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喘息の増悪(発作)を繰り返すと、肺機能が低下する可能性。特に18~39歳の喘息増悪に要注意(Thorax誌の報告)

[2022.09.23]

喘息は、症状が良くなったり悪くなったり、変動するのが特徴です。季節の変わり目や風邪をひいたときなどに、せき込んだり、ゼーゼーしたり、呼吸が苦しくなったりします。しかし、朝には良くなって、夜にはまた悪化を繰り返しているうちに、1か月位すると全く症状が無くなります。このように症状が一時的に悪化することを喘息の増悪(発作)と言います。

増悪は喘息の特徴ですが、喘息のみにみられるわけではありません。呼吸器疾患であるCOPD(慢性閉塞性肺疾患:別名タバコ病)も増悪を起こします。COPDは慢性進行性の病気であり、年々肺機能が少しずつ低下していきますが、風邪などを契機に増悪をきたすと肺機能がガクンと一段低下することが知られています。

喘息の患者さんは増悪(発作)を起こすと、呼吸が苦しくなり大変つらい思いをします。でも、治療により良くなると元通りになって、その後の増悪を予防するための定期的な治療もしなくなってしまう患者さんが多数います。つまり、悪くなったときしか治療をしなくなってしまうわけです。

喘息の増悪が、COPDと同様、肺機能悪化に影響するとしたらどうでしょうか?

今回紹介する論文では、英国の喘息患者さんの肺機能を20年間という長期間にわたって調査した研究結果を報告しています。

喘息患者さんもCOPDと同様に、増悪を起こす回数が多いほど、肺機能低下のスピードが速くなっていました。特に40歳未満では、その差が大きくなっており、若年の喘息では増悪をきたさないようにしっかり管理をしなければ、20年後には肺機能が低下し、COPDになってしまうリスクが高くなるのです。

 

 

喘息増悪は肺機能の低下と関連する:縦断的な人口ベースの研究
Asthma exacerbations are associated with a decline in lung function: a longitudinal population-based study

Soremekun S, Heaney LG, Skinner D, et al


Thorax Published Online First: 03 August 2022.
doi: 10.1136/thorax-2021-217032

 

概要

背景・目的

喘息患者において、肺機能(LF)低下が進行すると、予後不良の一因となる。喘息増悪と肺機能低下は関連すると考えられているが、証拠は限られており、結果はまちまちである。

研究方法

今回のヒストリカルコホート研究では、Optimum Patient Care Research Databaseに登録されている幅広い喘息患者集団を対象として、18歳の誕生日以降に3回以上のピークフロー(PEF)の記録(主要分析)または1秒量(FEV1)の記録(感度分析)を持つ喘息患者を調査した。調整済み線形成長モデルにより、平均年間増悪率(AER)とLF曲線の関連を検証した。

結果

5年から50年の追跡を行った109,182人の患者を調査し、そのうち75.280人が調整済み分析に含まれるすべての変数のデータを有していた。 喘息増悪を1回経験するごとに、1年あたり推定-1.34L/min(95%CI -1.23 to -1.50)のPEFの低下が上乗せされていた。 ベースライン時の年齢が18~24歳でAERが2回/年を超える患者は、AERが0回の患者と比較して、さらに1年あたり-5.95L/min (95%CI -8.63~-3.28 )のPEFが低下した。
これらのAER回数ごとLF低下率の差は、ベースライン時の年齢が上がるにつれて徐々に小さくなっていった。 FEV1を用いた結果も上記と同様であった。

結論

本研究は、この種の全国規模のコホートとしては最大であり、喘息増悪がより速いLF低下と関連していることを示した。 これは若年患者でより顕著であったが、高齢患者でも最初のLFが低い場合は明らかであり、成人のおいて時間をかけて持続的に悪化する表現型があることを示唆している。 若年層の喘息患者において過度のLF低下を防ぐために、適切な管理による早期介入の価値がある可能性がある。


このテーマについて既に知られていること

これまでの研究で、喘息における増悪と加速的な肺機能低下との関連性が評価されているが、その結果はさまざまである。ほとんどの研究は少人数の患者を対象とし、重症患者であり、および/または、短期間のフォローアップにより肺機能を適切に把握できない可能性がある。

この研究で追加されたこと

本研究は、平均的な成人喘息患者において、増悪の回数が増加に伴って、年単位の肺機能低下の最も確実な推定値を示す。18~39歳の若年患者において、増悪と肺機能との関連性が強く、肺機能低下のスピードが速かった。1日の平均吸入コルチコステロイド投与量が多い患者でも一致しており、PEFまたはFEV1に基づく曲線でも一致していた。

この研究が研究、実践、政策に与える影響

我々の知見は、喘息の管理、特に肺機能低下を加速させるリスクのある増悪頻度の高い患者に対して、より早期(40歳以前)に介入することの必要性を強調している。

:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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