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吸入ステロイドと吸入短時間作用型β2刺激薬の新たな配合剤(ICS/SABA)が喘息増悪に有効(NEJM誌の報告)

[2022.05.21]

気管支が狭窄する原因としては気管支の炎症が考えられています。SABAを使って狭窄をとることはできても、炎症をとることはできません。炎症がひどくなれば、SABAの効果も弱くなっていきます。やはり原因となっている炎症を取り除かなければなりません。抗炎症剤として現在頻用されている吸入ステロイド(ICS)は効果が高く、副作用の少ない優秀な薬です。ICSとSABAの配合剤はまだ発売されていませんが、そのような薬があれば有用である可能性があります。

今回紹介する論文では、SABAであるアルブテロール(サルタノール?)とICSであるブデソニド(パルミコート?)の配合剤を開発したアビリオン社がスポンサーとなり、その有効性を報告しています。アルブテロール180μg+ブデソニド160μg合剤はアルブテロール180μg単剤と比較して、重度の喘息増悪リスクを26%有意に低下させました。

ICS+LABAであるブデソニド+ホルモテロールは、今回のICS+SABAと同様に、喘息増悪時にレスキュー薬として使用でき、複数の臨床試験で効果が確認されています。当ブログでも以下のように紹介してきました。

ステロイド(ブデソニド)+ホルモテロールの必要時吸入療法は、ブデソニド毎日吸入療法よりも、重度のぜん息増悪をおこしにくい:システマティックレビューおよびメタアナリシス(2021.09.26更新)

ブデソニド-ホルモテロール配合剤(シムビコート®)の必要時吸入は、3週間以内の重度の喘息発作を予防する可能性(Lancet Respir Med.誌より)(2020.12.06更新)

シムビコート®の必要時吸入は、パルミコート®の毎日吸入より軽症喘息の発作予防に有効かもしれない(2019.09.08更新)

軽症喘息に対するブデソニド-ホルモテロール(シムビコート®)必要時吸入療法の比較試験(Novel START 試験)(2019.06.09更新

軽症の喘息では、ブデソニド+ホルモテロール(シムビコート®)の必要時吸入療法とブデソニド(パルミコート®)吸入維持療法のどちらが有効なのか(SYGMA2試験)(2019.06.02更新)

ブデソニド/ホルモテロール配合剤(シムビコート®)の必要時吸入という治療法は、軽症喘息患者さんにとって選択肢となり得るのか(SYGMA1試験)(2019.05.26更新)

すでにエビデンスが確定しているブデソニド+ホルモテロールと、ブデソニド+アルブテロールのどちらが短期的な効果が高いのか、長期的なリスクが低いのか、興味があるところです。

 

Albuterol–Budesonide Fixed-Dose Combination Rescue Inhaler for Asthma

喘息に対する吸入アルブテロール+ブデソニド発作治療薬

May 15, 2022

DOI: 10.1056/NEJMoa2203163

 

 

概要

背景

喘息症状が悪化すると、患者は一般的に短時間作用型β2-アゴニスト(SABA)によるレスキューに頼ることになるが、SABAは悪化した炎症に対処できないため、患者は重度の喘息増悪リスクにさらされることになる。アルブテロールとブデソニドの合剤をレスキュー薬として使用すると、アルブテロール単独と比較して、喘息の重症化リスクが減少する可能性がある。

方法

吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けているコントロール不良の中等症から重症の喘息患者において、アルブテロールーブデソニドのレスキュー薬としての有効性と安全性を、アルブテロール単独と比較して評価するために、多国籍第 3 相二重盲検無作為イベントドリブン試験を実施した。試験期間中も吸入グルココルチコイド維持療法は継続して投与された。成人および青年(12歳以上)を1:1:1の割合で、3つの試験群のいずれかに無作為に割り付けた。アルブテロール180μgとブデソニド160μgの合剤(1回の投与量はそれぞれ90μgと80μgの2回分)(高用量合剤群)。アルブテロール180μgとブデソニド80μgの合剤(1回の投与量はそれぞれ90μgと40μgの2回投与[低用量合剤群])、又はアルブテロール180μg(1回の投与量は90μgの2回投与[アルブテロール単体群])。4歳から11歳の小児に対しては、低用量併用群またはアルブテロール単独群の2群のみに無作為に割り付けた。有効性の主要評価項目は、intention-to-treat集団で行われたtime-to-event解析における重症喘息増悪の最初のイベントとした。

結果

合計3132人の患者が無作為化され、そのうち97%が12歳以上であった。重症喘息増悪のリスクは,高用量併用群のほうがアルブテロール単独群よりも26%有意に低かった(ハザード比,0.74;95%信頼区間[CI],0.62 ~ 0.89;P=0.001 ).低用量併用群のハザード比は,アルブテロール単独群と比較して 0.84(95% CI, 0.71~1.00; P=0.052)であった.有害事象の発生率は、3つの試験群でほぼ同じであった。

結論

さまざまな吸入グルココルチコイドを含む維持療法を受けているコントロール不良の中等~重症喘息患者において,アルブテロール 180 μg とブデソニド 160 μg の合剤を必要時に使用した場合,アルブテロールのみを必要時に使用した場合と比較して,重症喘息増悪のリスクは有意に低かった.(アビリオン社からの資金提供あり。MANDALA ClinicalTrials.gov 番号は NCT03769090。)

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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