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がん医療に新型コロナが与えた深刻な影響(LANCET誌の論説)

[2021.04.04]

 

今後、日本で爆発的な流行が発生すると、がん医療にも影響を与えることになるでしょう。そのときどうなるかは英国が現在経験していることが参考になると思います。

 

本日紹介する論文は Lancet Oncology誌のEDITORIAL(論説 社説)です。EDITORIALは雑誌の編集者が書いたトップ記事ですので、雑誌として問題提起したい内容が多いのが特徴です。

 

以下に、論文のほぼ全文を翻訳し、私なりに解説を加えてみました。

 

COVID-19とがん:1年後の状況

COVID-19 and cancer: 1 year on

The Lancet Oncology
 VOLUME 22, ISSUE 4, P411, APRIL 01, 2021
DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(21)00148-0

 

「英国が2020年3月23日にCOVID-19対応のため最初にロックダウンを実施してから1年が経過し、前例のない状況となっている。パンデミックの終息まではまだ遠く、英国や世界のがん医療にどのような影響を及ぼしているのか、今後はどうなるのであろうか。」

⇨ロックダウンをTVでみたときには、海外ではこんなことをするのかと驚きました。あれからもう1年です。ロックダウンに効果はあったのでしょうか。

 

「COVID-19はがん患者に大きな影響をすでに与えている。医療システムが逼迫し、患者が医療機関を受診したがらないために、膨大な数の診断漏れや治療の遅れが生じている。」

⇨日本でも医療のひっ迫が問題となっています。英国など欧米の感染者数、死亡者数は日本とは桁違いに多いので、参考になります。

 

「英国の国民健康保険サービス(NHS)は急を要する医療は行っていると当局が再三説明しているにもかかわらず、英国のパンデミックの第一波(2020年3月~8月)の間に、がんの可能性がある症状を持つ人の45%が医師に連絡しなかったと推定されている。その理由としてCOVID-19に接触する恐れやNHSに余計な負担をかけたくないことが挙げられている。」

⇨医療システムの問題だけではなく、患者の心理的側面も影響が大きいようです。何らかの症状を自覚していても、病院に行くと自分が感染してしまうから、病院が忙しそうだから、という理由で病院に行かない人が多いことが考えられます。

 

「その結果、がんが疑われる患者の紹介件数は、2019年の同時期と比べて35万件減少した。がん検診プログラムの中断や検査・診断の遅れと相まって、進行期がんの受診・診断の急増が予想され、以前は治癒可能だった腫瘍も治療が困難になり、残念ながらさらなる死亡超過が避けられない状況になっている。」

⇨COVID-19とは無関係に発生するがん患者数が、2019年から2020年にかけて急に減ることはありません。しかし、2020年にがんを疑う患者数が35万人も減っているということは、がんが発見されずに放置されている人が多数いることが想定されます。

 

「この問題は、COVID-19への対応が評価されている国でも、国際的に生じている。ある研究によると、オーストラリアのビクトリア州では、パンデミック後の最初の6カ月間に、約2500件のがんの診断が見落とされたと推定されている。」

⇨ビクトリア州の人口は約600万人で、千葉県の人口と同じくらいです(ちなみに、面積は千葉県の約4倍)。もし千葉で2,500人のがんが見落とされたとなれば、日本では大ニュースになることでしょう。

 

「パンデミックの影響により、がん治療にも大きな遅れが生じている。英国ではがん治療を昨年開始した人が通常よりも約4万人少なく、米国の病院ではCOVID-19の感染者が殺到し、がん患者がタイムリーな治療を受けられない状況になっている。WHOの報告によると、ヨーロッパの3カ国のうち1カ国は、パンデミックの初期段階で、がん治療サービスを部分的または全面的に中断していた。英国のNHSでは現在、460万人以上が手術を待っており、30万人が12カ月以上待機しており、これはパンデミック前の待ち時間の100倍に相当する。」

⇨手術をするのに1年以上待たされてしまうと、早期がんが進行期がんになってしまっても不思議ではありません。英国ではCOVID−19の治療が優先され、がん治療が後回しになっていると言えます。コロナは自然災害と同じだから仕方ないと割り切ることが、がん患者さんにできるでしょうか。

 

「この待機者の多くはがん患者であり、イングランド王立外科医師会は特に心配しており、待機者の解消には数年を要すると述べている。さらに、英国のがん外科医は、パンデミック期間中に治療を受けることができず、その後がんが進行して治療が困難になった患者からの賠償請求が相次ぐことを恐れている。」

⇨日本で賠償請求が増えることはないとは楽観視しますが、待機患者の解消に数年もかかるようになればとわからないですね。

 

「さらに、ロックダウンに関連した生活習慣(不健康な食生活や運動量の減少など)により、今後数年間で肥満関連のがんの発症がさらに増加する可能性がある。」

⇨クリニック外来をやっていると、コロナ禍で運動不足で体重が増えたという患者さんは実際多いように思います。

 

「このような悲観的な話となってしまったが、この危機からいくつかの希望を見出すことができる。驚くべき科学的進歩によりCOVID-19への取り組みは大きく前進し、数種類のワクチンが配布され、その他のワクチンも開発中である。英国医薬品・ヘルスケア製品規制庁(MHRA)がバイオンテック社/ファイザー社とオックスフォード社/アストラゼネカ社のCOVID-19ワクチンを迅速承認し、迅速な展開を可能にしたことは、がん治療を含む他の新薬の承認を加速させるのも役立つであろう。」

⇨今回のワクチン開発から承認、各国へ提供の流れは歴史上最も速いと思われます。この経験は今後のがん治療開発にもプラスに働くでしょう。

 

「ーーー中略ーーー最後に、COVID-19の患者さんを治療するために既存の薬を再利用することは、間接的にがん患者さんの利益につながる可能性がある。これらの薬剤を自宅で投与して重症化や入院を防ぐことができれば、医療システムへの負担が軽減され、がん治療を含む他の医療サービスを軌道に乗せることができる。」

⇨インフルエンザと異なり、COVID-19の特効薬が2021/4/4の時点でまだありません。新規薬でも既存薬でもよいので、早急な開発が求められています。

 

「パンデミックによるがん治療への壊滅的な影響を軽減するため、英国やその他の国々は過去12ヶ月間の科学的進歩を活用して、大きな損失や後退を取り戻す必要がある。ワクチンの配布に関して、一部の国の政府が見せた残念な態度ではなく、国の内外での効果的な協力と連携は不可欠であり、パンデミック対応が縮小された後も停止してはならない。そのとき初めて、この前例のない時期に得られた教訓は、がん対策におけるパンデミックの長期的な間接的影響を克服するために活用することができるようになる。」

⇨ワクチン外交とよばれる、ワクチンをもつ国が優位にたつような世界には嫌気がさします。先進国も途上国も人の命に格差はないのですから。

 
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

新型コロナウイルスについても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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