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低線量CTによる肺がん検診の有効性

[2019.03.21]

 

低線量CTとは、通常のCTより放射線量を低減させて撮影したCTのことです。低線量CTは通常のCTよりは画像が荒くなるため詳しい検査には不向きですが、放射線量を抑えることで検診受検者の被ばく量を少なくすることが可能です。

 

現在の肺がん検診では胸部X線写真と喫煙者に喀痰細胞診を行っていますが、肺がん発見には不十分ではないかと以前から考えられてきました。胸部X線写真は1枚しか撮らないため死角が多く、百枚以上撮影するCTの性能にかなうはずがありません。

 

しかし、低線量CTが肺がん検診として有用だという科学的証拠はまだ不十分です。特に、日本では全くありませんでした。今回の論文は茨城県日立市という限られた地域の後ろ向きコホート研究であり、科学的証拠としてはレベルの低いものですが、日本で行われた大規模なデータであり有意義なものと考えられます。

 

以下は論文要旨の和訳です。

 

低線量CTによる肺がん検診の有効性

 

目的:

一般集団に対し低線量CTを用いた肺がん検診の有効性を評価するために、日立市の住民を対象として後ろ向きコホート研究を行った。

 

方法:

1998年から2006年の間に低線量CT検診を少なくとも1回受けた50〜74歳の市民をCT群と定義した。そして同じ期間中に少なくとも1回X線検診を受けたが、追跡期間を通して低線量CTを受けなかった市民をXP群と定義した。最初の肺がん検診から2012年末までの両群について、肺がん発生率、肺がん死亡率および全死因による死亡率を調査した。

 

結果:

CT群(17,935人の住民; 9,790人の男性および8,145人の女性)では、273例の肺がん発生(1.5%)、72例の肺がんによる死亡(0.4%)、および885例の全死因による死亡(4.9%が)観察された。一方、XP群(15,548人の住民; 6,526人の男性および9,022人の女性)では、肺がん164例(1.1%)、肺がん死亡80例(0.5%)、および全死因死亡1,188例(7.6%)が観察された。性別、年齢および喫煙歴について調整されたXP群に対するCT群のハザード比は、肺がん発生率について1.23、肺がん死亡率について0.49、および全死因死亡率について0.57であった。非喫煙者および軽喫煙者の肺がん死亡率は有意に低かった(それぞれ0.41および0.21)。

 

結論:

非喫煙者および軽喫煙者を含む集団に対する低線量CT検診が有効であるかもしれない。

 
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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