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院長ブログ

ぜん息も時差ボケをする?(周囲環境とは無関係に、体内時計における夜間に喘息は悪化しやすい;PNAS誌の報告)(2021.10.17更新)

ぜん息患者さんの特徴として、変動する症状があります。1年のうちで症状が悪くなりやすい季節、1日のうちでも症状が悪くなりやすい時間帯があります。特に、就寝前や早朝に症状がでて、睡眠が妨げられることがあります。布団など就寝時の環境、寝る体位(臥位)、睡眠そのものが喘息を増悪させる要因になると考えられます。睡眠中は副交感神経優位となるため、気管支は収縮しやすい状態となるからです。

しかし、生活環境が変わると、ぜん息症状はどうなるでしょうか。

就寝と起床時刻が急に変わった場合、例えば飛行機でアメリカに行ったとき、ぜん息が悪くなる時間帯は日本時間でしょうか、それとも米国時間でしょうか。

人間の体には概日システム(体内時計)があります。約24時間の体内時計は急には変われないので、アメリカに行くと時差ボケをおこします。今回紹介する論文では、ぜん息も時差ボケをおこすことを示した研究です。

この研究では、ぜん息患者さんに38時間寝ないでもらったり、1日28時間で生活してもらったりしながら、肺機能を定期的に検査するという、被験者にとってかなり辛い試験を行っています。その結果、ずっと寝なくても、生活リズムを変えても、ぜん息症状はもともとの体内時計に従って夜間、特に午前4時に悪くなりやすかったのです。

午前4時といえば、ほとんどの人がぐっすり眠っている時間です。そのため、ぜん息の症状(セキなど)が午前4時にでていても気づかない人が多いと思われます。気づかないうちにぜん息症状が悪化している可能性があるので注意が必要です。

 

睡眠やその他の日常の行動、周囲環境とは無関係に、体内時計における夜間に喘息は悪化しやすい

The endogenous circadian system worsens asthma at night independent of sleep and other daily behavioral or environmental cycles

PNAS September 14, 2021 118 (37) e2018486118; https://doi.org/10.1073/pnas.2018486118

 

意義

何世紀も前から、喘息の重症度には1日のリズムがあり、夜間に最も症状が悪化することが分かっていた。しかし、これが、睡眠や身体活動、身体の姿勢変化などの日常行動によるものなのか、体内時計(つまり、概日システム)として元々持っているリズムによるものなのか、その程度は明らかではない。概日システムの関与を判断するために、2つの相補的なゴールドスタンダードである概日プロトコール(一定のルーチンと強制非同期プロトコール)をぜん息患者に受けてもらった。この高度標準化プロトコールにより、睡眠やその他の日常的な行動・環境サイクルとは無関係に、内因性概日リズムが肺機能や喘息重症度の修飾に重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、これらの概日リズムの影響と、日々の行動や環境の影響が相まって、夜間に喘息が最も悪化することがわかった。


概要

喘息はしばしば夜間に悪化する。内因性の概日システムが、睡眠やその他の行動・環境の昼夜サイクルとは無関係に、喘息の夜間悪化に寄与しているかどうかを明らかにするため、我々は、(ステロイドを使用していない)喘息患者を対象に、3週間にわたって、(概日、環境、行動の影響が複合的に作用させた)通院環境において研究した。また、概日サイクルを環境や行動の影響から切り離すように薄暗い中で行われる2つの補完的な実験プロトコールで研究した。つまり、1)継続的な覚醒状態、一定の姿勢、2時間ごとの同じカロリーの軽食を与える38時間の「一定のルーチン」、2)28時間の睡眠または覚醒サイクルを7回繰り返し、すべての行動を概日サイクル全体で均等に行う196時間の「強制非同期」である。

肺機能の指標は通院環境では1日中変化しており、両実験プロトコルでは有意な概日リズムが見られ、生物学的な夜間すなわち午前4時頃に肺機能が最も低くなることから、通常は自覚できないか、睡眠によって隠されている夜間の喘息増悪が明らかになった。また、症状に応じたレスキュー用気管支拡張剤(β2アドレナリン作動薬吸入器)の使用にも概日リズムがあることを発見し、概日リズムのある夜間は昼間に比べて吸入器の使用率が4倍になることがわかった。概日システムに加えて、睡眠やその他の行動・環境も喘息への付加的な影響があった。平均肺機能が最も低い人は、日中の概日変化と行動サイクルによる喘息への影響が最も大きい傾向があった。睡眠を夜間にとるようにモデル化した場合、概日リズム、行動・環境サイクル効果の合計は、外来データとほぼ完全に一致した。このように、概日システムは喘息でよくみられる夜間悪化に寄与しており、最適な治療のためには生物学的な体内時間を考慮する必要があることを示唆している。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

ぜん息について言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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