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日本のヘルスリテラシー(健康に関する識字能力)は低いのではないか(BMC Public Health誌; 日本からの報告)

[2022.03.20]

ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を理解して、活用する能力のことを言います。ただし、理解するという言葉には、その情報が正しいのか間違いなのか判断することも含まれます。

昨今、インターネットやSNSには医療や健康の情報があふれています。その情報が一見して怪しいものであれば(例えば明らかな営業広告など)、だれでもわかると思います。しかし、広告ではなくても、間違った医療情報が多数出回っているのが現状です。そして、その間違った情報を発信する人も自分が間違っていることを認識していないこともあるので厄介です。

 

現代医療の進歩のスピードは速く、医師であっても、専門外の情報について正しいのかどうか判断することが難しくなっています。医師以外の人にとっては、当然ながら医療情報はすべて専門外となりますので、情報を正しく理解することは容易ではありません。例えば、専門家の意見を切り取ったもの、経験者が語る使用経験などが挙げられていると、正しいと信じてしまうでしょう。

コロナ禍において、日本人のヘルスリテラシーはどうなんだと考えさせられることが多くありました。例えば、当初、日本でCOVID-19が少ないのはBCGワクチンを接種しているからだという仮説がでました。それを聞いた高齢者がBCGワクチンを接種したため、本来小児用のBCGワクチンが不足するという事態となりました。仮説を出すこと自体は奨励されるべきことですが、仮説の検証結果が出る前に行動に移してはいけません。

 

今回、紹介する論文は2015年に発表されたもので少々古いものになりますが、日本とヨーロッパのヘルスリテラシーを比較したもので興味深かったので取り上げます。ヨーロッパで使われた調査票を翻訳して日本人にも使用し、点数を日欧で比較しています。同時進行で行う直接比較試験ではないこと、アンケートに回答する際の国民性の違いには注意が必要です。

ヘルスリテラシーを判定するすべての項目で日本人はヨーロッパより難しいと回答しており、日本のヘルスリテラシーが低いことが示唆されました。病気になったときにどうすれば専門家の助けを借りられるか分からないと回答する日本人が多かったという結果は、我々医師にとっても今後解決すべき課題だと思います。

 

Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy. 

日本における包括的なヘルスリテラシーは欧州に比べて低い。

日本語によるヘルスリテラシー評価の検証. 

 

Nakayama, K., Osaka, W., Togari, T. et al. 

BMC Public Health 15, 505 (2015).

https://doi.org/10.1186/s12889-015-1835-x

 

概要

背景

健康情報へのアクセス、理解、評価、応用の能力であるヘルスリテラシーは、個人の健康と幸福のために、中心的なものである。ヨーロッパでは、ヘルスリテラシーのほとんどの側面について、包括的で概念に基づいた測定法が開発されており、国内および国際間の比較が可能である。このツールを日本で使用するために、検証を行い、日本語訳を使用して日本と欧州のヘルスリテラシーのレベルを比較することを本研究の目的とした。

方法

インターネットリサーチ会社を通じて募集した日本人成人1054名が、47項目の欧州ヘルスリテラシー調査質問票(HLS-EU-Q47)の日本語版に回答した。調査はオンラインアンケートで行われ、参加者の特徴は日本の最新の国勢調査のものとほぼ一致した。調査結果は、欧州8カ国で行われた健康リテラシーに関する調査結果との比較を行った。

結果

翻訳された質問票の内的整合性は、複数の評価指標にわたって有効であった。構成概念妥当性は確認的因子分析を用いて確認された。質問票は、既存の健康リテラシーや精神的健康状態を測定する尺度と良好な相関を示した。日本人のヘルスリテラシーは欧州よりおおむね低く、日本人の回答者は欧州の回答者よりすべてのテスト項目において難しいと評価された。最も大きな差(51.5 %)は、病気になったときにどこで専門家の助けを借りればよいかを知ることが困難とする回答者の数であった。

結論

本研究では、包括的なヘルスリテラシー質問票を日本語に翻訳し、その信頼性と妥当性を確認した。比較の結果、日本人のヘルスリテラシーはヨーロッパ人に比べて低いことが示唆された。この相違は、日本のプライマリーヘルスケアシステムの非効率性が一因であると考えられる。また、日本には包括的なオンラインプラットフォームがないため、信頼性が高く理解しやすい健康情報にアクセスすることが困難である。日本人の回答者は、健康情報を判断し適用することがより困難であると感じており、日本における健康上の意思決定の難しさを示唆している。日本におけるヘルスリテラシーの低さには多くの問題が関係している可能性がある。個人の能力の向上や支援環境を構築によってこの問題を解決するように、さらなる研究が必要である。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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