肥満症の小児(12-17歳)における糖尿病薬セマグルチド投与が有効(NEJM誌の報告)
肥満の薬が海外では開発されてきています。本ブログでも下記の記事で紹介してきました。
新規糖尿病治療薬チルゼパチドが肥満症にも有効(NEJM誌の報告)(2022.07.24更新)
肥満症の薬物療法(やせ薬)の進歩(JAMA誌の総説を紹介)(2021.08.01更新)
セマグルチドが肥満に有効という研究結果が、成人に対してすでに報告されています。
糖尿病薬セマグルチド(オゼンピック®)が、やせ薬として使える日は来るのか(NEJM誌より報告)(2021.03.07更新)
今回は同じセマグルチドが肥満の12~18歳未満の子供にも有効かを、第3相試験として検証しています。
平均年齢15.4歳、平均身長170㎝、平均体重108㎏、平均BMI 37.0、白人が8割を占める参加者に生活習慣是正を指導した上で、セマグルチドもしくはプラセボ(偽薬)を投与し、68週後のBMIの変化率を比較しました。その結果、セマグルチド群ではBMIが-16.1%、プラセボ群ではBMIが+0.6%であり、統計学的有意差を認めました。
日本人で身長170㎝、体重108㎏の15歳は多くはありません。今回は海外のデータであり、これをこのまま日本に当てはめることはできません。日本では肥満を自己責任と考え、病気として考えない風潮があります(私見)。肥満に対する治療薬を開発し、承認を日本で目指すにはまだまだ時間がかかるでしょう。
Once-Weekly Semaglutide in Adolescents with Obesity
青年期肥満症患者における週1回のセマグルチド投与について
November 2, 2022
概要
背景
グルカゴン様ペプチド-1(GLP1)受容体作動薬であるセマグルチドは、成人の肥満治療に週1回2.4mgの皮下投与が行われているが、青年期における評価は不十分である。
方法
この二重盲検並行群間無作為化プラセボ対照試験では、肥満(体格指数[BMI]が95パーセンタイル以上)または過体重(BMIが85パーセンタイル以上)で、体重関連併存疾患を一つ以上もつ青年(12~18歳未満)が登録された。参加者は2:1の割合で無作為に割り付けられ、週1回のセマグルチド皮下投与(投与量2.4mg)またはプラセボを68週間投与し、さら生活習慣への介入を行った。主要評価項目はベースラインから68週目までのBMIの変化率とし、副次的確認評価項目は68週目の5%以上の体重減少とした。
結果
合計201名の参加者が無作為化され、180名(90%)が治療を完了した。参加者のうち1名を除き、全員が肥満であった。ベースラインから68週目までのBMIの平均変化は、セマグルチドで-16.1%、プラセボで0.6%であった(推定差、-16.7%ポイント;95%信頼区間[CI]、-20.3~-13.2;P<0.001)。68週目では、セマグルチド群131人中95人(73%)が5%以上の体重減少を示したのに対し、プラセボ群では62人中11人(18%)でした(推定オッズ比、14.0;95% CI、6.3~31.0;P<0.001)。体重の減少および心代謝系危険因子(腹囲、糖化ヘモグロビン値、脂質(高密度リポ蛋白コレステロールを除く)、アラニンアミノトランスフェラーゼ値)の改善は、プラセボに比べセマグルチドでより大きくなった。胃腸の有害事象の発生率は、プラセボよりもセマグルチドで高かった(62%対42%)。セマグルチド群では5人(4%)が胆石症を発症し、プラセボ群では胆石症を発症した者はいなかった。重篤な有害事象は、セマグルチド群で133名中15名(11%)、プラセボ群で67名中6名(9%)に報告された。
結論
肥満の青年において、週1回のセマグルチド2.4mgの投与と生活習慣への介入は、生活習慣への介入単独よりもBMIを大きく低下させる結果となった。(ノボ ノルディスク社から資金提供あり。STEP TEENS ClinicalTrials.gov番号、NCT04102189。)
:院長 石本 修 (呼吸器専門医)