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ユニバーサル・マスキングの解除 で COVID-19の発症は増える(NEJM誌の報告)

[2022.12.18]

一般にマスクをしましょうと言った時に、集団マスキング(ユニバーサル・マスキング)と個別マスキングのふた通りがあります。集団マスキングは、2022年現在の日本で実施されているように、症状がある人もない人も全ての人がマスクをする方法です。個別マスキングは、マスクをするかしないかは状況に応じて個人に任せる方法です。集団マスキングは、空気中に吐き出されるウイルスの量を減らし、Covid-19の総患者数を減らし、重症化しやすい人々にとって室内をより安全な場所にすることができます。個別マスキングでは、比較的多くのウイルスが循環している環境において、マスクをすることで吸い込むウイルスの量を減らす事ができます。しかし、集団レベルで考えた場合、個別マスキングでは感染拡大を抑えることはほとんどできません。

今回紹介する論文では、集団マスキングが本当に効果があるのか、米国ボストンの学校において調査しています。2022年2月にボストンでは集団マスキング政策を取り下げましたが、ボストンの学区によっては集団マスキングを6月まで維持していました。学校によって教室の清潔度や換気状況、生徒の密集度が異なるため、まだマスクが必要と判断した学区があったからだと思われます。集団マスキングを維持した学区と解除した学区とで、新型コロナ感染の発生率が異なるのかを、2-6月の4か月で比較しています。

集団マスキングを解除すると、1000人の生徒および職員あたり45人の新型コロナ感染症が増加したという結果でした。

(ここから私見です)

集団マスキングを解除すると、新型コロナ感染症は増加することが明らかです。しかし、だからと言って、集団マスキング政策を継続すべきだという結論は早計すぎるのではないかと思います。

コロナ禍以前の日本では、集団マスキングを実施していませんでした。コロナ禍以前でも集団マスキングをしていれば、インフルエンザや風邪をはじめ様々な感染症を予防できたはずです。インフルエンザや風邪の死亡率は低いものの、死に至る可能性があることに変わりありません。でも、マスクをしなかったのは、それらの感染症を社会として受け入れていたからに他ありません。

新型コロナ感染症の重症化率や死亡率は日々変化していきます。その変化をみながら、マスクによるメリットとデメリットを考慮し、集団マスキングから個別マスキングへ移行していくしかありません。医療関係者は感染症と接する機会が多いので、最後までマスキングを継続することになるでしょう。感染症と接することはなく、重症化リスクのある高齢者と同居していないような人は、マスキングをやめるといった段階的な解除が必要だと思います。まずは、屋外でマスクをしていない人をみて目くじらをたてるような風潮から正して、屋内でも換気の悪い閉鎖空間でなければマスクをしなくて大丈夫という寛容な考え方にしていきたいものです。

 

学校におけるユニバーサル・マスキングの解除 - 生徒と職員におけるCovid-19の発症率

Lifting Universal Masking in Schools - Covid-19 Incidence among Students and Staff

N Engl J Med. 2022 Nov 24;387(21):1935-1946. 

DOI: 10.1056/NEJMoa2211029

概要

背景

2022年2月,マサチューセッツ州は州全体の公立学校におけるユニバーサルマスキング政策を取り消し,マサチューセッツ州の多くの学区はその後の数週間の間にマスキング要請を解除した.ボストン広域圏では,ボストン地区と隣接するチェルシー地区の 2 学区のみが,2022 年 6 月までマスキング要請を維持した.マスキング義務の段階的な解除は、ユニバーサルマスキング政策が学校での新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の発症率に及ぼす影響を検証する機会を提供するものとなった。

方法

ボストン広域圏の学区でマスキング要請を解除した学区における生徒と職員の Covid-19発症率と,2021-2022年度にマスキング要請を維持した学区における発症率を比較するために、政策実施における時差の差分解析を行った。また、学区の特徴も比較した。

結果

州全体のマスキング政策が解除される前のCovid-19の発症率の傾向は、学区間で同様であった。州全体のマスキングポリシーが解除された後の15週間で、マスキング要請を解除することで、1000人の生徒および職員あたり44.9例(95%信頼区間、32.6から57.1)の増加がみられ、これは11,901例と推定され、その期間ですべての地区における症例の29.4%に相当するものだった。

マスキングを長く続けることにした地区は、マスキングを早く解除した地区に比べ、校舎が古くて状態も悪く、1教室あたりの生徒数も多い傾向が見られた。また、これらの地区では、低所得の生徒、障害のある生徒、英語学習者の割合が高く、黒人やラテン系の生徒や職員の割合も高かった。この結果は、ユニバーサル・マスキングが、学校におけるCovid-19の発症と対面授業日数の損失を減らすための重要な戦略であることを裏付けている。このように、教育上の不平等を深める可能性を含む、学校における構造的人種差別の影響を緩和するために、ユニバーサル・マスキングは特に有用であると考えられる。

結論

ボストン広域圏の学区において,州全体のマスク着用方針が解除された後の15週間で,生徒・職員1000人あたり44.9人のCovid-19感染者が追加で発生した.

 

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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