新型コロナウイルスに対するオミクロン株対応２価ワクチンの追加接種の効果（NEJM誌より）
オミクロン株にも対応できる新型コロナウイルスワクチンが日本でも承認されました。承認されるからには科学的根拠が必要であり、本日紹介する論文はモデルナ社のオミクロン対応２価ワクチンの研究結果です
従来の新型コロナウイルスワクチンをすでに３回接種した人を対象に、４回目としてオミクロン対応２価ワクチンまたは従来のワクチンを接種した場合に、どちらがオミクロン株に対する中和抗体価が高かったかを調べています。
結果は上のグラフのようにオミクロン対応型ワクチンを接種した人の方が、4週間後に測定したオミクロン株に対する中和抗体価が高値でした。つまり、オミクロン対応ワクチンを接種すると、オミクロンに感染しにくくなったり、重症化しにくくなったりすることが期待されるわけです。
しかしながら、感染者を実際に減らすことができたのか気になるところですが、今回の論文では探索的解析しか報告されていません。「オミクロン対応ワクチン接種後に11人、従来型ワクチン接種後に9人の参加者にSARS-CoV-2感染が発生した」と記載されており、少数例のみの報告のため差がありませんでした。今回は中間解析の結果であり、今後の結果を待たれるところです。
A Bivalent Omicron-Containing Booster Vaccine against Covid-19
Covid-19に対するオミクロン含有2価ブースターワクチン
N Engl J Med 2022; 387:1279-1291
DOI: 10.1056/NEJMoa2208343
概要
背景
オミクロンを含む二価のブースターワクチンmRNA-1273.214の安全性と免疫原性は不明である。
方法
現在進行中のこの第 2-3 相試験において、50μg の二価ワクチン mRNA-1273.214（祖先の武漢株Wuhan-Hu-1 と オミクロン株B.1.1.529 [BA.1] のスパイク蛋白のメッセンジャー RNAを 各 25μg）を、すでに承認されている 50μg の mRNA-1273 ブースターと比較した。初回接種として 2 回のワクチン（100μg）を投与後、３ ヶ月以上前に 1 回のブースター（50μg）接種を受けた成人を対象に、mRNA-1273.214 または mRNA-1273 を2 回目のブースターとして投与した。主要目的は、ブースター投与28日目におけるmRNA-1273.214の安全性、反応原性、および免疫原性を評価することであった。
結果
中間解析結果を示す。2 回目のブースターとして、 50 μg の mRNA-1273.214投与群 (437 人) または mRNA-1273投与群 (377 人) に順次割り付けされた。1回目と2回目のブースター投与までの期間の中央値は，mRNA-1273.214（136日）とmRNA-1273（134日）で同程度であった．新型コロナウイルス （SARS-CoV-2）の感染歴のない参加者において，オミクロン株 BA.1 系統に対する中和抗体の幾何平均力価は，mRNA-1273.214 ブースター接種後は 2372.4（95% 信頼区間 [CI], 2070.6 ～ 2718.2），mRNA-1273 ブースターの接種後は 1473.5（95% CI, 1270.8 ～ 1708.4） であった．
さらに、50μgのmRNA-1273.214と50μgのmRNA-1273は、オムロンBA.4とBA.5（BA.4/5）に対する幾何平均力価はそれぞれ727.4（95% CI, 632.8 ～ 836.1） と492.1（95% CI, 431.1 ～ 561.9 ）を示した。また、mRNA-1273.214ブースターは、mRNA-1273ブースターよりも他の複数の変異株（α、β、γ、δ）に対して高い結合抗体反応を誘発した。安全性と反応原性は、2つのブースター・ワクチンで同様であった。この試験では、ワクチンの有効性は評価されなかった。探索的解析では、SARS-CoV-2感染がmRNA-1273.214ブースター後に11人、mRNA-1273ブースター後に9人の参加者に発生した。
結論
オミクロンを含む2価ワクチンであるmRNA-1273.214は、mRNA-1273よりも優れたオミクロンに対する中和抗体反応を示したが、安全性については明らかな懸念はなかった。（モデルナ社からの資金提供。ClinicalTrials.gov番号、NCT04927065）
：院長 石本 修 （呼吸器専門医）
