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非喫煙者一人が受動喫煙が原因で亡くなるのに、何人の喫煙者が関与するのか。

[2020.03.29]

受動喫煙により、がんや子供の喘息などの病気のリスクが上昇することはよく知られています。そのため、日本では健康増進法が改正され、本年4月から原則屋内禁煙になります。しかし、「受動喫煙によりタバコを吸わない人が病気になるから、禁煙してください」と喫煙者に告げても、喫煙者の心には響かないのではないでしょうか。

 

今回の論文では、受動喫煙により非喫煙者が一人亡くなるのに、喫煙者が何人必要なのかという観点から全世界でのデータを解析しています。

その結果、全世界では52人の喫煙者が受動喫煙による非喫煙者の死亡に関与しているとのこと。タバコを吸う人が52人集れば、タバコを吸わない人を一人病死させることができると考えてもよいでしょう。この数字が少ない方が、喫煙者一人当たりの非喫煙者に対する受動喫煙の影響が強いことになります。1990年では31人であったのが、2016年には52人に増えているので、喫煙室など受動喫煙対策が世界で進んできている効果なのかもしれません。受動喫煙対策が進んでいない中東や北アフリカの数字が悪いのことからも、政策が重要であることがわかります。

 

日本のみの数字はわかりませんが、4月からの改正健康増進法による受動喫煙対策により、非喫煙者の犠牲者が減っていくことを期待します。

 

非喫煙者一人が受動喫煙が原因で亡くなるのに、何人の喫煙者が関与するのか

JAMA Netw Open. 2020;3(3):e201177. Published: March 17, 2020.

doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.1177

キーポイント

質問

受動喫煙にさらされた非喫煙者1人の死亡に、何人の喫煙者が関わっているのか。

 

調査結果

今回の横断的疫学評価では、Our World in Dataを使用して、受動喫煙で亡くなった人一人あたりの喫煙者数(平均24年間喫煙)を計算した。全世界のおいて、1990年では喫煙者31.3人であったが、2016年には喫煙者52.3人に変化した。

 

意味

本研究の調査結果により、受動喫煙にともなう害の大きさを政策立案者がもっと理解できるようになり、一般市民の意識向上にも役立つと考えられる。

 

概要

重要性

世界中の喫煙者10億人が、非喫煙者88万人の受動喫煙(SHS)関連死に毎年寄与していると世界保健機関は推定している。 非喫煙者に対するSHSの害の大きさを理解すれば、喫煙が与える結果をもっと認識し、非喫煙者、特に子供を守るための対策を設計するのに役立つと考えられる。

 

目的

世界規模および世界銀行のさまざまな地域で、受動喫煙で死亡した人1人あたりに関連する喫煙者数を計算すること。

 

設計、設定、および参加者

この横断的疫学評価では、Our World in Dataのデータを使用して、1990年から2016年まで、それぞれの国における喫煙者数と、その国の受動喫煙に関連して早期に死亡した人数を表にした。 すべての国で消費されたタバコの平均本数も解析に含めた。次に挙げる世界銀行の地域データが収集された:北アメリカ、ラテンアメリカとカリブ海、ヨーロッパと中央アジア、中東と北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、南アジア、東アジアと太平洋(1990年と2016年より)。 2019年7月に統計解析を実施した。

 

曝露

受動喫煙

 

主な結果と測定

非喫煙者で受動喫煙者1人の死亡に関連するパック年数としてパック年指数を計算した。そして、非喫煙者一人の死亡に関係する、24年間(つまり、平均喫煙期間)喫煙した人の数としてSHS指数を計算した。 

 

結果

全世界での受動喫煙者1人の死亡に関連するSHS指数は、1990年での31.3(95%CI、30.6-32.0)から、2016年での喫煙者52.3(95%CI、51.2-53.5)へ改善した。地域差をみると、中東および北アフリカでの喫煙者42.6(95%CI、41.6〜43.5)から北米での喫煙者85.7(95%CI、83.8〜87.7)まで幅広かった。 全世界において、1人の死亡に関連したパックイヤー指数は1990年での751.9(95%CI、736.3-770.7)から2016年での1255.9(95%CI、1227.2-1284.4)へと改善した。

 

結論と関連性

本研究では、SHS指数とパックイヤー指数の両者に実質的な地域格差があることにより、非喫煙者に対する受動喫煙の害の程度に大きな違いがあることを示した。 地域の政策立案者が非喫煙者をよりよく保護し、国民の関与を高めるための対策を実施する際に、今回の情報が役立つ可能性がある。 非喫煙者1人の死亡に関与するパック年数と喫煙者の数は研究期間を通じて改善傾向にはあったが、2016年の時点で、52.3人の喫煙者が非喫煙者1人の死亡に関連していた 。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

タバコについて言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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