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非喫煙アジア人女性における低線量CTによる肺がん検診は有用なのか(JTO誌の報告)

[2023.02.19]

肺がんといえばタバコ、タバコといえば肺がんというイメージがすっかり定着しています。実際、タバコを吸うと、肺がんになるリスクが約4倍になります。しかし、タバコを吸ったことがない人でも肺がんが発生することをご存じでしょうか。

「非喫煙者肺がんによって現在推定60万人が世界で死亡しており、世界の肺がん死亡の約3分の1を占める」*までになっています。一方、最近の喫煙率の低下により、「タバコが原因の肺がんは減少傾向ですが、特にアジア人女性で非喫煙者肺がんが増加傾向」*にあります。大気中の粒子状物質(PM2.5など)が原因と考えられる肺がんによる死亡はタバコ喫煙に次いで多く、大気汚染によって「2017年には推定26万5000人が死亡し、2007年から2017年にかけて29.3%増加」*しています。

肺がんの死亡を減らすためには、肺がんを早期に発見するしかありません。主として進行期肺がんを対象とした薬物治療の進歩には目を見張るものがありますが、肺がんを治癒または根治させる治療としてはまだ不十分です。やはり、肺がんを早期発見して手術で切除するより優れた治療法はありません。低線量CTによる肺がん検診は、「喫煙者のみを対象とした大規模ランダム化臨床試験において肺がん死亡率の減少が確認されており、米国予防サービス作業部会(USPSTF)により毎年推奨」*されています。一方、非喫煙者における肺がんCT検診には有効性を示す科学的根拠がなく、現在推奨されていません。

今回紹介する論文は、低線量CTを用いた肺がん検診の研究の中で、喫煙者と非喫煙者の両方を対象とした研究を多数集めて、系統的レビューとメタ解析を行っています。非喫煙者が肺がんと診断される相対的なリスクを、喫煙者と比較して明らかにすることが目的です。

その結果、アジア人男性喫煙者とアジア人女性非喫煙者との間で、低線量CT肺がん検診による肺がん発見の確率は統計的有意差がないことが示されました。つまり、アジア人女性の非喫煙者は、喫煙者と同様に肺がんに対する低線量CT肺がん検診を考慮すべきであることが示唆されました。

アジア人、特に非喫煙者を対象として、低線量CTによる肺がん検診を検証する大規模な無作為化比較試験が必要だと思います。

*「」内は下記文献の本文より引用

非喫煙アジア人女性における低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)スクリーニングは、既喫煙アジア人男性と同様に肺がん検出に有効である:系統的レビューおよびメタアナリシス

Low dose computed tomography (LDCT) screening in Asian female never-smokers is as efficacious in detecting lung cancer as in Asian male-ever-smokers: a systematic review and meta-analysis

Journal of Thoracic Oncology

Published:February 09,2023

DOI:https://doi.org/10.1016/j.jtho.2023.01.094

 

概要

はじめに

非喫煙者の肺がんは、世界的に主要ながん死亡原因である。我々は、低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)による肺がん検診の有効性を、系統的レビューとメタアナリシスにより、非喫煙者と既喫煙者の間で比較した。
方法
2021年4月30日までに出版された既喫煙者と非喫煙者のどちらも含むLDCT肺がん検診研究をPubmed/Scopusで検索した。主要評価項目は、既喫煙者に対する非喫煙者の肺がん診断の相対リスク(RR)とした。

結果

14の研究(13はアジアからの研究)が組み込まれた(141,396人の既喫煙者、109,251人の非喫煙者、1961人の肺がん診断例)。肺がん診断のRRは、全非喫煙者に対する喫煙者で1.21(95%CI: 0.89 - 1.65)、男性で1.37(95%CI: 1.08 - 1.75)、女性で0.88(95%CI: 0.59 - 1.31)であった。アジア人の男性非喫煙者および男性既喫煙者に対する女性の非喫煙者において、RRはそれぞれ1.78(95%CI: 1.41 - 2.24)、1.22(95%CI: 0.89 - 1.68)であった。対高リスク既喫煙者(≥30パック年)においては0.99(95%CI: 0.65 - 1.50 )であった。比例メタ解析では、初回撮影時に診断された肺がんは非喫煙者95.4% {95%CI: 84.9 - 100.0} 対 既喫煙者70.9% {95%CI: 54.6 - 84.9}(P = 0.010)、ステージ1で診断された肺がんは 非喫煙者88.5% {95%CI: 79.3 - 95.4} 対 既喫煙者79.7% {95%CI: 71.1 - 87.4}(P = 0.071)と有意差がみられた。既喫煙者に対する非喫煙者の肺がん死亡および5年全死亡のRRはそれぞれ0.27(95%CI:0.1 - 0.55、p<0.001)、0.13(95%CI:0.05 - 0.33)であった。

結論

アジアの女性非喫煙者と男性喫煙者におけるLDCTスクリーニングで発見された肺癌のRRは、統計学的に同等であった。診断された肺がんによる死亡率は、既喫煙者に対して非喫煙者で有意に減少していた。

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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