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オセルタミビル(商品名タミフル)はインフルエンザの重症化予防には役立たないのか(JAMA Intern Med誌より)

[2024.02.11]

院長による概説

オセルタミビル(商品名タミフル)は、世界中で広く使用されるインフルエンザウイルスに対する薬です。日本では、他にもザナミビル(リレンザ)、ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル)、そしてバロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ)が抗インフルエンザ薬として利用できます。オセルタミビルは最も古くから使用されており、後発品も存在するため、比較的手頃な価格で服用できます。

インフルエンザの症状としては、高熱や全身のだるさ、関節の痛みなどの全身症状が顕著で、他にも一般的な風邪と同じように喉の痛みや鼻水、咳が見られます。個人的にも感染してしまった経験から言うと、風邪と比べてインフルエンザはつらいので、毎年ワクチンを受けるようにしていますし、感染したら早めに抗インフルエンザ薬を服用します。抗インフルエンザ薬は、有症状期間を1日程度短縮する効果があることが分かっています。つまり、熱が3日間続くところを2日間に短縮できます。たった1日だけかと思ったこともありましたが、実際にインフルエンザにかかると1日でも早く治りたいと感じるものです。抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に服用する必要がありますが、日本では医療へのアクセスが良いため、ほとんどのインフルエンザ患者が何らかの抗インフルエンザ薬を服用していると思われます。

COVID-19パンデミックの始まりから終わりまでを経験してきた私たちは、抗コロナウイルス薬の開発状況を常に注視することができました。COVID-19は致死性のある感染症であり、そのために2類相当に分類されました。したがって、抗ウイルス薬やワクチンの開発は、主に死亡率や重症化の削減を目指して進められてきました。これは抗インフルエンザ薬の場合とは大きく異なります。抗インフルエンザ薬は主に有症状期間の短縮を目指して開発されてきたからです。

COVID-19が5類に分類されると同時に、人々の感染対策が緩んだことから、COVID-19だけでなくインフルエンザなどの様々な感染症が増加しています(2024年2月現在)。そもそも私たちが病気と闘う理由は、まず死亡率を低下させることが最優先であり、その後に症状緩和やQOL向上が続くべきだと考えます。これは、癌でも感染症でも同じことが言えると思います。しかしながら、抗インフルエンザ薬が死亡率の低下や重症化の予防効果を実際に持っているかは、まだ証明されていません。

今回紹介する論文では、6,166人の患者を含む15のランダム化臨床試験をもとにメタアナリシスを行っています。その結果、オセルタミビルは、プラセボまたは標準治療と比較して、初回入院のリスクを減少させないことが示されました。死亡率や重症化率を入院率に置き換えたため、厳密には異なる可能性がありますが、オセルタミビルがインフルエンザによる死亡率や重症化リスクを低下させる証拠はないと言って良いでしょう。サブグループ解析において、高齢者や基礎疾患を持つ患者に限定しても、オセルタミビルは入院のリスクを減らすことがありませんでした。

メタアナリシスはエビデンスレベルの最も高い研究ですが、この論文のDiscussionにも述べられているように、いくつかの注意点があります。日本で主に行われているインフルエンザ抗原検査だけでなく、この研究ではウイルス培養やPCRも使用されており、よりウイルス量の少ない軽症者が登録されていた可能性があります。そのため、プラセボ群においても入院率が約1%と著しく低くなっています。オセルタミビルの投与により、この1%から更に30%下げることを有意差をもって証明するには、約3万人の患者を登録する研究が必要と試算しています。しかし、入院率が1%から0.7%に有意に低下することを仮に証明したとしても、それが臨床的にどれほど意味があるのかは疑問です。インフルエンザのウイルス量が多い集団など、インフルエンザによる入院率がもっと高い患者集団を設定して、新たな臨床試験を計画する必要があるでしょう。

インフルエンザ外来患者の入院予防に使用されたオセルタミビルの評価;系統的レビューとメタアナリシス

Original Investigation

June 12, 2023

Evaluation of Oseltamivir Used to Prevent Hospitalization in Outpatients With Influenza A Systematic Review and Meta-Analysis

JAMA Intern Med. 2024;184(1):18-27. 

doi: 10.1001/jamainternmed.2023.0699

 

キーポイント

疑問  

インフルエンザが確認された成人と若年者の外来患者に対するオセルタミビルの投与は、初回入院リスクの低下と関連するか?

所見 

 6166例の患者を含む15のランダム化臨床試験の系統的レビューおよびメタ解析において、オセルタミビルはプラセボまたは標準治療と比較して初回入院リスクの低下とは関連していなかった。結果は、入院リスクが高いと考えられる患者のサブグループにおいても同様であった;しかしながら、信頼区間の幅は広かった。

意味  

入院を予防するためにオセルタミビルによる早期治療が有益な患者を決定するためには、適切な高リスク集団を対象とした十分な検出力を有する試験が必要である。

概要

重要性  

オセルタミビルは広く使用されているにもかかわらず、外来患者に投与した場合に入院リスクが低下するかどうかについて、先行するメタアナリシスによる総括的エビデンスでは矛盾した結論が得られている。複数の大規模な医師主導ランダム化臨床試験は、まだメタ解析されたわけではない。

目的  

インフルエンザに感染した成人および若年者の外来患者における入院予防におけるオセルタミビルの有効性および安全性を評価すること。

データソース  

PubMed、Ovid MEDLINE、Embase、Europe PubMed Central、Web of Science、Cochrane Central、ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registryを調査開始時から2022年1月4日まで検索した。

試験の選択 

対象研究は、インフルエンザ感染が確認された外来患者を対象に、オセルタミビルとプラセボまたは非活性対照薬を比較した無作為化臨床試験である。

データの抽出と統合 

 この系統的レビューとメタ解析では、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses(PRISMA)の報告指針に従った。2人の独立した査読者(R.H.およびÉ.B.C.)がデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias Tool 2.0を用いて偏りのリスクを評価した。それぞれの効果量は、制限付き最大尤度ランダム効果モデルを用いてプールされた。エビデンスの質は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluations)の枠組みを用いて評価した。

主要アウトカムと測定法 

 入院はリスク比(RR)およびリスク差(RD)推定値と95%CIでプールされた。

結果  

同定された2352件の研究のうち、15件が組み入れられた。intention-to-treat感染者集団(ITTi)は6166人で構成され、54.7%がオセルタミビルを処方されていた。研究集団全体では、53.9%(10471例中5610例)が女性であり、平均年齢は45.3(14.5)歳であった。全体として、オセルタミビルはITTi集団における入院リスクの低下とは関連していなかった(RR、0.79;95%CI、0.48~1.29;RD、-0.17%;95%CI、-0.23~0.48%)。オセルタミビルはまた、高齢者集団(平均年齢65歳以上:RR、1.01;95%CI、0.21~4.90)または入院リスクが高いと考えられる患者(RR、0.65;0.33~1.28)における入院の減少とも関連していなかった。安全性集団において、オセルタミビルは悪心(RR、1.43;95%CI、1.13~1.82)および嘔吐(RR、1.83;95%CI、1.28~2.63)の増加と関連したが、重篤な有害事象(RR、0.71;95%CI、0.46~1.08)は増加しなかった。

結論と関連性 

 外来インフルエンザ感染者におけるこの系統的レビューおよびメタ解析では、オセルタミビルは入院リスクの低下とは関連しなかったが、胃腸有害事象の増加とは関連していた。この目的での使用の続行を正当化するためには、適切な高リスク集団を対象とした十分な検出力を有する試験が必要である。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医、喘息専門医)

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

 

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