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小児の下気道感染(気管支炎など)に対する抗菌薬は無効(英国プライマリケアでの研究 LANCET誌より)

[2021.12.05]

今回のコロナ禍において、風邪に抗菌薬を処方しても効かないことが一般にも広く知られるようになりました。風邪はウイルスが原因なので、細菌に効く抗菌薬は全く効きません。しかし、風邪を契機に急性気管支炎を合併したら、抗菌薬が必要なのではないかと考える人は多いかと思います。

今回紹介する論文では、気管支炎など急性下気道感染症(肺炎を除く)の小児に対して抗菌薬またはプラセボを投与した結果を報告しています。ただし、合併症をもたない、プライマリケアを受診した小児のみを対象としています。

今回の結果から、プライマリーケアを受診した合併症のない急性下気道感染症の小児に対して、抗菌薬(アモキシシリン)の投与は、臨床的に意味のある症状改善効果があるとは考えられないことが示された。また、抗菌薬が処方されない場合に、さらなる合併症が発生するというエビデンスも認めなかった。

抗菌薬を投与してもしなくても、結果に変わりはなかったのです。

でも、発熱や喀痰、息切れなどがあったら、抗菌薬投与した方がいいのではないかと考えがちです。本研究では、抗菌薬が一般的によく処方されるような、患者群を事前に規定し、サブグループ解析を行っています。

事前に規定されたサブグループ解析は、胸部徴候、喀痰または肺雑音、発熱歴、医師による体調不良の評価、息切れ、酸素飽和度95%未満、入院を予測するSTARWAVe臨床ルールについて行われた。

一般的に抗菌薬の処方が多い主要な臨床サブグループにおいても、抗菌薬が症状の程度に臨床的に重要な違いをもたらすことはないと考えられた。

症状がひどそうだから、抗菌薬を処方しておこうという考えは改めなければならないようです。

ではどうすればよいのか。

肺炎が疑われない限り、臨床医は胸部感染症を呈するほとんどの小児に対して、いわゆるセーフティーネット的なアドバイス(つまり、どのような病気の経過が予想されるか、いつ再診が必要になるかを説明すること)をすべきであるが、抗菌薬を処方してはならない。

安易に抗菌薬を処方せず、説明とアドバイスをせよということでしょう。

 

 

英国のプライマリーケアを受診した小児の下気道感染症に対する抗菌薬投与(ARTIC PC):二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験

Antibiotics for lower respiratory tract infection in children presenting in primary care in England (ARTIC PC): a double-blind, randomised, placebo-controlled trial

Paul Little, et al.

 

The LANCET VOLUME 398, ISSUE 10309, P1417-1426, OCTOBER 16, 2021

Published:September 22, 2021

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01431-8

 

概要

背景

抗菌薬耐性は、世界公衆衛生上の脅威となっている。抗菌薬は、合併症のない小児下気道感染症(LRTI)に非常によく処方されるが、抗菌薬の有効性に関する無作為化比較試験によるエビデンスは、全集団においても主要な臨床サブグループにおいてもほとんどない。ARTIC PCでは、プライマリーケアを受診した、合併症のない小児LRTI(肺炎を除く)において、中等度以上の症状を有する期間をアモキシシリンが短縮するかどうかを、全体および主な臨床的サブグループで評価しました。

方法

ARTIC PCは、イングランドにある56軒の一般診療所で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照試験である。対象患者は、プライマリーケアを受診したで、臨床的に肺炎が疑われず、21日以内に症状が出て、原因が感染症と判断された、合併症のない急性LRTIの生後6カ月から12歳までの小児であった。患者は、アモキシシリン50mg/kg/日またはプラセボ経口懸濁液を3回に分けて7日間経口投与する群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。患者と治験責任医師は、治療の割り当てについてマスキングされた。主要評価項目は中等度以上の症状(検証された日誌を用いて測定)が、最長28日または症状が消失するまでの期間とした.主要評価項目と安全性はintention-to-treat集団で評価された。本試験は、ISRCTN 登録(ISRCTN79914298)されている。

調査結果

2016年11月9日から2020年3月17日の間に、432名の小児(無作為化後にデータの使用許可を取り下げた6名を含まない)を、抗菌薬群(n=221)またはプラセボ群(n=211)に無作為に割り付けた。症状の持続時間に関する完全なデータが得られたのは317名(73%)で、欠落していたデータは主要解析のために入力された。中等度以上の症状の持続期間の中央値は両群間でほぼ同じであった(抗菌薬群5日[IQR 4-11]、プラセボ群6日[4-15]、ハザード比[HR]1-13[95%CI 0-90-1-42])。事前に規定した5つの臨床サブグループ(胸部徴候、発熱、医師による体調不良の評価、痰または胸部雑音、息切れを伴う患者)において、主要アウトカムに治療群間の差は認められなかった。コンプリートケース解析およびパープロトコール解析による推定値は、インピュテーションデータ解析と同様であった。

解釈

合併症のない小児の胸部感染症に対するアモキシシリンの投与は、全集団においても、抗菌薬がよく処方される主要なサブグループにおいても、臨床的に有効であるとは考えられない。肺炎が疑われない限り、臨床医は胸部感染症を発症したほとんどの小児に対して、セーフティーネット上のアドバイスを行うべきであるが、抗菌薬を処方すべきではない。

資金提供

国立衛生研究所(National Institute for Health Research)。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

肺炎について言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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