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影響力の高い腫瘍学雑誌における、医療ライター支援を利用した臨床試験の頻度とその特徴(JAMA誌の報告)

[2023.03.12]

医学研究の結果を公表する方法として、学会発表と論文発表があります。研究結果を論文にするには大変な時間と労力がかかるため、論文化する前に速報するために学会で口頭発表することが一般的です。しかし、論文がネット上で掲載されるようになった昨今では、インパクトのある結果は学会と論文で同時に発表されることも多くなりました。そのため、結果を論文化する時間を速くする必要が高まっていると考えられます。そこで、医学研究を企画する企業や研究者は、医療ライターを利用することで、時間の節約を図るようになりました。

医療ライティングの世界市場規模は、2021年に36億ドル、2030年には84億ドルに上昇すると予測されている。医療ライターは製薬会社や第三者機関に雇用され、医師、科学者、医療専門家と一緒に、出版用の記事の原稿作成や編集、情報発信や文書化の支援に携わる。

また、医療ライターを利用すると、医療ライターを利用しない場合と比較して、同じ結果でも原稿の質が高くなり論文掲載の可能性が高くなることがあります。しかし、医療ライターを利用することに倫理的問題はないのでしょうか?

今回紹介する論文では、がんの臨床試験研究論文において医療ライターの使用が、試験の結果や特定のエンドポイントの設定に影響を与えるかどうかを評価しています。

下図をみると、最も権威のある医学雑誌であるLANCET誌とNEJM誌では、ほとんどの論文を医療ライターが書いていることが分かります。権威のある雑誌では英語の質も求められるのかもしれません。

下図では、医療ライターを採用した研究は無増悪生存期間(PFS)をエンドポイントとする傾向が強いことがわかります。一方、医療ライターがいない研究は全生存期間(OS)をエンドポイントとする傾向が強いことがわかります。これらの結果は、医療ライターのいる試験では重要度の低いエンドポイントに焦点を当てられていることを示唆しています。つまり、PFSはOSよりも結果が早くでるため、スピードが要求される新薬の開発など製薬会社が主体となる研究でPFSが設定される傾向があり、製薬会社は医療ライターを採用する傾向があるからかもしれません(私見)。

メディカルライターがいる研究では、一般的な代替エンドポイントであるPFSや客観的奏効率をエンドポイントとして調査する傾向があることがわかった。代替エンドポイントは、どの治療法が全生存を改善するかを推定できないことが多い。毒性や高額な医療費を伴う介入は、代替エンドポイントを改善しても、QOLや生存率の改善をまだ示していない場合、医師によって賛否が分かれるかもしれない。医療ライターを使用することで、このような懸念を和らげたり、払拭したりするのに役立つかもしれない。

 

影響力の高い腫瘍学雑誌における、医療ライター支援を利用した臨床試験の頻度とその特徴
Frequency and Characteristics of Trials Using Medical Writer Support in High-Impact Oncology Journals


Eva Buck; Alyson Haslam, PhD; Jordan Tuia, BA; et al

JAMA Netw Open. 2023;6(2):e2254405. 

February 1, 2023

doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.54405

キーポイント

疑問点

医療ライターによるサポートを利用するがん研究、利用しないがん研究の特徴とは?

調査結果

270件の臨床試験を対象としたこの横断的解析において、医療ライターを使用しなかった試験と比較すると、医療ライターを使用した試験は全生存期間よりも無増悪生存期間に焦点を当て、肯定的な結論を報告する傾向が強かったが、調整後の解析では肯定的結論との関連は見られなかった。

意味するところ

これらの結果から、医療ライターの使用は、無増悪生存というエンドポイントに関連することが示唆された。

要旨

重要性

科学的情報を伝達するために医療ライターを利用する習慣が普及しているが、どのような情報がどのように伝達されるかに影響を与える可能性がある。

目的

医療ライターを使用しているがん領域の臨床試験の特徴、および医療ライターの使用と臨床試験の成功または評価された主要アウトカムとの間に関連性があるかどうかを評価する。

デザイン、設定、参加者

本横断的研究では、2021年5月1日から2022年5月1日の間にThe Lancet、The Lancet Oncology、JAMA、JAMA Oncology、Journal of Clinical Oncology、The New England Journal of Medicineに掲載された、がんをターゲットとする介入試験を対象とした。

エクスポージャー

医療ライターの支援、または支援なし。

主なアウトカムと測定方法

主なアウトカムは、医療ライターが使用された試験の割合、医療ライターが使用された試験成功の報告割合、試験成功と医療ライター使用の関連性、主要エンドポイントと医療ライター使用の関連性であった。

結果

270件のうち、医療ライターを含む研究は141件(52.2%)、医療ライターを含まない研究は129件(47.8%)であった。医療ライターを含む研究のうち、研究成果があったのは83件(58.9%)であった。医療ライターを含まない研究では、64件(49.6%)が研究成果が得られた(差はP = 0.16)。医療ライターがいる研究は、医療ライターがいない研究よりも、、全生存期間(15 [10.6%] vs 17 [13.2%] )と無病生存期間または無イベント生存期間(16 [11.3%] vs 29 [22.5%] )をエンドポイントにする傾向が低かったのに対し、医療ライターがいる研究は無増悪生存期間(32 [22.7%] vs 17 [13.2%] )をエンドポイントにする傾向が高かった。医療ライターの使用は、すべての研究で結論が好意的に示されることと関連していたが(113 [80.1%] vs 89 [69.0%]; オッズ比 [OR], 1.81 [95% CI, 1.04-3.19] )、他の変数で調整すると関連性はなかった(OR, 1.84 [95% CI, 0.92-3.72] )。

結論と関連性

今回の横断研究では、医療ライターを使用した試験では、無増悪生存期間などの代替エンドポイントや良好な結論が報告さ れた傾向があったが、試験フェーズ、無作為化、研究資金で調整すると、良好な結論との関連は見られなかった。これらの結果は、医療ライターを使用した試験について、ジャーナルがより高度な監視を行う必要があること、また、著者名を適切に表示する必要があることを示唆するものである。

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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