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軽症喘息において、血中好酸球数と呼気中一酸化窒素濃度は治療効果を予測できるか:Novel START試験のサブグループ解析

[2020.04.26]

 本日紹介する論文は本ブログでも取り上げたNovel START試験(軽症喘息に対するブデソニド-ホルモテロール(シムビコート®)必要時吸入療法の比較試験)のサブグループ解析です。試験開始前から計画されていたサブグループ解析であり、いわゆる事後解析ではありません。

 

Novel START試験とは

 Novel START試験はどのような試験であったか簡単に説明します。まず、試験対象は、前治療が短時間作用性気管支拡張剤(SABA)吸入を必要な時のみ使用しているような軽症喘息患者でした。登録患者は3つの治療群;必要時のみSABAを吸入する群、ブデソニド(パルミコート®)を毎日吸入する群、必要時のみブデソニド+ホルモテロール(シムビコート®)を吸入する群に無作為に割り付けられました。喘息増悪(発作)の年間発生率を主要評価項目としたところ、必要時のみSABA吸入する群では増悪発生率が他の2群より有意に高く、ブデソニド毎日吸入群と必要時シムビコート®吸入群の増悪発生率はほぼ同様でした。

 

喘息増悪発生の予測:血中好酸球数、FeNO

 今回の解析では、治療前の血中好酸球数と呼気中NO濃度が喘息増悪発生を予測できるのか、治療によって増悪発生に違いがでるのかを調べています。

 必要時にSABA吸入のみで治療していると、血中好酸球数が増加するにつれ、喘息増悪を起こしやすくなりました。そして、ブデソニド毎日吸入または必要時シムビコート®吸入で治療すると、血中好酸球数が多い患者でも、その増悪発生を抑えられました。しかし、血中好酸球が150/µL未満と少ない患者ではブデソニドを毎日吸入しても喘息増悪の発生は比較的高い傾向にありました。 

 一方、シムビコート®必要時吸入群では血中好酸球数に関係なく、喘息増悪の発生を抑えられていました。考察で述べられているように、必要時シムビコート®吸入の成分であるホルモテロールが、血中好酸球数が150/µL未満の患者の喘息増悪を防いだ一因となっているかもしれません。

 

FeNOより血中好酸球数

 事前に予定していたとはいえ、所詮サブグループ解析であり、今回の研究で結論をだせるわけではありません。しかし、FeNOよりは血中好酸球数が治療効果を予測するバイオマーカーとして役に立ちそうであり、血中好酸球数が多ければ吸入ステロイドを何らかの形で使用するべきとは言えそうです。

軽症喘息において、血中好酸球数と呼気中一酸化窒素濃度は治療効果を予測できるか:Novel START試験のサブグループ解析

 

 

 

 

Published:March 11, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30053-9

概要

背景

血中好酸球数と呼気中一酸化窒素(FeNO)が軽症喘息の重要な転帰と関連しているかどうかは不明である。 すでに公表されているオープンラベル臨床試験の事前設定サブグループ解析を、血中好酸球数とFeNOが臨床転帰と治療効果に関連があるか評価することを目的として行った。

方法

以前報告された52週間の非盲検ランダム化比較対照試験では、β刺激薬の発作時吸入のみを投与されている軽症喘息患者が、ニュージーランドまたはイギリス、イタリア、オーストラリアにある16の臨床試験ユニットの1つに登録された。登録適格な参加者は、必要時サルブタモール(加圧式定量吸入器で100μgを2回吸入)群、ブデソニド維持療法(吸入器で1日2回200μg吸入)+必要時サルブタモール(100μgを2回吸入)群、または必要時ブデソニドーホルモテロール群(吸入器で200μgブデソニドおよび6μgホルモテロールを1回吸入)のいずれかに無作為に割り当てられた(1:1:1、国ごとに層別化)。主要評価項目は患者一人あたりの年間喘息増悪率であった。今回の事前設定サブグループ解析では、血中好酸球数、FeNO、または両方の複合スコアのレベルに応じて各治療群の年間増悪率が有意に異なるかを評価した。バイオマーカー測定値が入手可能な患者に対して解析が行われた。研究はオーストラリアニュージーランド臨床試験登録簿、番号ACTRN12615000999538に登録された。

調査結果

2016年3月17日から2017年8月29日までに675人の参加者が登録され、そのうち656人の血中好酸球値、668人のFeNO値が入手可能であった。必要時サルブタモールを投与された患者のうち、重症の増悪を示した患者の割合は、血中好酸球数の増加に伴って次第に増加した(0.5×109 / L未満の49例中2例[4%]、0.15~0.3×109 / Lの93例中6名[6%] 、0.3×109 / L以上の77例中15例 [19%]; p = 0.014)。増悪または重症増悪のいずれにおいても、必要時サルデタモールと比較して、血中好酸球数またはFeNO値と、必要時ブデソニドーホルモテロールの治療効果との間に有意な関連性はなかった。ただし、、必要時サルブタモールと比較して、血中好酸球数のサブグループとブデソニド維持+必要時サルブタモールの治療効果との間に、増悪(p = 0.0006)と重症増悪(p = 0.0007)の両方において有意な関連性を認めた。血中好酸球数が0.3×109 / L以上の患者では、増悪(比率 0.13 [95%CI 0.05–0.33])と重症増悪(リスクオッズ比 0.11 [0.03–0.45])において、ブデソニド維持と必要時サルブタモールの併用が必要時サルブタモールより治療効果を認めた。この違いは、血中好酸球数が0.15×109 / L未満の場合には見られなかった(増悪は1.15 [0.51–1.28]、重症増悪は5.72 [0.97–33.60] )。治療効果と、FeNOまたは複合スコアの間に一貫した関連性はなかった。

解釈

軽症喘息の患者では、増悪に対する必要時ブデソニド-ホルモテロールの効果はバイオマーカーのプロファイルとは無関係であった。しかし、血中好酸球数が少ない患者よりも、血中好酸球数が多い患者においてブデソニド維持療法の恩恵が大きくなる。

資金提供

アストラゼネカ、ニュージーランドの健康研究評議会

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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