武漢での肺炎3症例より新型コロナウイルスが分離された(NEJM誌の報告)
本論文は無料で誰でも閲覧できるようになっており、論文を抜粋して紹介します。
The New England Journal of Medicine
January 24, 2020
DOI: 10.1056/NEJMoa2001017
概要
2019年12月に、原因不明肺炎の患者集団と中国武漢の海鮮卸売市場との関連性が指摘された。不偏シークエンス(unbiased sequencing)にて、未知のベータコロナウイルスが肺炎の患者サンプルから発見された。 ヒト気道上皮細胞を用いて新規コロナウイルスを分離し、2019-nCoVと命名した。2019-nCoVは、Orthocoronavirinaeサブファミリー、サルベコウイルス亜属の中で、別の系統群を形成した。 MERS-CoVとSARS-CoVといずれとも異なり、2019-nCoVはヒトに感染するコロナウイルスファミリーの7番目のメンバーである。 強化された監視とさらなる調査が現在進行中である。 (中国の国家重点研究開発プログラムおよび中国における感染症の制御と予防のための国家主要プロジェクトより資金提供あり。)
症例
「3人の成人患者が重症肺炎のため、2019年12月27日に中国の武漢にある病院に入院した。患者1は49歳女性、患者2は61歳男性、患者3は32歳男性であった。患者1と2の臨床情報が入手可能であった。
患者1は、慢性疾患の合併症はなく、2019年12月23日に発熱(体温37〜38°C)と胸部不快感を伴う咳が出現した。発症から4日後、咳と胸部不快感が悪化したが、解熱した。肺炎はコンピューター断層撮影(CT)スキャンに基づいて診断された。彼女の職業は海鮮卸売市場の小売業者であった。
患者2は、2019年12月20日に発熱と咳が最初に出現した。発症から7日後に呼吸困難が出現し、その2日後に悪化し(下図の胸部X線写真を参照)、人工呼吸管理が開始された。彼は海鮮卸売市場に頻繁に訪れていた。患者1と3は回復し、2020年1月16日に退院した。患者2は2020年1月9日に死亡した。生検標本は得られなかった。」
図1. 胸部レントゲン写真。
「患者2の発症8日目(A)と11日目(B)の胸部X線写真を示す。 この二つの胸部写真撮影の間に、気管内挿管され、人工呼吸管理が開始された。 両側肺にふわふわした透過性低下が両方の写真に認められるが、11日目の写真では陰影の濃度上昇、拡大、集簇がみられる。 この変化は下肺野で最も顕著である。 胸水貯留が疑われる所見も2番目の写真でみられる。」
図2. 2019-nCoV接種後にヒト気道上皮細胞を培養すると細胞が変性する。
図3. 透過型電子顕微鏡による2019-nCoVの可視化。
パネルA:ネガティブ染色された2019-nCoV粒子
パネルB:ヒト気道上皮細胞内(超薄切片)の2019-nCoV粒子
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)