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7,000~1万歩/日を歩くと、死亡リスクが低下するらしい(JAMA誌の報告)

[2022.12.04]

生活習慣病の患者さんを診察する際に、食事運動療法の重要さをよく説明します。運動療法については、週に3回程度1日1万歩をお勧めしています。歩かないより歩いた方が体重も低下しますし、健康には良さそうだということは分かるのですが、歩くという簡単な運動と人の生死が関連があるのかは分かりませんでした。

指導される立場としても、「減量して血糖やコレステロール値を下げるために歩きましょう」よりも、「早期死亡を予防するために、健康寿命を延ばすために、歩きましょう」と言われた方が、やる気になるのではないでしょうか。

今回紹介する論文は、そこを明らかにしています。米国の成人約2,000人を約10年間追跡したところ、1日7000歩以上を歩いた人の方が、1日7000歩未満の人よりも、死亡リスクが50~70%低かったと報告しています。興味深いことに歩くスピードと死亡リスクは関連がありませんでした。つまり、ゆっくりでも良いので一日7,000歩を目標に歩くことで、10年後の死亡リスクを減少させることができることになります。

⇩のグラフを見ると、1日7000~10,000歩がもっとも死亡リスクが低く、15,000歩以上になると死亡リスクが緩やかに上がっていくように思います(統計学的に有意差がある訳ではありません)。もしかすると、運動し過ぎは狭心症などの発症リスクが逆にあがって、死亡者が増えるのかもしれません。

私は全く運動をしていない人間であり、患者さんを指導する資格はないのではないかと常日頃思っているのですが、今回のデータをみて歩数計の購入を検討するようになりました。まずは現状把握からスタートです。

 

若年成人における冠動脈疾患のリスク評価試験における中年成人の一日歩数と全死亡率

Steps per Day and All-Cause Mortality in Middle-aged Adults in the Coronary Artery Risk Development in Young Adults Study

JAMA Netw Open. 2021;4(9):e2124516. doi:10.1001/jamanetworkopen.2021.24516

September 3, 2021. doi:10.1001/jamanetworkopen.2021.24516

キーポイント

質問 :

中年の黒人・白人女性および男性における歩数や歩く強度は早期死亡と関連するか?

調査結果:

成人2,110人を対象とした平均追跡期間10.8年のコホート研究において、1日7000歩以上を歩く参加者は、1日7000歩未満の参加者と比較して、死亡リスクが50~70%低かった。歩数の調整にかかわらず、歩く強度と死亡率との関連は認められなかった。

意味 :

このコホート研究では、黒人および白人の中年女性および男性において、1日の歩数の多さが早期の全死因死亡リスクの低さと関連していることが明らかにされた。

 

概要

重要性:

1日あたりの歩数は,臨床および集団の環境における身体活動促進のための有意義な指標である。歩数目標の推進戦略を導くためには,死亡率を含む臨床的エンドポイントと歩数との関連を理解することが重要である。

目的:

黒人および白人男女における1日あたりの歩数と早発(41~65歳)全死因死亡率との関連を推定する。

デザイン、設定、参加者 :

この前向きコホート研究では、Coronary Artery Risk Development in Young Adults (CARDIA) 研究の一部であった。参加者は38歳から50歳で、2005年から2006年にかけて加速度計を装着した。参加者は平均10.8年間(SD 0.9)追跡された。データの解析は2020年と2021年に行われた。

曝露:

1日の歩数は低(<7000歩/日),中(7000~9999歩/日),高(≥10000歩/日)に分類し,歩く強度は30分間の最大歩数と100歩/分以上で過ごした時間で分類した。

主なアウトカムと測定法:

全死因死亡率。

結果

  CARDIA試験の参加者2,110人が対象となり、平均年齢は45.2(SD3.6)歳、女性1,205人(57.1%)、黒人888人(42.1%)、中央値9,146歩/日(四分位範囲[IQR]7,307-11,162)であった。22,845人年の追跡期間中に、72人(3.4%)が死亡した。多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて、低歩数群の参加者と比較して、中歩数群(ハザード比[HR]、0.28[95%CI、0.15-0.54];リスク差[RD]、1000人あたり53[95%CI、27-78]イベント)および高歩数群(HR、0.45[95%CI、0.25-0.81];RD、1000人あたり41[95%CI、15-68]イベント)では死亡リスクが著しく低いことが明らかにされた。

低歩数群と比較して、中/高歩数群は、黒人参加者(HR 0.30[95%CI、0.14-0.63])および白人参加者(HR 0.37[95%CI、0.17-0.81])の死亡リスク低減と関連した。同様に、低歩数群と比較して、中・高歩数群は、女性(HR 0.28[95%CI、0.12-0.63])および男性(HR、0.42[95%CI、0.20-0.88])の死亡リスク低減と関連していた。30分間の最大歩数(最低対最高三分位:HR 0.98[95%CI、0.54-1.77])、100歩/分以上の時間(最低対最高三分位:HR 1.38[95%CI、0.73-2.61])と死亡リスクの間に有意な関連はなかった。

結論と関連性:

今回のコホート研究では、中年期の黒人および白人男女において、約7000歩/日以上歩いた参加者は、7000歩/日未満の参加者と比較して死亡率が低いことが明らかになった。歩く強度と死亡率との関連は認められなかった。

 

 

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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