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喘息増悪(発作)治療薬としての吸入ステロイドは有効か(NEJM誌の報告)

[2022.03.09]

 

ぜん息の治療は、吸入ステロイド薬を1日1-2回毎日続けることが基本です。しかし、毎日かかさず吸入をすることは、忙しい患者さんにとって難しいことが少なくありません。

2021年9月の本ブログ記事において、ブデソニド+ホルモテロールの必要時吸入(頓用)療法を従来治療と比較した4つの臨床試験をまとめたメタアナリシスを紹介しました。ブデソニド+ホルモテロール頓用は吸入ステロイド単独維持療法よりも、喘息の増悪(発作)を抑える効果があることが示されていました。

ステロイド(ブデソニド)+ホルモテロールの必要時吸入療法は、ブデソニド毎日吸入療法よりも、重度のぜん息増悪をおこしにくい:システマティックレビューおよびメタアナリシス(2021.09.26)

そこで、海外のガイドラインでは、毎日の定期吸入はせず調子が悪いときのみブデソニド+ホルモテロール吸入するという方法が軽症患者に薦められています。このブデソニド+ホルモテロール吸入頓用療法は、日本ではまだ保険適用外の治療ですが、海外ではすでに使用可能です。しかし、海外でも地域や人種によって治療法に差があり、米国ではアフリカ系やラテン系住民において、昔ながらのネブライザーによる発作治療薬の吸入がよく使用されているようです。

短時間作用型吸入β2刺激薬(SABA)は、ぜん息増悪で苦しい時にをおこしたときに、すぐに症状をとってくれます。何十年も前から使用され、ぜん息の最も古い薬ですが、過剰に使用すると、喘息の増悪リスクだけでなく、死亡率を増加させるといわれています。

短時間作用型β2刺激薬(SABA)を過剰に使用すると、喘息の増悪(発作)および死亡リスクが上昇する(2020.12.20 )

今回紹介する論文では、アフリカ系やラテン系アメリカ人の喘息患者の臨床現場に即した新たな治療法を検証しています。新たな治療とはいっても、喘息の増悪時にSABA吸入と同時に、ベクロメタゾンというステロイド薬を吸入するという簡便で安価な方法です。ベクロメタゾン吸入薬(キュバール🄬 旧ベコタイド/アルデシン)は最も古くから使用されている吸入ステロイド薬であって、安価で使用経験も豊富です。もし発作(増悪)がおきたら、SABAと一緒に手持ちの吸入ステロイド薬も追加で吸入するように1回指導するだけで、ブデソニド+ホルモテロールの必要時吸入(頓用)療法と同じ効果が得られるとしたら、途上国や経済的弱者の喘息患者にとって福音となることでしょう。

 

Reliever-Triggered Inhaled Glucocorticoid in Black and Latinx Adults with Asthma

黒人およびラテンアメリカ系成人喘息患者における、発作治療薬としての吸入グルココルチコイド

February 26, 2022

DOI: 10.1056/NEJMoa2118813

 

概要

背景

黒人やラテンアメリカ系の患者に対して、喘息の負荷が過大である。この不均衡な喘息罹患率を軽減するための努力はほとんど成功しておらず,ガイドラインの推奨はこれらの集団における研究に基づいていない。

 

方法

今回の実臨床オープンラベル試験では,中等度から重度の喘息を有する黒人およびラテン系の成人を、患者による発作治療薬としての吸入グルココルチコイド(ベクロメタゾンジプロピオネート,80 μg)と通常ケアの併用療法(介入群)と、通常治療継続群に無作為に割り付けた。参加者は1回の指導を受けた後、15回の月例アンケートを実施した。主要エンドポイントは、年間の重度喘息増悪率とした。副次的エンドポイントは、毎月のAsthma Control Test(ACT:範囲5[不良]~25[完全制御])による喘息コントロール、Asthma Symptom Utility Index(ASUI:範囲0~1、スコアが低いほど障害が大きい)による生活の質、および参加者の報告による仕事や学校、日常活動への欠席日数であった。また、安全性についても評価された。

 

結果

成人1201人(黒人603人、ラテン系598人)のうち、600人が介入群に、601人が通常治療群に割り付けられた。年間の重度喘息増悪率は、介入群で 0.69(95% 信頼区間 [CI], 0.61~0.78)、通常治療群で 0.82(95% CI 0.73~0.92) であった(ハザード比, 0.85;95% CI,0.72~0.999;P=0.048 )。ACT スコアは介入群で 3.4 ポイント(95% CI 3.1~3.6 ),通常ケア群で 2.5 ポイント(95% CI 2.3~2.8 )増加した(差は 0.9;95% CI 0.5~1.2 );ASUI スコアはそれぞれ 0.12 ポイント(95% CI 0.11~0.13 )と 0.08 ポイント(95% CI 0.07~0.09 )増加した(差は 0.04;95% CI 0.02~0.05 ).欠勤日数の年率は,介入群で 13.4 日,通常ケア群で 16.8 日であった(率比,0.80;95% CI,0.67~0.95).重篤な有害事象は12.2%に発生し、群間で均等に分布していた。

 

結論

中等度から重度の喘息を有する黒人およびラテン系成人において,通常のケアに加え,吸入グルココルチコイドとその使用に関する 1 回限りの指導を行うことで,重度の喘息増悪の発生率が低くなることが分かった.(Patient-Centered Outcomes Research Instituteなどの助成による;PREPARE ClinicalTrials.gov番号、NCT02995733)

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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