回紹介する研究が行われました。

 増悪の既往、年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙歴、在宅酸素療法、肺機能、症状負荷、現在の治療薬を予測因子として検証したところ、正確にCOPD増悪の件数を予測することができたと本論文で結論しています。

 

  • 以下は論文要旨です

Published:March 13, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30397-2

 

概要

背景

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪リスクを正確に予測すれば、個別医療が可能になる。 COPD増悪の発生率と重症度を個別に予測するために、一般化可能なモデルを我々は開発し検証した。

 

方法

今回のリスクモデリング研究では、COPD増悪の既往がある患者を対象とした3つのCOPD試験のデータをプールした。 増悪を予測する混合効果モデルを1年以上かけて開発した。 重症の増悪は入院治療を要するものとした。 予測因子は増悪の既往、年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙歴、在宅酸素療法、肺機能、症状負荷、現在の治療薬とした。 多施設コホート研究(ECLIPSE:予測代替エンドポイントを特定するためのCOPDの縦断的評価)を外部検証として使用した。

結果

開発データセットには2,380人の患者が含まれ、そのうち1,373人(58%)が男性であった。平均年齢は64.7歳(SD 8.8)であった。平均の増悪率は1年あたり1.42件であり、重症増悪は年0.29件であった。ECLIPSE(平均増悪率は1年に1.20件であり、重症増悪は年0.27件)に登録されたCOPD患者すべてに検証したところ、2件以上の増悪の場合は曲線下面積(AUC)が0.81(95%CI 0.79–0.83)、1件以上の重症増悪の場合のAUCは0.77(95%CI 0.74–0.80)であった。予測された増悪と観察された増悪率は類似していた(すべての増悪については年1.31件 vs 年1.20件、重症増悪については年0.25件 vs 年0.27件)。 ECLIPSEでは、増悪既往(平均増悪率1.82件/年、重症増悪率1.40件/年)のある患者において、2件以上の増悪の場合のAUCは0.73(95%CI 0.70–0.76)、1件以上の重症増悪の場合のAUCは0.74(95%CI 0.70–0.78)であった。重症増悪(予測件数 0.37件/年 vs 観測された件数 0.40件/年)およびすべての増悪(予測件数 1.80件/年 vs 観測された件数 1.82件/年)に対して校正は正確であった。

解釈

今回のモデルは、COPDの個別化治療、増悪防止ため、方針決定ツールとして有用である。

資金提供

カナダ健康研究所

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

COPDについて言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

院長の著者ページはこちらから

プレゼント原稿が無料でダウンロードできます

HOME

ブログカレンダー

2023年6月
« 5月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME