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COPD患者のCTにおいて気道閉塞するような粘液栓があると、死亡率が上昇する(JAMA誌より)

[2023.07.30]

院長による概説

日本で行われた大規模な疫学調査(2001年に発表)によると、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%であり、患者数は530万人と推定されています。

呼吸器内科医にとってCOPDはよくある病気で、珍しくはありません。しかし、その治療管理を考える際には、COPDを単一の病気として一律のアプローチを行うことはできません。なぜなら、症状のほとんどない軽度のCOPDから、在宅酸素が必要な重度のCOPD患者まで、さまざまな状態のCOPD患者さんがいるため、それぞれの状態に応じた治療管理が必要だからです。

COPDのガイドライン(GOLD 2023Report)では、治療管理を行う上で患者さんをグループ分けすることが推奨されています。一つはCOPDの発症原因に応じた分類(Etiotype; COPD-G/D/C/Pなど)であり、気流閉塞の程度に応じたGOLD1~4であり、息切れなど症状と増悪頻度に応じたABE分類です。COPDの診断補助として、以前から頻用されている検査としてCT撮影があります。気腫性変化や肺がん合併の評価にCTは使われてきましたが、治療管理や予後予測にもCTが有用か試みられています。

COPDの世界ガイドライン(GOLD)の2023年改訂の要点(LANCET Resp Med誌のNEWSより)(2023.01.15更新)

今回紹介する論文では、COPD患者のCTにおいて気管支を閉塞するような粘液栓の存在と、死亡率との関連を調査しています。その結果、2-10mmの気管支を閉塞する粘液栓が1~2個ある場合、0個に対して調整後の死亡率が15%上昇し、3個以上ある場合は24%上昇したという結果が得られました。今後、COPD患者のCTを見る際には、粘液栓の存在にも注意する必要がありそうです。

 

Airway-Occluding Mucus Plugs and Mortality in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患患者における気道閉塞性粘液栓と死亡率)

JAMA. 2023;329(21):1832-1839.

キーポイント

疑問  

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のCT検査で確認された気道を閉塞する粘液栓は、全死因死亡率の増加と関連するか?

研究結果 

 4,363人のCOPD患者を対象としたこの観察研究では、中型から大型の気道(すなわち、内腔径約2~10mm)を閉塞する粘液栓の存在は、全死亡リスクの上昇と有意に関連していた(肺セグメントに影響を及ぼす粘液栓が1~2個の場合の調整後ハザード比は0個に対して1.15、肺セグメントに影響を及ぼす粘液栓が3個以上の場合の調整後HRは0個に対して1.24)。

意味  

COPD患者の中型から大型の気道を閉塞する粘液栓は、全死因死亡率の増加と関連していた。

概要

重要性  

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では気道粘液栓がよくみられるが、COPD患者における気道粘液栓と死亡率との関連は不明である。

目的  

胸部コンピュータ断層撮影(CT)で確認された気道粘液栓が全死因死亡率の増加と関連するかどうかを調べること。

デザイン、設定、参加者  

Genetic Epidemiology of COPDコホートでCOPDと診断された患者の前向きに集められ たデータの観察的後方視的解析。参加者は45~80歳の非ヒスパニック系黒人または白人で、10パック年以上の喫煙者であった。参加者は2007年11月から2011年4月の間に全米の21施設で登録され、2022年8月31日まで追跡された。

エクスポージャー  

胸部CTスキャンで気道を完全に閉塞した粘液栓は、中型から大型の気道(すなわち、内腔径約2~10mm)で同定され、0、1~2、または3つ以上の肺セグメントに影響を及ぼすものとして分類された。

主要アウトカムと評価基準  

主要アウトカムは全死亡で、比例ハザード回帰分析で評価した。モデルは、年齢、性別、人種および民族、肥満度、喫煙箱年数、現在の喫煙状況、強制呼気1秒量、肺気腫および気道疾患のCT測定値で調整した。

結果  

COPD患者4483人のうち、4363人が一次解析に組み入れられた(年齢中央値63歳[IQR、57-70歳];44%が女性)。合計2585人(59.3%)、953人(21.8%)、825人(18.9%)の参加者が、それぞれ0、1~2、3以上の肺セグメントに粘液栓を認めた。中央値9.5年の追跡期間中に1769人(40.6%)が死亡した。

死亡率は、肺区分0、1~2、3以上に粘液栓があった参加者において、それぞれ34.0%(95%CI、32.2%~35.8%)、46.7%(95%CI、43.5%~49.9%)、54.1%(95%CI、50.7%~57.4%)であった。肺区分1~2対0および3以上対0における粘液栓の存在は、それぞれ1.15(95%CI、1.02-1.29)および1.24(95%CI、1.10-1.41)の調整死亡ハザード比と関連していた。

結論と関連性

 COPD患者において、中型から大型の気道を閉塞する粘液栓の存在は、胸部CT検査で粘液栓のない患者と比較して、全死因死亡率の上昇と関連していた。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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