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睡眠時無呼吸をともなうCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者さんには、しっかりCPAP療法をしてもらった方がよい(AJRCCM誌の報告)

[2022.10.02]

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、世界において最大で推定10億人が罹患している、ごく一般的な病気です。OSA になると、脳卒中や心筋梗塞などを併発するリスクが高く、治療によって軽減されることが知られています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)も一般的な病気であり、喫煙のみならず、大気汚染などの曝露により、全世界で有病率が増加しています。気管支拡張剤の吸入によりCOPDの症状が緩和され、吸入コルチコステロイドと併用することでCOPDの増悪を防ぐことができますが、COPDに対する現在の治療戦略は限られています。

OSAとCOPDの併発は「オーバーラップ症候群」と呼ばれています(個人的意見としては、この紛らわしいネーミングを考え直すべきかと思います)。OSAとCOPDを併発していると、合併症をきたしやすく、予後も不良(=治療経過が悪い)です。しかし、オーバーラップ症候群の治療法はあまり研究されていません。

オーバーラップ症候群の予後がなぜ不良なのか、はっきりしたことはわかりません。しかし、OSAによる夜間睡眠中の酸素不足や二酸化炭素貯留がCOPDの増悪にもつながることは想像できますので、単に病気が2つ持っているから予後不良というわけではないようです。

観察研究のデータによると、オーバーラップ症候群の未治療患者の生存率は、治療を受けている患者やCOPD単独の患者と比較して、低いことが示されています。持続的気道陽圧(CPAP)による治療は、生存率を改善するだけでなく、COPD増悪による入院を減少させたという報告もあります。

今回紹介する論文では、オーバーラップ症候群において、CPAPを指示通りにしっかり使用している患者と使用していない患者で、COPDの予後がどうだったかを後ろ向きに調査した結果を報告しています。CPAP療法は自宅で行う治療ですので、本人が指示通りに使用しなければ、睡眠時無呼吸の治療効果が低くなるのは当然ですが、COPDによる増悪、救急受診、入院の回数も増加することがわかりました。COPD患者さんが睡眠時無呼吸(SAS)を合併していないか、個々の患者さんで見逃しがないようにする必要があります。

 

閉塞型睡眠時無呼吸と慢性閉塞性肺疾患が合併する患者における気道陽圧療法のアドヒアランスがアウトカムに及ぼす影響

Impact of Positive Airway Pressure Therapy Adherence on Outcomes in Patients with Obstructive Sleep Apnea and Chronic Obstructive Pulmonary Disease

Kimberly L. Sterling, Jean-Louis Pépin, Walter Linde-Zwirble, et al.

https://doi.org/10.1164/rccm.202109-2035OC  

概要

背景

閉塞性睡眠時無呼吸症候群と慢性閉塞性肺疾患の合併はオーバーラップ症候群と呼ばれ、予後不良である。しかし、気道陽圧(PAP)治療による転帰やコストに関するデータは不足している。

目的

今回の後ろ向き観察研究では、オーバーラップ症候群患者に対するPAPの健康アウトカム、資源使用量、コストへの影響について検討した。方法
米国におけるオーバーラップ症候群の患者の匿名化された審査済み請求データを、客観的に測定されたPAP使用データに紐づけさせた。デバイスのセットアップから2年後のフォローアップまで1期90日の8期にわたり、Centers for Medicare and Medicaid Servicesの基準を満たした患者をPAP療法へのアドヒアランス例とした。傾向スコアマッチングにより、アドヒアランス患者群と非アドヒアランス患者群の比較可能なグループを作成した。医療資源の利用は、医師の診察回数、すべての原因による救急外来受診回数、すべての原因による入院、PAP装置および消耗品に基づくものとし、代理コストを求めた。

測定方法と主な結果

合計6,810人の患者(平均年齢60.8歳、女性56%)が対象となり、2,328人が非アドヒアランス例であった。治療前の1年間と比較して、PAP治療2年間における救急外来受診、入院、重度急性増悪の回数は、アドヒアランス不良の患者と比較してアドヒアランス良好の患者で有意に減少した(すべてP < 0.001)。このような健康状態の改善と同時に、関連する医療費も大幅に削減された。

結論

オーバーラップ症候群患者によるPAPの使用は,すべての原因による入院,救急外来受診,重症急性増悪,医療費の削減と関連していた.


ひと目でわかる解説

本テーマに関する科学的知見

オーバーラップ症候群は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)単独よりも予後が悪く、医療費の使用率やコストが高くなることが知られている。ある小規模な研究ではオーバーラップ症候群の患者に対する気道陽圧(PAP)治療がCOPD関連の入院率を低下させることが示されたが、PAP治療がオーバーラップ症候群の患者の健康アウトカムとコストに与える影響についてのデータは不足している.

この研究がもたらすもの

本研究では、大規模な医療費請求データベースと遠隔モニタリングによるPAPの使用状況を関連付けることにより、PAP療法を遵守しているオーバーラップ症候群の患者は、PAP療法を遵守していない背景を合わせた患者に比べて、医療資源の使用とコストを有意に低く抑えることにより、健康状態の改善が見られたことが示された。1回の医療機関受診を回避するために必要な治療回数は、医療機関受診の種類に応じて1.0~18.5回と計算された。

 

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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