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慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における呼吸リハビリテーションの費用対効果(米国からJAMA誌の報告)

[2022.06.29]

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙などが原因となって、年々気管支が狭窄し、咳や痰、息切れをきたす慢性進行性の病気です。日本で認知度の低いCOPDは、男性の死因の5位であり、実は身近な病気です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、米国では2400万人が罹患していると推定され、米国および全世界の成人の罹患および死亡の主要原因の一つとなっている。COPDに対する医療費の25%以上は、COPDの急性増悪による入院に起因し、患者4人に1人が30日以内に再入院していると言われている。

自覚症状がない、または軽いCOPD患者さんでも、風邪などをきっかけに、急に息切れや喘鳴が悪化し、歩けないほど苦しくなることがあります。それをCOPDの急性増悪と呼んでいます。入院を要することも多く、入院費や治療費といった医療費がかさむ原因となります。

呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)には、身体機能の改善と行動変容を目的とした運動トレーニング、教育、行動変容に関する指導が含まれる。呼吸リハに参加することで、COPD患者の息切れを緩和し、運動能力を高め、健康関連のQOLを向上させることが示されている。 さらに、呼吸リハは入院および入院後の1年死亡率の有意な低下と関連することが明らかにされている。 無作為化臨床試験と大規模な観察研究の両方で有益性が一貫して証明されているにもかかわらず、呼吸リハの利用率は低いままである。交通手段の不足と自己負担金が、呼吸リハ参加に対する主な障害として挙げられているが、他の研究者は低い償還率が呼吸リハの広範囲の適用に対する重大な障害ではないかと指摘している。

COPD患者さんが急性増悪で入院後、良くなって退院しても、入院前の状態にはなかなか戻りません。それが再入院の原因ともなるため、元の状態もしくは元に近い状態まで戻してあげることが呼吸リハビリテーションの目的です。そして、呼吸リハの効果は科学的に証明されているにもかかわらず、日本でも米国でも導入が進んでいません。呼吸リハに対する診療報酬が低いことが、導入に二の足を踏む要因の一つかもしれません。

今回紹介する論文では、呼吸リハの主に経済的な効果について、米国で検証しています。COPDによる入院後の呼吸リハに参加することにより、患者1人当たり5721ドルの純費用削減および質調整予後(QALE)の改善(0.53年の増加)がもたらされることを報告しています。医療経済的な観点からも呼吸リハを広めることはメリットがあり、政策として行うことを政府に勧める内容となっています。

 

アメリカ成人の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における呼吸リハビリテーションの費用対効果

Cost-effectiveness of Pulmonary Rehabilitation Among US Adults With Chronic Obstructive Pulmonary Disease

JAMA Netw Open. 2022;5(6):e2218189. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.18189

Published: June 22, 2022. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.18189

 

キーポイント

クエスチョン:

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において,COPD入院後の呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,米国の医療システムにおいて費用対効果が高いか?

結果:

公開文献のデータを用いたこの経済評価では,Markov マイクロシミュレーションモデルにより,COPDによる入院後の呼吸リハは純費用節約になることがわかった。

意味:

これらの知見は,COPD 患者の呼吸リハへのアクセスとアドヒアランスを向上させるような政策を支援するために,関係者が利用できるエビデンスを提供するものである。

 

概要

重要性:

慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪後の呼吸リハビリテーション(PR)は,健康関連の QOL を改善しながら COPD 入院および死亡を減らすのに有効であるが,呼吸リハの利用はまだ低い。このような状況における呼吸リハの費用対効果を推定することで、利用を改善するような政策に情報を提供することができる。

目的:

COPD で入院した後に呼吸リハに参加することの費用対効果を推定する。

デザイン、設定、参加者:

今回の経済的評価では、米国でのCOPDによる入院後の呼吸リハ参加と呼吸リハ不参加の費用対効果を、社会的視点からの分析により推計した。米国の医療システムにおける費用対効果を推定するため、Markovマイクロシミュレーションモデルを開発し,耐用年数、1年サイクル、コストとアウトカムともに割引率年3%で計算した.データソースは2001年10月1日から2021年4月1日までの公表文献で、2014年1月1日から2015年12月31日までのCOPDを有するメディケア受益者の分析を主なソースとした。分析は、2019年10月1日から2021年12月15日にかけて設計・実施された。基本ケースマイクロシミュレーション、単変量解析、および確率的感度解析を実施した。

介入方法:

 COPD入院後の呼吸リハビリテーションを呼吸リハなしと比較。

主なアウトカムと指標:

純費用(米ドル)、質調整生存年数(QALYs)、増分費用対効果比。

結果:

 平均年齢76.9歳(年齢範囲、60~92歳)、女性58.6%の仮想コホートにおいて、社会的観点からの基本ケースマイクロシミュレーションでは、呼吸リハにより患者1人当たり5721ドル(95%予測間隔、3307~8388ドル)の純費用削減および質調整予後(QALE)の改善(0.53年の増加[95%予測間隔、0.43~0.63])がもたらされることが明らかにされた。呼吸リハによる純費用節約と QALEの改善という結果は,患者の年齢、Global Initiative for Obstructive Lung Disease のステージ、呼吸リハセッション回数の単変量解析でも変わらなかった。確率的感度分析では,呼吸リハは1000サンプル中すべてのサンプルで純費用削減とQALE の改善をもたらし,どの支払意思額閾値においてもすべてのシミュレーションで優位な戦略であった。総費用の片方向感度分析では、36セッションの完了を仮定すると、呼吸リハセッション1回の費用節約は1セッションあたり171ドルにとどまり、増分費用効果比は5万ドル/QALYでセッションあたり884ドル、10万ドル/QALYでセッションあたり1597ドルであった。

結論と妥当性:

 今回の経済的評価では、COPD入院後の呼吸リハは、QALEの改善とともに純費用の節約につながると考えられた。これらの結果は、関係者がCOPD患者に対する呼吸リハへのアクセスとアドヒアランスを向上させるような政策を特定する必要があることを示唆している。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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