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トリプル吸入はダブル吸入療法より喘息に効果は高いのか(JAMA誌よりメタアナリシスの報告)

[2021.06.06]

喘息に使用できる吸入薬は、吸入コルチコステロイド(ICS)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)、長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)の3剤があります。その使用方法は、ザックリ言うと、軽症喘息にはICS、中等症にはICS+LABA、重症にはICS+LABA+LAMAというように、ICSを基本にして薬を追加していくのが一般的です。

 

喘息吸入薬はICS→LABA→LAMAの順番に開発されており、エビデンスもその順番に積み重なっています。エビデンスの多い薬がガイドラインでは推奨されることとなっており、開発の遅いLAMAはガイドラインでは推奨度は他に比べて低くなっています。

しかし、病気に最も効く薬が最も推奨されるべきであり、開発順に推奨されるべきではないはずです。喘息に対して3番目に開発されたLAMAが、ICSに取って代わることはさすがにないでしょうが、LABAに取って代わる時代はくるかもしれません。

 

今回紹介する論文では、ICS+LABAとICS+LABA+LAMAを比較した臨床研究を20件集めて、統合解析(メタアナリシス)を掲載しています。メタアナリシスは評価する患者数が非常に多くなるため、レベルが最も高いエビデンスとして、ガイドラインで評価されます。一つの臨床研究では患者数が少ないため有意差がでなかった項目が、メタアナリシスで有意差がでることがあります。

今回の研究では、LAMAを追加することで喘息の増悪が抑制されることが証明されたことが大きいと思います。喘息の増悪は一人の患者で年に1-2回と数が少ないので、一つの臨床試験のみで証明することが難しいからです。

 

Triple vs Dual Inhaler Therapy and Asthma Outcomes in Moderate to Severe Asthma

A Systematic Review and Meta-analysis

中等症から重症の喘息における3剤併用吸入療法と2剤併用吸入療法の効果を比較

システマティックレビューとメタアナリシス

Published Online: May 19, 2021. doi:10.1001/jama.2021.7872

キーポイント

質問 

中等症から重症の持続性喘息患者において,吸入コルチコステロイド(ICS)および長時間作用型β2作動薬(LABA)に長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)を追加すると、臨床転帰や有害事象に違いがあるのか?

 

結果

 20件の無作為化臨床試験と11,894名の患者を含めたこのシステマティックレビューとメタアナリシスでは、3剤併用療法(ICS+LABA+LAMA)は、2剤併用療法(ICS+LABA)と比較して、重度の喘息増悪の減少(リスク比 0.83)と喘息コントロールのわずかな改善に有意に関連していたが、QOLとほとんどの有害事象には有意な差はなかった。

 

意味

中等症から重症の喘息患者において、三剤併用療法と二剤併用療法を比較すると、重度の喘息増悪が少なく、喘息コントロールがわずかに改善することと有意に関連したが、QOLには有意な差がなかった。

 

概要

 

重要性 

中等症から重症の喘息に対して、吸入コルチコステロイド(ICS)および長時間作用型β2作動薬(LABA)に長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)を追加することの有益性と有害性はまだ不明である。

 

目的 

小児および成人のコントロール不良の持続性喘息に対する3剤併用療法(ICS+LABA+LAMA)と2剤併用療法(ICS+LABA)の効果および有害事象を系統的に統合すること。

 

データソース 

2017年11月から2020年12月8日までのMEDLINE,Embase,CENTRAL,ICTRP,FDA,EMAのデータベース(言語制限なし)。

 

研究の選択

中等症から重症の喘息患者を対象に、3剤併用療法と2剤併用療法を比較した無作為化臨床試験(RCT)を2名の研究者が独立して選択した。

 

データの抽出と合成 

2名の審査員が独立してデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。個々の患者レベルの増悪データを含むランダム効果メタアナリシスを使用した。エビデンスの確実性(質)の評価にはGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)手法を用いた。

 

主なアウトカムと評価項目 

重度の増悪、喘息コントロール(喘息コントロール質問票[ACQ-7]を用いて測定、各項目は0[完全にコントロールされている]から6[ひどくコントロールされていない]までの7項目のリスト、最小重要差0.5)、QOL(喘息関連QOL[AQLQ]ツールを用いて測定、スコア範囲は1[ひどい障害]から7[障害がない]、最小重要差0.5)、死亡率、有害事象。

 

結果 

3種類のLAMAを用いた20件のRCTが、11,894人の小児および成人(平均年齢52歳[範囲9~71歳]、女性57.7%)を登録した。確実性の高いエビデンスによると、3剤併用療法と2剤併用療法を比較すると、重度増悪リスクの低減と有意に関連しており(9試験[9,932人]、22.7% vs 27.4%、リスク比 0.83[95%CI、0.77~0.90])、喘息コントロールの改善が認められた(14試験[11,230人];標準化平均差[SMD]、-0.06[95%CI,-0.10~-0.02];ACQ-7スケールの平均差、-0.04[95%CI,-0.07~-0.01])。喘息関連のQOL(7試験[5,247例];SMD,0.05[95%CI,-0.03~0.13];AQLQスコアの平均差,0.05[95%CI,-0.03~0. 13];中程度の確実性のエビデンス)、または死亡率(17試験[11,595例];0.12%対0.12%;リスク比,0.96[95%CI,0.33~2.75];高い確実性のエビデンス)には2剤併用と3剤併用の間で有意差がなかった。3剤併用療法は、口渇および発声障害の増加と有意に関連していたが(10試験[7,395例]、3.0%対1.8%、リスク比1.65[95%CI、1.14~2.38]、確実性の高いエビデンス)、治療関連および重篤な有害事象は群間で有意な差はなかった(中程度の確実性のあるエビデンス)。

 

結論および関連性 

中等症から重症の喘息を有する小児(6~18 歳)および成人において,3 剤併用療法は 2 剤併用療法と比較して,重度の喘息増悪は減少し、喘息コントロールはある程度改善していたが、QOL や死亡率には有意な差はなかった。

 
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

喘息についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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