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シムビコート®の必要時吸入は、パルミコート®の毎日吸入より軽症喘息の発作予防に有効かもしれない

[2019.09.08]

 

今回紹介する論文は先月のLANCET誌に掲載されたPRACTICAL試験です。必要時シムビコート?吸入を検証した試験は、SYGMA1、SYGMA2、novel STARTに引き続きこれで4つ目になります。

 

ここから専門的な記述となります

今までの3つの試験と大きく異なる点は、主要評価項目においてシムビコート?必要時吸入がブデソニド(パルミコート?)定期吸入より優れているとPRACTICAL試験が初めて示したことです。

 

SYGMA2とPRACTICALの二つは1:1の2群直接比較試験である点、喘息の重症増悪(発作)の年間発生率を主要評価項目に設定した点で共通していました。その実際の重症増悪発生率を見てみますと、SYGMA2ではシムビコート?群が0.11、パルミコート?群が0.12、発生率の比は0.97(95%CI 0.78-1.20, p=0.75)であったのに対し、PRACTICALではシムビコート?群が0.119、パルミコート?群が0.172、発生率の比は0.69(95%CI 0.48-1.00, p=0.049)でした。PRACTICAL試験では95%CI上限値が1.00となっており、シムビコート?がパルミコート?より優っていたことを辛うじて証明しました。また、パルミコート?群の発生率がSYGMA2(0.12)よりPRACTICAL(0.172)ではかなり高くなっていました。パルミコート?の服薬遵守率は75%とかなり高く、なぜパルミコート?群で重症増悪が多かったのかについては論文考察でも触れられていませんでした。(ただし、服薬遵守率を測定した患者は全体の約12%と低い。)

 

SYGMA2とPRACTICALでは試験参加適格条件がすこし異なります。試験前治療でSABA(短時間作用型発作治療薬)のみでもコントロール良好な患者もPRACTICALでは登録可能であり、より軽症な患者が登録されていたと考えられます。このような軽症患者を除外するとシムビコート?はパルミコート?に勝てず、SYGMA2と同様の結果になったのではないかとも考えられ、興味があるところです。

 

 

 

 

ブデソニド+ホルモテロール(シムビコート®)の必要時吸入は、ブデソニド(パルミコート®)の毎日吸入より軽症喘息の発作予防に有効かもしれない(PRACTICAL試験)

 2019 Aug 23.

DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)31948-8

要旨

背景

 軽症喘息の成人では、発作時の治療として単剤で使用される速効性長時間作用型βアゴニスト(LABA)と吸入ステロイド薬を併用すると、短時間作用型βアゴニスト(SABA)による発作治療と比較し、重症発作が軽減される。ブデソニド維持と必要時にテルブタリンを追加する治療法と比較して、ブデソニドとホルモテロール併用による発作治療の有効性を調査した。

方法

 ニュージーランドにある15施設(プライマリケアや病院ベースの臨床試験を行う部署、およびプライマリケア現場)において、52週間の非盲検、並行群、多施設、優越性、ランダム化比較試験を行った。試験参加者は、医師に喘息と診断されていると自己報告しており、過去12週間に低用量から中用量の吸入ステロイド薬の維持療法をしているかは関係なく、症状を緩和するためにSABAを使用している18〜75歳の成人とした。

 ブデソニド200μg+ホルモテロール6μgタービュヘイラ―(症状緩和に必要な時に1回吸入)、もしくはブデソニド200μgタービュヘイラ-に維持療法(1日2回1回1吸入)およびテルブタリン250μgタービュヘイラー(必要時に2回吸入)のどちらかの治療群に試験参加者は1:1で割り振られた。試験参加者と研究者はどちらの治療群に割り当てられたか知っていたが、統計解析者は主要な結果の分析のために割り振りを知らされなかった。

 ランダム化された時、第4、第16、第28、第40および第52週目の計6回の受診が予定された。ITT解析による主要評価項目は、患者一人あたりの1年間の重症増悪(発作)の数とした。重症増悪とは、喘息のために少なくとも3日間の全身性コルチコステロイドを使用したとき、または全身性コルチコステロイドを必要とする喘息のために入院したか救急部門へ来院したときと定義された。安全性解析には、少なくとも1回の試験治療を受けたすべての参加者が含まれた。

 本試験はオーストラリアニュージーランド臨床試験に登録され、登録番号はACTRN12616000377437である。

結果

 2016年5月4日から2017年12月22日までに、890人の参加者を治療に割り当て、885人の適格な参加者(必要時ブデソニド-ホルモテロール吸入群437人と、ブデソニド維持吸入+必要時テルブタリン吸入群448人)を解析した。

 患者一人あたりの年間重症増悪の発生は、必要時ブデソニド-ホルモテロール吸入群の方がブデソニド維持吸入+必要時テルブタリン吸入群よりも少なかった(患者一人あたりの年間重症増悪発生率絶対値 0.119 対 0.172; 相対的比率 0.69, 95%CI 0.48―1.00; p = 0.049)。

 鼻咽頭炎が両群で最もよくみられた有害事象であり、必要時ブデソニド-ホルモテロール吸入群440人中154人(35%)、ブデソニド維持吸入+必要時テルブタリン吸入群448人中144人(32%)に発生した。

解釈

 軽症から中等症の成人喘息では、症状緩和のため必要時のみに使用されるブデソニド-ホルモテロール吸入療法は、低用量ブデソニド維持吸入とテルブタリン必要時吸入の併用療法よりも、重症増悪の予防に効果的であった。この結果は、軽症喘息に対する吸入コルチコステロイド-ホルモテロールによる有症状時治療は低用量コルチコステロイド毎日吸入療法の代替レジメンとするGINAガイドライン2019を支持する。

資金提供

ニュージーランド健康研究評議会

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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