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軽度から中等度の喘息に対するアルブテロール-ブデソニド(ICS-SABA)の効果:DENALI試験(CHEST誌の報告)

[2023.04.16]

短時間作用型吸入β2刺激薬(SABA)は、喘息症状を素早く緩和するために使われるレスキュー薬で、セキや呼吸苦などが出現したときに使用します。しかし、SABAは気道炎症を治療するためではありません。喘息患者の間で一般的に使われていますが、使用量が増えると喘息が重症化するリスクが高まり、救急外来(ED)受診や入院、喘息に関連する死亡率が増加することが報告されています。 2020年に当ブログでも紹介したことがあります。

短時間作用型β2刺激薬(SABA)を過剰に使用すると、喘息の増悪(発作)および死亡リスクが上昇する(2020.12.20 )

喘息のグローバルガイドラインであるGlobal Initiative for Asthma(GINA)では、SABAを単独で使用せず、吸入コルチコステロイド(ICS)療法を併用して行うことを推奨しています。

現在、GINAは、喘息のレスキュー薬として、即効性の気管支拡張剤ホルモテロールとICSの両方を含む吸入器を推奨しています。日本では、シムビコート®やブデホル®という商品名で販売されています。

新しい配合剤として、アルブテロールとブデソニドが1本の加圧式定量吸入器(pMDI)が開発されました。このアルブテロール-ICSレスキュー療法は、あらゆるICS含有維持療法に上乗せして使用でき、喘息の増悪のリスクを減らすために必要に応じて使用できる喘息レスキュー吸入剤として、2023年1月に米国食品医薬品局(FDA)で初めて承認されました。この承認は、MANDALA試験の結果に基づいています。

吸入ステロイドと吸入短時間作用型β2刺激薬の新たな配合剤(ICS/SABA)が喘息増悪に有効(NEJM誌の報告)(2022.05.21更新)

MANDALA試験では、様々なICSを含む維持療法を受けている12歳以上のコントロール不良の中等度から重度の喘息患者において、アルブテロール-ブデソニドを喘息症状発現時に必要に応じて使用することで、アルブテロールのみの必要に応じての使用に比べ、重度の増悪のリスクを27%有意に減少させたと報告しています。

今回紹介するDENALI試験は、アメリカの薬品規制機関であるFDAの配合剤規制に対応するために行われたものです。アメリカでは、配合剤の各成分が安全かつ有効であることを証明する必要があります。このため、ICS-SABAという薬剤は必要に応じて使用できることが認められているにもかかわらず、なぜか1日4回の定期投与を行う試験デザインになっています。



DENALI試験では、2つの主要な評価項目を達成しました。アルブテロールとブデソニドの両方が、肺機能改善効果に対して同じくらい貢献していることが証明されました。さらに、アルブテロール・ブデソニドは、アルブテロールと同様に、投与1日目の気管支拡張作用の発現時間と持続時間を示しました。

また、アルブテロールとブデソニドを1日4回吸入する患者は、アルブテロールだけを吸入する患者と比較して、トラフ呼気1秒量(FEV1)の改善が第1週目から見られました。

喘息の患者さんの中には、症状が出てからしか治療をしない人が多いです。しかし、現在の日本では、症状が出なくても毎日治療するように指導されています。でも、指導に従わない患者さんもいます。定期的に吸入する配合剤(ICS-LABA)は保険適用されますが、必要な時だけ吸入する配合剤(ICS-LABA)は保険適用されません。毎日吸入することが一番良い治療方法ですが、米国で承認された新しい薬(ICS-SABA)が日本でも使えると良いと思います。そうすれば、必要以上にSABAを使う患者さんが減るかもしれません(私見)。

 

軽度から中等度の喘息患者におけるアルブテロール-ブデソニド加圧式定量吸入器:DENALI二重盲検ランダム化比較試験の結果

Albuterol-budesonide pressurized metered dose inhaler in patients with mild-to-moderate asthma: results of the DENALI double-blind randomized controlled trial

Chest. 2023 Mar 30;S0012-3692(23)00463-4. 

 DOI: 10.1016/j.chest.2023.03.035 Online ahead of print.

 

要旨

背景 

第3相MANDALA試験において、吸入コルチコステロイドを含む維持療法を受けている中等度から重度の喘息患者において、アルブテロール-ブデソニド加圧式定量吸入器(pMDI)は、必要に応じて使用されるアルブテロールと比較して重度の増悪リスクを有意に低下させた。本試験(DENALI)は、米国食品医薬品局(FDA)の配合剤規制(配合剤が各成分の安全性または有効性に寄与することを証明することを要求)に対応するために実施された。

研究課題 

喘息患者におけるアルブテロールとブデソニドの併用 pMDI の有効性は、アルブテロールとブデソニドの両方が寄与しているか?

試験デザインと方法 

この第3相二重盲検試験は、12歳以上の軽度から中等度の喘息患者を、1日4回投与のアルブテロール-ブデソニド180/160μgまたは180/80μg、アルブテロール180μg、ブデソニド160μg、またはプラセボに1:1:1:1:1で12週にわたり無作為に割り付けた。二本立ての主要有効性評価項目は、12週間にわたる0-6時間の強制呼気量曲線下面積(FEV1 AUC0-6h)のベースラインからの変化(アルブテロール効果の評価)および12週目のトラフFEV1(ブデソニド効果の評価)であった。

結果 

無作為化された1001人の患者のうち、989人が12歳以上であり、有効性の評価が可能であった。

12週間にわたるFEV1 AUC0-6hのベースラインからの変化は、アルブテロール-ブデソニド180/160μgとブデソニド160μgで大きかった(最小二乗平均[LSM]差[95%CI]80.7[28.4-132.9]mL;p=0.003)。

12週目のトラフFEV1の変化は、アルブテロール-ブデソニド180/160μgおよび180/80μgがアルブテロール180μgに対して大きかった(LSM差 [95%CI] 132.8 [63.6-201.9] mLおよび120.8 [51.5-190.1] mL、いずれもp<0.001)。

アルブテ ロール-ブデソニドの1日目の気管支拡張作用の発現時間及び持続時間は、アルブテロールと同様であった。アルブテロール-ブデソニドの有害事象プロファイルは、単剤と同様であった。

解釈: 

アルブテロール-ブデソニドの肺機能の改善効果は、両方の成分が寄与していた。アルブテロール-ブデソニドは、12週間の比較的高用量の1日常用量でも十分な忍容性があり、新たな有害事象は認められず、新たなレスキュー治療薬としての使用が示唆されました。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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