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重症の睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸など)では、初回診察からCPAP療法開始までの待ち時間が短い方が、その後のCPAP使用率が高く治療効果もよい(JAMA誌より)

[2020.05.10]


30〜70歳の成人では、OSA(無呼吸低呼吸指数が1時間あたり5回以上)の推定有病率は男性で34%女性で17%と報告されています。

OSAは未治療で放置していると、翌日に疲労や眠気を残すだけでなく、神経系統や心臓などの臓器にも過度の負担をかけ、生活の質の低下、うつ病、自動車事故のリスクの増加につながります。

そのため、重症OSA(無呼吸低呼吸指数が1時間あたり30回以上)の患者は、一般集団と比較して、全死因の死亡リスクが2〜3倍高くなると報告されています。

SDBの診断と治療には、長い待ち時間が必要な地域が見られます。 持続的気道陽圧(CPAP)による治療が導入されるまでの待ち時間は、ベルギーの2か月が最も短く、カナダでは36か月、英国では60か月と報告されています。
日本の報告はありませんが、おそらく2-3か月ではないでしょうか。

今回紹介する論文では、この待ち時間と治療効果に焦点をあてた研究結果を発表しています。
同じCPAP療法を導入するにしても、導入までの待ち時間が短い方が、CPAP療法の使用率が高くなり効果も上がることがわかりました。

患者さんの立場になると、睡眠時無呼吸の疑いがありますと言われてから、検査と治療開始に何か月も待たされてしまうと、現状に慣れてしまい、治療しようという気持ちが冷めてしまうのでしょう。


重症の睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸など)では、初回診察からCPAP療法開始までの待ち時間が短い方が、その後のCPAP使用率が高く治療効果もよい

Accepted for Publication: February 14, 2020.

Published: April 20, 2020. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.3088

 

キーポイント

質問

睡眠呼吸障害のある患者の待機時間と臨床転帰は関連あるのか?

所見

156人の患者を対象とした無作為化非劣性臨床試験を今回二次的に解析した結果、治療開始までの待機時間が短いほど、CPAP療法の治療遵守率が高くなり、患者報告による転帰が改善された

意味

今回の調査結果により、睡眠呼吸障害をちょうど良いタイミングで治療できるようなアクセスを改善するシステムを導入すると、臨床転帰が改善することが示唆された

概要

重要性

睡眠呼吸障害(SDB)はよくある病気であり、健康に重大な影響を及ぼす。
SDBの治療を受けるまでの待機時間が長いことがよく報告されている。ただし、治療待機時間と臨床的転帰が関連あるかどうかは不明である。

目的

重症SDB患者の治療待機時間と臨床転帰との関連を評価する。

設計、設定、参加者

この研究は、2014年10月から2017年5月に、代替医療従事者(ACP)による管理と従来の睡眠医師主導の治療を比較した無作為臨床非劣性試験の二次解析である。
研究はFoothills医療センターの睡眠センター、カルガリー大学の三次医療集学的睡眠クリニックで行われた。
重症SDB(在宅睡眠時無呼吸検査での呼吸イベントインデックスが30イベント/時以上、または平均夜間酸素飽和度が85%以下、睡眠時低換気症候群の疑い)の患者を登録した。
もし患者がSDB以外の随伴性睡眠障害の疑いがある場合、またはSDBに対して気道陽圧療法(CPAP)で治療されていた既往がある場合は除外された。
2017年10月から2020年1月までデータを解析した。

主な結果と測定

CPAP療法の治療遵守率を主な評価項目として、治療開始から3か月後に転帰を評価した。
副次的項目として、エプワース日中眠気指数のスコア、健康関連の生活の質、訪問固有の満足度指標-9で測定した患者満足度が評価された。
重回帰モデルを使用して、待機時間と各転帰との関連を評価した。
CPAP療法を遵守した患者(1日4時間以上、日数の70%以上)の待機時間と非遵守患者の待機時間をt検定で比較した。

結果

156人の患者(男性112人[71.8%]、平均56歳[SD 12])が解析された。
紹介から初回診察までの平均時間は88日(95%CI, 79〜96日)であり、治療までの平均時間は123日(95%CI、112〜133日)であった。
治療開始までの待機時間が短いと、CPAP療法の遵守率が改善し(オッズ比、0.99; 95%CI, 0.98〜0.99; P = .04)、エプワース日中眠気指数のスコアが改善(平均係数、-9.37; 95%CI, -18.51〜-0.24; P = .04)、3か月時点において訪問固有の満足度指標-9スコアがより高値であった(平均係数、-0.024; 95%CI, -0.047〜-0.0015; P = .04)。
非遵守患者と比較して、治療を遵守していた患者では、最初の評価までの待機時間が平均15日(95%CI, 12〜19日)少なく(P = .07)、治療開始までの待機時間は30日(95%CI, 23〜35日)少なかった(P = .008)。

結論と関連性

重症SDBに対して早期に治療開始すると、CPAP療法の遵守率が改善し、日中眠気と患者満足度が大幅に改善していた。

今回の調査結果は、タイムリーな医療アクセスを改善するようなシステム介入が、患者行動を修正し、臨床転帰を改善する可能性があることを示唆している。

 

試験登録 ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02191085

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

睡眠時無呼吸症候群について言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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