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生物学的製剤で治療された重症喘息患者の治療効果と臨床的寛解(CHEST誌より)

[2024.01.01]

院長による概説

重症喘息は、高用量の吸入ステロイド薬(ICS)などの治療にもかかわらず、喘息がうまくコントロールできない状態を指します。喘息患者の約5%~10%がこの状態に該当すると言われています。重症喘息の場合、増悪(発作)が時折起き、その治療には断続的な経口コルチコステロイド(OCS)の投与が必要となることがあります。また、OCSの維持療法(維持OCS)も必要となることもあり、OCSの副作用が問題となります。

現在の喘息治療は、喘息の完治や寛解を目指すよりも、病勢のコントロールの改善と維持に焦点を当てています。ただし、最近では、喘息の原因となる炎症に直接アプローチする生物学的製剤の開発と導入により、重症喘息においても寛解を治療目標とする考え方がでてきました。同様の傾向は関節リウマチでも見られ、抗リウマチ薬と生物学的製剤を組み合わせた治療により、関節リウマチの経過が慢性から治癒可能な状態に変わりつつあります。

重症喘息に治療薬を使った場合、その効果や寛解の定義についてはまだ明確なコンセンサスが得られていません。ただし、今回紹介する論文では、生物学的製剤の治療効果が次のように定義されています。まず、(1)治療前12ヵ月で2回以上の増悪があった場合は年間の増悪率が50%以上減少すること、そして(2)維持OCSが治療前に必要だった場合はOCSの投与量が治療前から50%以上減少することが効果ありとみなされました。さらに、(1)と(2)の両基準を治療前に満たす場合、OCSの使用量が減少しなくても、年間の増悪率が50%以上減少すると治療効果があるとされました。

次に、臨床的寛解については、Menzies-Gowらによって提案された定義が適用されました。治療を終えて12ヵ月後に、増悪がなく、維持OCSが必要なく、Asthma Control Questionnaire(ACQ-6)のスコアが1.5以下である場合、それが臨床的寛解とされました。また、肺機能の最適化と安定化は、肺機能が正常化されていること(FEV1が予測値の80%以上)と解釈されました。

今回の研究は、デンマークで生物学的製剤による治療を受けた全患者を対象としており、79%の患者が12ヵ月間の生物学的製剤の治療後に臨床的意義のある治療効果を認めました。さらに、全患者の約20%が臨床的寛解(増悪の消失、維持OCSの不使用、ACQ-6スコア1.5以下、肺機能の正常化[予測値の80%以上])を達成しました。どのような患者が生物学的製剤投与によって臨床的寛解を達成できるかも解析されています。喘息の罹病期間が短く、肥満度の低い患者ほど寛解に至る可能性が高く、早期の介入が重要であることが示唆されました。

 

生物学的製剤で治療された重症喘息患者の治療効果と臨床的寛解

Clinical Response and Remission in Patients With Severe Asthma Treated With Biologic Therapies
Chest . 2023 Nov 3:S0012-3692(23)05695-7.

DOI: 10.1016/j.chest.2023.10.046

要旨

背景

重症喘息に対する新規の生物学的標的治療薬の開発は、新たな治療目標として寛解を考えるきっかけとなった。

研究課題

生物学的製剤による治療を受けた重症喘息患者の何割が臨床的寛解を達成し、さらに何がその治療効果を予測できるか?

研究デザインと方法

デンマーク重症喘息登録は、デンマークで重症喘息に対して生物学的製剤による治療を受けているすべての成人患者を含む全国規模のコホートである。この観察的コホート研究では、12ヵ月後の治療に対する "臨床的奏効 "を、増悪が50%以上減少したこと、および(または)必要な場合は経口コルチコステロイドの維持量が50%以上減少したことと定義した。「臨床的寛解」は、増悪および維持用経口コルチコステロイドの中止、ならびに治療12ヵ月後の肺機能の正常化(FEV1>80%)およびAsthma Control Questionnaire-6スコア≦1.5によって定義された。

結果

12ヵ月の治療後、生物学的製剤未使用の501例中104例(21%)に治療効果が認められず、397例(79%)に臨床的効果が認められた。後者のうち97例(24%)が臨床的寛解の基準を満たし、全患者の19%に相当した。生物学的製剤による治療を受けた全患者集団において、寛解が予測さ れる要因としては、罹病期間の短さとBMIの低さが挙げられた。

解釈

生物学的製剤による治療を開始したほとんどの成人患者で臨床効果が得られ、12ヵ月間の治療で19%の患者で臨床的寛解が観察された。生物学的製剤による臨床的寛解を達成した際の長期予後を評価するためには、さらなる研究が必要である。

持ち帰りポイント

研究課題

生物学的製剤による治療を受けた重症喘息患者の何割が臨床的寛解を達成し、何が治療効果を左右するか?結果 この研究は、重症喘息患者のほぼ5人に1人が生物学的製剤による治療後に寛解を達成することを明らかにした。寛解を予測できる因子として、治療開始時の罹病期間が短いこと、BMIが低いことが挙げられた。

解釈

臨床的寛解は、重症の成人喘息患者において達成可能な治療目標である。治療による寛解が長期的な臨床転帰に及ぼす影響について明らかにするためには、より大規模な前向き研究が必要である。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医、喘息専門医)

拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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