肥満喘息改善のカギは食事制限療法にあり!驚きの研究結果が明かす肥満関連喘息
院長による概説
肥満は喘息の発症リスクを高めることが知られています。肥満と喘息が合併すると、通常の喘息治療が効きにくく、喘息の症状が悪化しやすくなります。肥満に関連する遺伝子産物であるレプチンが、肥満関連の喘息の原因の一因とされていますが、まだ詳細は解明されていません。
もし肥満が肥満関連の喘息の原因であると仮定すれば、体重を減らすことで喘息の改善が期待されるかもしれません。今回紹介する研究では、食事摂取を制限するプログラムが難治性の肥満喘息を管理するのに役立つかどうかを調査しました。この研究では、被験者に対して、最初に12週間800kcal/日の低エネルギー食事(スープまたはシェイク)を提供し、その後は徐々に食事摂取を増やし、最長1年間減量を維持する厳格な食事療法を実施しました。日本の食事摂取基準によると3-5歳の幼児の摂取カロリーが1,300kcal/日であり、800kcalがいかに厳しいかが分かります。この療法の結果、体重は中央値で約13kg(約12%)減少し、喘息のコントロールを示すACQ6スコアも改善しました。
喘息の治療において、薬物療法だけでなく、食事療法も有効であることが示されました。通常、製薬会社が実施する新薬の大規模比較試験が注目されがちですが、地味なように思える食事療法も十分に研究する価値があると考えられます。
肥満症に伴う難治性喘息に対する完全食事代替体重管理プログラム: ランダム化比較実行可能性試験
A Total Diet Replacement Weight Management Program for Difficult-to-Treat Asthma Associated With Obesity: A Randomized Controlled Feasibility Trial
Chest. 2023 May;163(5):1026-1037.
DOI: 10.1016/j.chest.2023.01.015
要旨
背景
肥満はしばしば、コントロール不能で難治性の喘息と関連し、罹患率や死亡率を増加させる。これまでの研究では、減量が喘息の転帰を改善する可能性が示唆されているが、研究対象となった喘息患者集団は不均質であり、体重管理の最適な方法についてのコンセンサスは得られていない。体重管理のためのCounterweight-Plus Programme(CWP)は、エビデンスに基づいた、管理栄養士主導の完全食事代替(TDR)プログラムである。
研究課題:
難治性喘息と肥満のある患者において、CWPの使用は通常治療(UC)と比較して喘息コントロールとQOLを改善できるか?
研究デザインと方法 :
難治性喘息でBMIが30kg/m2以上の成人を対象に、1:1(CWP対UC)の無作為化対照単施設試験を実施した。CWPでは、12週間のTDR期間(800kcal/dの低エネルギー療法)の後、段階的に食物を再導入し、最長1年間減量を維持した。主要アウトカムは、16週間にわたる喘息コントロール質問票6(ACQ6)スコアの変化であった。副次的アウトカムは、喘息QOL調査票(AQLQ)スコアの変化であった。
結果:
35 例が無作為に割り付けられ(スクリーニングは36 例)、33 例が16 週間の追跡調査に参加した(CWP群:n=17、UC群:n=16)。全体として、ベースライン時の平均ACQ6スコアは2.8(95%CI、2.4-3.1)であった。体重減少はUC群よりCWP群で大きかった(平均差、-12.1kg;95%CI、-16.9~-7.4;P < 0.001)。ACQ6スコアはUC群よりCWP群でより改善した(平均差、-0.69;95%CI、-1.37~-0.01;P = 0.048)。
ACQ6スコアの臨床的に有意な最小差を達成した参加者の割合は、CWP群の方がUC群よりも多かった(53% vs 19%;P = 0.041; 治療必要数、3[95%CI、1.5-26.9])。AQLQスコアの改善は、CWP群でUC群よりも大きかった(平均差、0.76;95%CI、0.18-1.34;P = 0.013)。
解釈
体系化された体重管理プログラムを用いることで、難治性喘息と肥満を有する成人において、UCと比較して16週間にわたって喘息コントロールとQOLが臨床的に有意な改善を示した。この一般化できるプログラムは、この難治性の表現型に対して容易に実施可能である。長期転帰については引き続き研究が必要である。
持ち帰りポイント
研究課題
体重管理のためのCounterweight-Plusプログラム(CWP)の使用は、通常のケア(UC)を受けている患者と比較して、難治性喘息で肥満のある患者の喘息コントロールとQOLを改善できるか?
結果
16週間にわたり、CWPはUCと比較して、喘息コントロールとQOLの両方の指標において臨床的に意義のある改善をもたらし、体重も大幅に減少した。
解釈
CWPを使用した初の結果は期待できるものであり、プログラムの順守率は予想以上に良好であったが、確認された効果の継続性を評価するためには、より長期的な結果が待たれる。
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医、喘息専門医)