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マスク、手洗い、フィジカルディスタンス(物理的距離)は新型コロナウイルス感染症の発生率を減らすのか(メタ解析結果;BMJ誌より)

[2021.12.12]

COVID-19の流行が始まってから、各国政府によるロックダウン(日本では緊急事態宣言)や、屋内換気、空気清浄(HEPAフィルターなど)、マスク着用、手洗い、フィジカルディスタンス、ステイホームなど、国/地域/職場/学校/個人レベルでの多種多様な公衆衛生対策が行われています。

でも、その対策に本当に意味はあるのでしょうか?科学的根拠はどの程度あるのでしょうか?

科学的に高いエビデンスレベルを得るためには、無作為化対照試験を行わなければなりません。例えば、新薬が承認されるためには、既存薬より治療効果が高いか、同等の治療効果であれば既存薬より安全性が高いかを、無作為化対照試験にて証明しなければなりません。

公衆衛生対策が有効であることを、高いエビデンスレベルで科学的に立証することは容易ではありません。たとえば、「COVID-19の感染者が100人ずつ発生しているAとBという1万人都市を二つ選んで、A都市はマスク着用を義務化、B都市はマスク着用を禁止、数か月後にAとBでCOVID-19の感染者数がどれぐらい増加したか比較する」といった臨床試験は現実的ではありません。

実際に導入された公衆衛生対策にどの程度効果があるか後ろ向きに推定する観察研究が主体になってしまい、エビデンスレベルが低くなってしまうのです。

今回紹介する論文では、そのような観察研究を中心にレビューし、メタ解析を試みています。

個々の対策の効果を推定できる研究35件の結果を解析したところ、COVID-19の発症率を物理的距離をとることで25%(相対リスク0.75、95%信頼区間0.59~0.95)、マスク着用で53%(0.47、0.29~0.75)、手洗いで53%(0.47、0.19~1.12)相対的に低下させることが示唆されました

検疫や隔離、全国的ロックダウン、国境や学校、職場の閉鎖などの対策については、研究デザインが不均一であり、メタ解析すらできなかったと述べています。さらに、屋内での換気の増加や屋外での集会について調査した研究は存在しませんでした。

まとめると、マスク着用と手洗いは有効、フィジカルディスタンスはやや有効、その他の対策の効果は不明、と言えそうです。

 

Covid-19の発生率、SARS-CoV-2の感染率、およびCovid-19による死亡率を減少させる公衆衛生対策の効果:システマティックレビューとメタアナリシス

Effectiveness of public health measures in reducing the incidence of covid-19, SARS-CoV-2 transmission, and covid-19 mortality: systematic review and meta-analysis. 

Talic S, et al. BMJ. 2021 Nov 17;375:e068302. 

doi:10.1136/BMJ-2021-068302

PMID: 34789505.

 

概要

目的

covid-19の発生率、SARS-CoV-2の感染、およびcovid-19による死亡率を減少させる公衆衛生対策の効果に関するエビデンスをレビューすること。

デザイン

系統的レビューおよびメタアナリシス。

データソース

Medline,Embase,CINAHL,Biosis,Joanna Briggs,Global Health,およびWHOのCOVID-19データベース(プレプリント)。

研究選択の適格基準

covid-19の発生率、SARS-CoV-2の感染、およびcovid-19による死亡率を減少させる公衆衛生対策の効果を評価した観察研究および介入研究。

主な結果指標 

主な結果指標はcovid-19 の発生率であった.副次的な結果はSARS-CoV-2感染とcovid-19死亡率であった.

データ合成

DerSimonian Laird random effects meta-analysisを実施し、マスク着用、手洗い、フィジカルディスタンスがcovid-19の発生率に及ぼす影響を調べた。プールされた効果推定値とそれに対応する95%信頼区間を計算し、研究間の不均一性をCochranのQ検定とI2の指標を用いて評価し、両側P値を示した。

結果

72件の研究が組み入れ基準を満たし、そのうち35件は個々の公衆衛生対策を評価し、37件は複数の公衆衛生対策を「介入のパッケージ」として評価していた。35件の研究のうち8件がメタアナリシスに含まれた。その結果、手洗い(相対リスク0.47、95%信頼区間0.19~1.12、I2=12%)、マスク着用(0.47、0.29~0.75、I2=84%)、フィジカルディスタンス(0.75、0.59~0.95、I2=87%)によって、Covid-19の発症率が低下することが示された。

検疫と隔離,世界的なロックダウン,国境・学校・職場の閉鎖については,研究の不均一性のためメタ解析はできなかった.これらの介入の効果については、記述的にまとめられた。

結論

本システマティックレビューおよびメタアナリシスでは,手洗い,マスク着用,フィジカルディスタンスなど,いくつかの個人的保護手段および社会的手段が,COVID-19の発生率の低下と関連していることが示唆された.公衆衛生対策を実施するための公衆衛生の取り組みは、地域の健康や社会文化的なニーズを考慮する必要がある。そして、COVID-19ワクチン接種との関連において、公衆衛生対策の有効性をよりよく理解するための今後の研究が必要である。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

新型コロナについて言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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