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マスク着用で何人の命が救われるのか(NEJM Journal Watchより紹介)

[2020.11.15]
今回は、論文の紹介ではなく、ひとつの論文に対する論評を翻訳して、紹介します。

Nature Medicine誌に掲載された研究論文に対する、NEJM Journal Watch編集者のコメントです。

 

How Many Lives Could Be Saved by Mask Wearing?(マスク着用で何人の命が救われるのか)

Anthony L. Komaroff, MD がIHME COVID-19 Forecasting Team. Nat Med 2020 Oct 23を論評

NOV 5, 2020 | GENERAL MEDICINE、INFECTIOUS DISEASES HOSPITAL MEDICINE

 

「ひとつのモデルが、ユニバーサルマスク着用(すべての人がマスクを着用すること)により、今後4か月で10万人以上の米国人の命が救われる可能性があることを示唆している。

 

 マスク着用は政治的に二極化してしまった:一部の人々は自分達の自由に対するばかげた制約と見なしている。マスクを使用することにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含む呼吸器ウイルスの感染が約40%減少するという研究がある。米国では、2020年11月において、公共の場でマスクを着用している人は約50%に過ぎない。韓国やニュージーランドなど、マスクの使用率がはるかに高い国では、COVID-19症例が継続的に減少傾向を示し、 彼らの経済は回復傾向である。

 

 シアトルのにある保健指標評価研究所(IHME)は、パンデミックの発生以来、すべての州からデータを収集してきた。 彼らのモデルによると、ユニバーサルマスク使用(公共の場で95%の人がマスクを使用している状態として定義)により、2020年9月22日から2021年2月28日までの間に13万人の命を救うことができると推定されている。」

 

Anthony L. Komaroff, MD のコメント

「疾患モデリングは、「現実ではなくただのモデル」だとして軽蔑されることがある。 それは確かに真実であるが、将来の現実はモデルでしか推定することができない。 このパンデミックの将来に関するIHMEの予測は、米国政府のCOVID-19タスクフォースによって広く使用されており、かなり正確であることが証明されている。 したがって、ユニバーサルマスク着用により、今後4か月で米国13万人の命を救うことができるという、IHMEの見積もりは真剣に受け止められるべきであり、経済の開放を維持するのにも役立つ可能性がある。 以上の点は、患者と話し合う価値がある。」

 

引用文献

IHME COVID-19 Forecasting Team. Modeling COVID-19 scenarios for the United States. Nat Med 2020 Oct 23; [e-pub]. (https://doi.org/10.1038/s41591-020-1132-9)

 

 

以下は私見です。

人と接するときは必ずマスクをするという考え方を示す用語が英語にはあり、Universal Mask Wearing (全員マスク着用)といいます。現在の日本ではほぼ当たり前になったこの習慣は、アメリカでは当たり前ではありません。それはトランプ氏とバイデン氏の選挙活動を比較するとよくわかります。アメリカは広く、州によって法律が異なるため、新型コロナウイルス対策も州によってかなり異なります。州によってはマスク着用に厳しいところもあれば、ゆるい州もあります。州の対策の違い、感染死亡数の違いを比較することでマスク着用の効果を間接的に評価することができます。

全員マスク着用すれば、今後4ヶ月で救われるアメリカ人が約13万人いると推測されています。推計ではありますが、Fakeとは言えないと思います。

マスクは自分が感染しないためだけではなく、他人に感染させないという目的の方が大きいのです。

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

新型コロナウイルスについても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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