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軽症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)における持続陽圧呼吸療法(CPAP)と標準治療法の比較(MERGE試験):多施設無作為化比較試験

[2019.12.15]

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に呼吸がとまり、日中の眠気や高血圧など様々は症状が出現します。

睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数を無呼吸低呼吸指数(AHI)と呼び、AHIの値によりSASの診断と重症度を決定します。

AHIが5以上でSASと診断し、5~15を軽症15~30を中等症30以上を重症としています。

CPAP(持続陽圧呼吸療法: Continuous positive airway pressure)は、AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASに対する標準的治療であり、健康保険診療が適応されます。

CPAPは、睡眠中に鼻マスクから空気を送ることで、無呼吸の原因となっている狭い気道(空気の通り道)を広げる治療法です。

今回紹介する論文では、AHIが5~15の軽症のSAS患者さんを対象に、3ヶ月のCPAP療法に効果があるかを検証しています。

その結果、軽症のSAS患者さんのQOL(アンケート調査による)がCPAPにより有意に改善していました。

日本の健康保険診療はAHIが20以上と定められているので、AHIが5~15の軽症SASにもCPAPが本当に有効だとすれば、今後の保険診療が変わっていくかもしれません。

しかし、今回の研究はイギリスで行われており、日本の臨床現場とは異なることに注意が必要です。

CPAP治療群と比較対照となった治療群が睡眠衛生カウンセリングとなっており、日本で一般的に行われている歯科装具(マウスピース)は使用されていません。

また、SASの診断にはポリソムノグラフィー(PSG)ではなく、簡易SAS検査(respiratory polygraphy)が使用されました。

簡易SAS検査でのAHIはPSGより低くでる傾向があり、もしPSGを使用していれば中等症以上であったかもしれないSAS患者さんが登録された可能性もあります。

軽症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)における持続陽圧呼吸療法(CPAP)と標準治療法の比較(MERGE試験):多施設無作為化比較試験

Published:December 02, 2019 

Lancet Respir Med.

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30402-3

概要

背景

軽症の閉塞性睡眠時無呼吸を治療するかどうかに対する科学的根拠は限られており、疾患重症度の定義も様々である。

MERGE試験では、軽症の閉塞性睡眠時無呼吸患者における持続陽圧呼吸療法の臨床的有効性を検証した。

方法

多施設共同並行無作為化対照のMERGE試験では、18歳以上80歳以下の軽症閉塞性睡眠時無呼吸患者(AASM 2007またはAASM 2012いずれかのスコア診断基準を用いて、無呼吸-低呼吸指数[AHI]が 1時間あたり5以上15以下)を英国にある11の睡眠センターから登録した。

参加者は、持続陽圧呼吸療法3か月+標準治療(睡眠カウンセリング)、または標準治療のみのいずれかに1:1となるようにコンピューターでランダムに割り当てられた。

参加者も研究者も盲検化されなかった。

主要評価項目は、米国睡眠医学学会2012のスコアリング基準を使用して診断された軽症の閉塞性睡眠時無呼吸患者のITT(Intension to treat)集団におけるShort Form-36バイタリティスケールアンケートのスコアの変化とした。

この研究はClinicalTrials.gov, NCT02699463に登録されている。

結果

2016年11月28日から2019年2月12日までに、301人の患者が登録され、無作為化された。

233人はAASM 2012基準で軽症の閉塞性睡眠時無呼吸があり、ITT解析(治療企図解析)に含まれた。

115人が持続陽圧呼吸療法を受け、118人は標準治療を受けた。

これらの参加者のうち209人(90%)が試験を完了した。

標準治療のみと比較して3か月の持続陽圧呼吸療法の後、活力スコアは平均10.0ポイント(95%CI 7.2〜12.8; p <0・0001)有意に増加し、治療効果と考えられた(9.2ポイント[6.8〜11.6] 対 -0.8ポイント[-3.2〜1.5])。

より控えめな推定であるANCOVA最終観察キャリーフォワード解析を使用すると、標準治療のみと比較して3か月の持続陽圧呼吸療法の後、活力スコアはやはり有意に増加し、平均7.5ポイント(95%CI 5.3〜9.6; p<0.0001)の治療効果が得られた(7.5ポイント[6.0〜9.0] 対 0.0ポイント[–1.5〜1.5])。

3件の重篤な有害事象が発生し(1件は持続陽圧呼吸療法群)、すべて治療介入とは無関係であった。

解釈

持続陽圧呼吸療法による3か月の治療により、軽症の閉塞性睡眠時無呼吸患者の生活の質が向上した。

今回の結果は、医療専門家および医療提供者に対し軽症閉塞性睡眠時無呼吸患者の治療を検討する必要性を浮き彫りにしている。

資金提供

レスメド株式会社

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

睡眠時無呼吸症候群について言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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