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デュピルマブ(デュピクセント?)はコントロール不良の小児喘息にも有効(NEJM誌より)

[2021.12.19]

小児喘息では成人喘息とは異なり、喫煙や肥満の影響が少なく、アレルギーの関与が大きいといった特徴があります。特に、小児の場合、喘息の重症度が高くなるほど、親をはじめとする介護者の負担が増加し、就学日数の減少につながります。 さらに、中等から重症の喘息を持つ子どもは、肺の成長が妨げられる恐れがあり、将来的に慢性閉塞性肺疾患(COPD)に進行する危険性が高くなります。

 

しかしながら、喘息の新規薬剤は安全性の懸念から成人を対象にまず開発がなされるため、小児に新規薬剤が承認されるまで時間がかかります。今回紹介するデュピルマブ(デュピクセント?)はまず成人の重症喘息に対して臨床試験が行われ、日本でも成人に対し承認されています。デュピルマブについては、以前本ブログでも紹介しました。

呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)は喘息増悪(発作)を予測できるのか(LIBERTY ASTHMA QUEST試験の事後解析, Lancet Respir Med誌より)[2021.07.04]

中等症から重症のコントロール不良喘息にデュピルマブ(デュピクセント®)は有効[2019.07.21]

 

デュピルマブは、完全ヒト型モノクローナル抗体で、インターロイキン-4受容体のαサブユニットをブロックし、インターロイキン-4およびインターロイキン-13によるシグナル伝達を阻害します。  成人喘息およびアトピー性皮膚炎、鼻茸合併慢性副鼻腔炎に対する治療薬として承認されています。その適応範囲を拡大するために、今回紹介する論文では、中等から重症喘息を持つ6歳から11歳の小児を対象に、デュピルマブの有効性と安全性を多国籍無作為化プラセボ対照第3相試験で評価しています。

デュピルマブによって小児期の喘息がコントロール良好となれば、将来的な肺機能低下、不可逆的な気流制限、成人期のCOPDにつながる可能性が低くなることが期待されます。しかしながら、実際に肺機能が持続的に改善できるのか、肺の成長が正常なパターンに戻るのかについては、より長期間にわたる研究が必要とされます。

 

Dupilumab in Children with Uncontrolled Moderate-to-Severe Asthma

コントロール不良な中等症から重症喘息を持つ小児におけるデュピルマブ

Leonard B. Bacharier, M.D., et al., for the Liberty Asthma VOYAGE Investigators*

December 9, 2021

N Engl J Med 2021; 385:2230-2240

DOI: 10.1056/NEJMoa2106567

 

概要

背景

中等症から重症喘息を持つ小児は、標準治療を受けているにもかかわらず、疾患による症状を有している。モノクローナル抗体デュピルマブは、喘息および他の2型炎症性疾患を有する成人および青年の治療薬として承認されている。

方法

52週間の第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験において、コントロール不良の中等症から重症喘息を持つ6歳から11歳までの408人の小児を、2週間ごとにデュピルマブ(体重30kg未満は100mg、30kg以上は200mgの用量)または同量のプラセボを皮下注射を受けるように割り付けた。すべての小児患者には、ベースとなる標準療法を安定用量で継続投与した。主要評価項目は、年間の重度喘息増悪率とした。副次的評価項目は、12週目の気管支拡張薬前の1秒量予測率(ppFEV1)と24週目のAsthma Control Questionnaire 7 Interviewer-Administered(ACQ-7-IA) スコアのベースラインからの変化とした。2型炎症性喘息の表現型(ベースライン時の血中好酸球数が150個/ml³以上、または呼気中一酸化窒素濃度が20ppb以上)またはベースラインの血中好酸球数が300個/ml³以上という2つの主要効果集団においてエンドポイントが評価された。

結果

2 型炎症表現型の患者において,年間の重度喘息増悪率は,デュピルマブ群で 0.31(95% 信頼区間 [CI], 0.22~0.42),プラセボ群で 0.75(95% CI, 0.54~1.03)(デュピルマブ群の相対リスク減少,59.3%;95% CI, 39.5~72.6;P<0.001 )であった.ppFEV1 のベースラインからの変化の平均(±SE)は,デュピルマブ群で 10.5±1.0 パーセントポイント,プラセボ群で 5.3±1.4 パーセントポイントだった(平均の差は 5.2 パーセントポイント,95% CI,2.1~8.3,P<0.001).また、デュピルマブはプラセボと比較して喘息コントロールを有意に改善した(P<0.001)。ベースライン時の好酸球数が 300 個/ml³以上の患者でも,同様の結果が得られた.重篤な有害事象の発生率は,両群で同程度であった.

結論

コントロール不良の中等度から重度の喘息を持つ小児において、デュピルマブ追加投与はプラセボ投与に比べ、喘息増悪が少なく、肺機能および喘息コントロールは良好であった。(サノフィ社およびレジェネロン社からの資金提供あり。Liberty Asthma VOYAGE ClinicalTrials.gov 番号:NCT02948959。)

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

ぜん息について言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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