中等症から重症のコントロール不良喘息にデュピルマブ(デュピクセント®)は有効
気管支喘息に対する生物学的製剤(抗体医薬)として、オマリズマブ(ゾレア®、2009年承認)、メポリズマブ(ヌーカラ®、2016年承認)、ベンラリズマブ(ファセンラ®、2018年承認)、デュピルマブ(デュピクセント®、2019年承認)の4種類が使用できるようになりました。いずれも抗がん剤に匹敵するような高価な薬剤であり、健康保険限度額適用認定を申請しても、患者さんに毎月数万円の自己負担が生じます。
重症喘息の治療には、生物学的製剤が登場する前は経口ステロイド薬(プレドニン®など)を使用するしかありませんでした。数日間単位の内服であれば、経口ステロイドはそれほど問題ではありません。しかし、長期的に内服すると、胃潰瘍や骨粗しょう症などの副作用が無視できなくなります。経口ステロイド薬と比較すると、生物学的製剤は副作用も少なく治療効果も明らかですので、経口ステロイドに替わる治療選択肢として生物学的製剤は有用と考えられます。
これで4つの生物学的製剤が喘息に使用できるようになりました。しかし、各製薬企業がばらばらに薬を開発し臨床試験を行っているため、どの薬がもっとも優れているのか、バイオマーカーによって薬の使い分けが可能なのか分かりません。各薬剤を直接比較するような医師主導臨床試験が今後の課題と考えられます。
中等症から重症のコントロール不良喘息にデュピルマブ(デュピクセント®)は有効(LIBERTY ASTHMA QUEST試験)
N Engl J Med 2018; 378 : 2486 – 96.
背景
デュピルマブはIL-4受容体αに対する完全ヒトモノクローナル抗体であり、IL-4およびIL-13のシグナルをブロックする。コントロール不良の喘息患者に対するデュピルマブが有効で安全かを評価した。
方法
デュピルマブ200 mgまたは300 mgを追加治療として皮下投与する群、それぞれの投与量を合わせたプラセボを投与する群に、2:2:1:1となるように1,902例の12 歳以上のコントロール不良喘息患者を無作為に割り付け、2 週毎に52週間投与した。主要評価項目は対象患者全体において、1年間で重症喘息発作が発生した率および、気管支拡張薬使用前の 1 秒量(FEV1)絶対値が試験開始前から12週間で変化した量とした。副次的評価項目として、血中好酸球数が300/mm3以上の患者において、喘息発作の発生率、FEV1 などが含まれている。喘息コントロール状態とデュピルマブの安全性も評価した。
結果
デュピルマブ200 mgの2週毎投与群では重症の喘息発作の年間発生率は0.46(95%信頼区間 [CI] 0.39~0.53)、プラセボ群では0.87(95% CI 0.72~1.05)であり、デュピルマブ群の方がプラセボ群より47.7%低かった(P<0.001)。デュピルマブ300 mg の2週毎投与群でも結果は同様であった。12週間後の時点で、低用量デュピルマブ群ではFEV1が0.32L増加し(プラセボ群との差0.14L、P<0.001)、高用量デュピルマブ群の結果も同様であった。血中好酸球数が300/mm3以上の患者における重症喘息発作の年間発生率は、低用量デュピルマブ群で0.37(95% CI 0.29~0.48)、プラセボ投与群で1.08(95% CI 0.85~1.38)であり(デュピルマブ群ではプラセボより65.8% [95% CI 52.0~75.6] 低下)、高用量群でも結果は同様であった。治療を開始したのち、デュピルマブ群の52例(4.1%)に血液中の好酸球増加症が出現し、プラセボ群では4例(0.6%)に出現した。
結論
本試験において、デュピルマブを投与された患者ではプラセボよりも重症の喘息発作の発生率が有意差をもって低く、肺機能と喘息コントロール状態も良好であることが示された。治療開始前の血中好酸球数が高値であると、さらに良好な効果が認められた。血中好酸球増加症が患者の一部に認められた。
SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsから資金提供あり。LIBERTY ASTHMA QUEST試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02414854。
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)