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タグリッソ®はEGFR遺伝子変異陽性の未治療進行期非小細胞肺癌の全生存期間をイレッサ®やタルセバ®よりも延長させる

[2019.12.21]

 

EGFR変異をターゲットにした治療薬としてはこれまで第一世代のイレッサ®、タルセバ®、第二世代のジオトリフ®、そして第三世代のタグリッソ®が開発されてきました。患者さんを適切に選択して、第1、第2世代の薬を使用すると、治療効果は必ずと言っていいほど現れます。しかし、問題は数カ月から1年後には薬が効かなくなってしまうことです。治療が効かなくなる原因としてT790Mという遺伝子変異をガン細胞が獲得してしまうことが知られています。タグリッソ®はこのT790Mにも効く薬として開発されました。

 

ここで通常考える治療戦略としては、初回治療として第一世代を使用し、T790Mが出現して効かなくなったら、タグリッソ®に変更するという方法です。現在の臨床現場でもこのような逐次的治療が取られています。

 

しかし、今回紹介する論文では、最初から第三世代のタグリッソ®を使用した方が、第一世代→第三世代と順番に使用するよりも、全生存期間が延びるという結果を示しています。FLAURA試験は無増悪生存期間を主要評価項目として昨年のNEJMにすでに報告されています。今回、FLAURA試験の副次評価項目である全生存期間が、再びNEJM誌で報告されました。このようにNEJM誌が同じ試験を2回も掲載することは珍しく、今回の結果のインパクトが大きかったことが想像できます。

アジア人サブグループでは、タグリッソ®単独の優位性が消失しており、日本人ではどのように治療するのが良いのか今後議論になりそうです。

 

 2019 Nov 21.

DOI: 10.1056/NEJMoa1913662

概要

背景

オシメルチニブは、第三世代の上皮成長因子受容体の不可逆的チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)であり、EGFR-TKI感受性およびEGFR T790M耐性変異の両方を選択的に阻害する。第Ⅲ相試験が行われ、EGFR変異陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の初回治療としてオシメルチニブとその他のEGFR-TKIを比較した。この試験では、比較対照のEGFR-TKIよりもオシメルチニブの無増悪生存期間の方が長いことが示された(疾患の進行または死亡のハザード比, 0.46)。全生存の最終解析のデータはまだ報告されていなかった。

方法

この試験では、EGFR変異(エクソン19欠失変異またはL858R変異)が陽性の未治療進行NSCLC患者556人を1:1の比率でランダムに割り当てし、オシメルチニブ(80 mgを1日1回)または他の2つのEGFR-TKIのいずれかを投与した(1日1回250 mgのゲフィチニブまたは1日1回150 mgのエルロチニブを投与された患者は、比較対照群一つにまとめられた)。全生存期間は副次的評価項目であった。

結果

全生存期間の中央値は、オシメルチニブ群で38.6ヵ月(95%信頼区間[CI], 34.5〜41.8)、比較対照群で31.8ヵ月(95%CI, 26.6〜36.0)であった(死亡のハザード比, 0.80; 95.05% CI、0.64〜1.00、P = 0.046)。3年目の時点で、オシメルチニブ群の患者279人中79人(28%)、比較対照群の患者277人中26人(9%)が試験治療を引き続き投与されていた。試験治療の投与期間中央値は、それぞれ20.7か月と11.5か月であった。グレード3以上の有害事象は、オシメルチニブ群の42%、および比較対照群の47%で報告された。

結論

EGFR変異を有する未治療進行NSCLCでは、オシメルチニブを投与された患者は、比較対照のEGFR-TKIを投与された患者よりも全生存期間が長かった。オシメルチニブ群の方が治療期間が長いにもかかわらず、オシメルチニブの安全性プロファイルは比較対照のEGFR-TKIのもの同様であった。 (AstraZenecaより資金提供あり。FLAURA試験,  ClinicalTrials.gov番号, NCT02296125)

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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