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新型コロナウイルスワクチンの感染予防効果は時間とともに減衰していく(JAMA誌の報告)

[2023.05.14]

R5年度から、新型コロナワクチンの接種が始まります。私自身、これまで何度もワクチンを受けてきましたが、副反応も経験してきたので、今回は接種を迷っていました。しかし、これまでCOVID-19に感染しなかったのは、ワクチン接種のおかげだと考えています。実際、ワクチンのおかげで、感染しているにもかかわらず無症状だった可能性もあり、自分で気づいていなかっただけかもしれません。

今回紹介する論文では、ワクチン接種後の新型コロナ感染予防効果を調べた多数の臨床研究をまとめたシステマティックレビューを行っています。

この研究では、コロナワクチンのデルタ株感染に対する予防効果とオミクロン株感染に対する予防効果を、初回接種(1-2回目)のみの集団と、追加接種(3回目以降)がある集団で比較しました。デルタ株に対しては、追加接種があるかどうかにかかわらず、予防効果に大きな差はありませんでしたが、オミクロン株に対しては、追加接種がある集団の方が予防効果が高いことがわかりました。ただし、その予防効果は長くは続かず、下の図に示されているように、追加接種後1か月で約60%、3か月後には約40〜50%、6か月後には約30〜40%、9か月後には約20〜30%に低下しました。

オミクロン株は、デルタ株よりもワクチンによる免疫回避能力が強く、ブレークスルー感染が多いと考えられています。ただし、今回の研究には、オミクロン株に対応する改良型の新型コロナワクチンの研究は含まれていません。そのため、現在行われているワクチンが実際にどのような効果を持っているかまでは、本論文では言及していません。新型コロナウイルスは変異が速く、ワクチンの進歩が追いつかない状況にあります。

 

上の図の説明

オミクロンの臨床検査で確認された感染症に対する1次ワクチン接種サイクルおよびブースターワクチンの経時的有効性」

オミクロンによるSARS-CoV-2の臨床検査で確認されたあらゆる感染に対するワクチン効果の、異なるワクチン製品間でのプール推定値 (最終投与から1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月の時点)。黒の縦線は平均推定値、横棒は95%CIを示す。

 

Original Investigation Infectious Diseases

May 3, 2023

Evaluation of Waning of SARS-CoV-2 Vaccine–Induced Immunity

A Systematic Review and Meta-analysis

SARS-CoV-2ワクチンによる免疫低下の評価について

システマティックレビューとメタアナリシス

JAMA Netw Open. 2023;6(5):e2310650. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.10650

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2804451

キーポイント

クエスチョン  

臨床検査で確認されたオミクロン株感染や 症状を伴う感染症に対するCOVID-19ワクチンの有効性は、最終投与からの時間や投与回数によってどのように変化するか、また、これまでに流行していたSARS-CoV-2亜種や亜種と比較してどうなのか。

所見 

このシステマティックレビューと40件の研究の二次データのメタ分析によると、臨床検査で確認されたオミクロン感染と症候性疾患両方に対するワクチン推定効果は、一次接種サイクル投与から6カ月で20%以下、ブースター投与から9カ月で30%以下であることがわかった。デルタ株と比較すると、より顕著に、より早く予防効果が減退することが確認された。

意味 

この結果は、オミクロン株に対するCOVID-19ワクチンの有効性が、時間の経過とともに急速に低下することを示唆している。

概要

重要性  

COVID-19に対するワクチン効果(VE)の減衰速度の推定は、集団の防御レベルを評価し、流行の波の再来に対処するためのブースター投与の将来の必要性を評価する上で重要である。

目的  

SARS-CoV-2のデルタ株およびオミクロン株に関連するVEの漸減を、投与回数別に定量化すること。

データソース  

PubMedおよびWeb of Scienceを、データベースの開設から2022年10月19日まで検索し、適格な論文の参考文献リストも検索した。前刷りも含まれる。

研究の選択  

このシステマティックレビューとメタアナリシスの対象となった研究は、臨床検査で確認されたSARS-CoV-2感染と症候性疾患に対する経時的なVEの推定値を報告した原著論文である。

データの抽出と統合  

ワクチン接種後のさまざまな時点におけるVEの推定値は、原著論文から収集した。二次データ解析により、最終投与から任意の時間におけるVEを予測し、異なる研究間および対象となる2つの変異体間の比較可能性を改善した。ランダム効果メタアナリシスにより、プール推定値を求めた。

主要評価項目と測定方法  

臨床検査で確認されたオミクロン株またはデルタ株の感染および症候性疾患に対するVE、ワクチンによる予防に関連する半減期および減衰率を評価対象とした。

結果  

査読付き雑誌に掲載された原著論文799本、レビュー149本、前刷り35本を確認した。これらのうち、40件の研究が解析に含まれた。臨床検査で確認されたオミクロン感株染および症候性疾患に対する1次ワクチン接種サイクルのVEをプールした推定値は、最終投与から6カ月時点でいずれも20%未満であった。ブースター投与により、VEは1次接種後すぐに獲得したVEに匹敵するレベルまで回復した。

しかし,ブースター投与9ヵ月後,臨床検査で確認された感染症および症候性疾患に対して,オミクロン株に対するVEは30%以下であった.症状性疾患に対するVEの半減期は、オミクロンが87日(95%CI、67-129日)であるのに対し、デルタは316日(95%CI、240-470日)であると推定されました。また、異なる年齢層においても、同様のVEの減衰率が確認された。

結論と関連性  

これらの結果は、臨床検査で確認されたオミクロン株またはデルタ株の感染および症候性疾患に対するCOVID-19ワクチンの有効性が、初回接種サイクルおよびブースター投与後、時間の経過とともに急速に低下することを示唆している。これらの結果は、将来のワクチン接種プログラムにおける適切な対象および時期の策定に役立つと考えられる。

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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