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新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社)の4回目接種は有効なのか(イスラエルよりNEJM誌の報告)

[2022.04.17]

本ブログでは、新型コロナワクチンに関する論文を下記のように各種紹介してきました。

COVID-19ワクチンの3回目接種によって、重症化と死亡を防ぐ(イスラエルの報告)(2021.11.28更新)

新型コロナワクチンの接種時期が2ヶ月違うだけで、デルタ株の感染率と重症化率が異なる(イスラエルからの報告)(2021.11.21更新)

新型コロナワクチンを接種すると、COVID-19の発症を予防し、症状を軽くできる(アメリカ実臨床での研究,NEJM誌より)(2021.07.22更新)

リアルワールドでのコロナワクチンによるアナフィラキシー発生率は0.025%(64,900人中16人;アメリカ医療従事者の調査から)(2021.04.25更新)

イスラエルでの新型コロナウイルスワクチン集団接種の有効性(NEJM誌の報告)(2021.02.28更新)

オックスフォードとアストラゼネカによる新型コロナウイルスワクチンの有効率は70.4%(LANCET誌の報告)(2021.01.17更新)

モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは94.1%の有効性(NEJM誌より報告)(2021.01.10更新)

BioNTechとファイザーによる新型コロナウイルスワクチンの詳細なデータがNEJM誌より発表(2020.12.13更新)

世界で初めて新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社)が使用された国はイスラエルであり、イスラエルにおける経験、研究が世界をリードしています。現在日本でもコロナワクチンの4回目接種が話題となってきていますが、イスラエルにおける4回目ワクチンの効果がNEJM誌に報告されました。

オミクロン株の流行を受けて、2022年1月よりイスラエルでは、3回目のワクチン接種から4カ月以上経過したハイリスク者(60歳以上または免疫不全の人)を対象に、4回目接種が全国展開されました。

今回紹介する論文では,イスラエル最大のデータベースを使用して,60 歳以上の人を対象に 、BNT162b2 ワクチンの3 回接種と比較して4 回接種の相対的な有効性を,潜在的交絡因子を考慮しながら推定しています。

その結果、4回目のBNT162b2接種により、SARS-CoV-2感染が予防(接種後7~30日目で44~47%、14~30日目で49~54%)、Covid-19の発症が予防(それぞれ53~58%、58~64%)、Covid-19関連入院が予防(それぞれ59~74%、63~79%)、Covid-19の重症化が予防(それぞれ50~74%、48~77%)、Covid-19関連死亡を予防(それぞれ50~90%、48~91%)されることがわかりました。

この研究はプラセボを対照にした臨床試験ではなく、実際の医療現場のデータを集めて、交絡因子を調整し比較した研究です。2022年1~2月のデータを用いており、オミクロン株の流行期と一致しているため、オミクロン株に対してもBNT162b2コロナワクチンは有効であることが想定されます。なお、4回目接種後1か月間の効果しかみていないため、1か月以上の効果についてはまだ明らかではありません。また、60歳以上のみを対象としたことにも注意が必要です。

 

Fourth Dose of BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting

全国で実施したBNT162b2 mRNA Covid-19ワクチンの4回目接種

April 13, 2022

DOI: 10.1056/NEJMoa2201688

概要

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン)変異株による感染の大きな波ととともに、Covid-19ワクチンのブースター接種後の免疫力低下が証明され、いくつかの国ではリスクのある人に4度目のワクチン投与を開始している。

方法

Covid-19関連転帰の予防に対するBNT162b2ワクチンの4回目接種の早期効果を評価するために、2022年1月3日から2月18日まで、イスラエル最大の医療機関で記録されたデータを解析した。60 歳以上の人を対象に,4 回目のワクチン接種の相対的有効性を,少なくとも 4 カ月前に接種した 3 回目のワクチン接種の相対的有効性と比較して評価した.4回目のワクチン接種を受けた人と受けていない人の転帰を,社会人口学的および臨床的変数に関して,この2つのグループの人々を個別にマッチングさせながら比較した.パラメトリックポアソン回帰を用いて感度の解析を行った。 

結果

一次解析では、182,122組のマッチングペアを対象とした。4回目の投与後7日から30日目におけるワクチンの相対的有効性は、PCRにより確認されたSARS-CoV-2感染に対しては45%(95%信頼区間[CI]、44~47)、有症状のCovid-19に対しては55%(95%CI、53~58)、Covid-19による入院に対しては68%(95%CI、59~74)、重症Covid-19に対しては62%(95%CI、50~74)、およびCovid-19による死亡に対しては74%(95% CI、50~90)と推定された。4回目の投与後14日から30日目における推定値はそれぞれ、52%(95%CI、49~54)、61%(95%CI、58~64)、72%(95%CI、63~79)、64%(95%CI、48~77)、および76%(95%CI、48~91)であった。4回目のワクチン接種後7~30日目における絶対リスクの差(3回接種 vs. 4回接種)は,Covid-19関連の入院が10万人あたり180.1件(95%CI,142.8~211.9),重症Covid-19が10万人あたり68.8件(95%CI,48.5~91.9)であった.感度解析では,証明された感染に対する相対的有効性の推定値は,一次解析における推定値と同様であった.

結論

BNT162b2ワクチンの4回目の接種は,少なくとも4カ月前に3回目の接種を受けた人もおけるCovid-19関連転帰の短期的リスクの低減に有効であった.(ハーバードメディカルスクールと Clalit Research Institute の Ivan and Francesca Berkowitz Family Living Laboratory Collaboration による資金提供あり)。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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