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ブデソニド/ホルモテロール配合剤(シムビコート®)の必要時吸入という治療法は、軽症喘息患者さんにとって選択肢となり得るのか(SYGMA1試験)

[2019.05.26]

 

症状が全く無くなったので治療を中止したいという患者さんの気持ちも理解できます。そこで、今回から3回にわたって紹介する論文では、喘息の調子が悪い時だけブデソニド/ホルモテロール配合剤(シムビコート®)を吸入するという治療法を検証しています。昨年の5月にSYGMA1試験とSYGMA2試験、今年5月にはNovel START試験がNEJM誌に発表されました。

 

SYGMA1試験では軽症喘息を対象に、必要時のブデソニド/ホルモテロール配合剤(ICS/LABA シムビコート®)吸入のみ、ブデソニド(ICS パルミコート®)毎日吸入+必要時のテルブタリン吸入(SABA ブリカニール® 〔吸入剤は日本未発売〕)、必要時のテルブタリン吸入のみの3つの治療群を比較しています。簡単に結果をまとめると、喘息の発作を予防、喘息症状を抑える上で最も成績が良かったのはブデソニドの定期吸入でしたが、喘息発作を予防するだけであれば必要時のブデソニド/ホルモテロール配合剤(ICS/LABA シムビコート®)吸入のみでも十分でした。

 

 対象は、欧米での喘息ガイドライン(GINA2012)におけるStep 2の治療が必要な喘息患者さん達でした。Step1ほど軽症ではなく、必要時のSABA(短時間作用型気管支拡張剤)吸入だけではコントロールできない患者さんや、低用量ICSの毎日吸入が必要な患者さんが対象となっています。ICS吸入は78.9%の量が予定通り投与されており、臨床試験ということで患者さん達はかなり真面目に吸入していたと言えるでしょう。現実の臨床では1年間にわたり1日2回のICS吸入を5回のうち1回しか忘れない(=80%)という患者さんを滅多にみないため、実際のICS毎日吸入治療の成績はもっと悪いはずです。つまり、臨床試験ではない診療現場のおいて、ICSを毎日吸入してくださいねと言って処方するのと、調子悪いときにシムビコート®を吸入してくださいねと言って処方するのとで、治療成績に違いがあるかが気になるところです。

 

N Engl J Med 2018; 378 : 1865 – 76.
DOI: 10.1056/NEJMoa1715274

ブデソニド/ホルモテロール配合剤(シムビコート®)の必要時吸入という治療法は、軽症喘息患者さんにとって選択肢となり得るのか(SYGMA1試験)

軽症の喘息に対するステロイド+即効性β2 刺激薬吸入の頓用は、今までの治療法の代替になるかもしれない。

方法

12歳以上の軽症喘息患者を対象とする52 週間の二重盲検試験を実施した。3つの治療グループのうちの一つに無作為に患者を割り付けた。すなわち、プラセボ 1 日 2 回吸入+テルブタリン(0.5 mg)吸入頓用(テルブタリン群)またはプラセボ 1 日 2 回吸入+ブデソニド-ホルモテロール(ブデソニド 200μgとホルモテロール 6μg)吸入頓用(ブデソニド-ホルモテロール群)、ブデソニド(200μg)1 日 2 回吸入+テルブタリン吸入頓用(ブデソニド維持群)のいずれかに割り付けした。主要評価項目は、患者の電子記録上で喘息のコントロール良好な週がどれぐらいあるかについて、ブデソニド-ホルモテロール頓用群がテルブタリン頓用群よりも優れているかを評価することである。

結果

計3,849 人の患者を無作為化して割り付けし、3,836 例(テルブタリン群 1,277 例、ブデソニド-ホルモテロール群 1,277 例、ブデソニド維持療法群 1,282 例)を完全解析と安全性データ集計の対象とした。患者毎に喘息コントロールが良好な週の割合の平均に関して,ブデソニド-ホルモテロール群はテルブタリン群よりも優越性を示したが(コントロール良好な週の割合 34.4% 対 31.1%,オッズ比 1.14,95%信頼区間 [CI] 1.00~1.30,P=0.046)、ブデソニド維持群より劣性であった(それぞれ34.4%と44.4%,オッズ比 0.64,95% CI 0.57~0.73)。年間で重症の喘息増悪の発生率は、テルブタリン群で 0.20、ブデソニド-ホルモテロール群で 0.07,ブデソニド維持群で0.09 であった。つまり、ブデソニド-ホルモテロール群とテルブタリン群との比は 0.36(95%CI 0.27~0.49)、ブデソニド-ホルモテロール群とブデソニド維持群と比は 0.83(95%CI 0.59~1.16)であった。ブデソニド維持群での服薬遵守率は 78.9%であった。ブデソニド-ホルモテロール群での 1 日あたりの吸入ステロイドの測定量の中央値(57μg)はブデソニド維持群(340μg)の 17%であった。

結論

軽症喘息の患者においては、喘息コントロールの良好な週を記載した電子記録による評価をしたころ、ブデソニド-ホルモテロールの吸入頓用はテルブタリン頓用よりも良好に喘息症状がコントロールされていたが、ブデソニド維持療法よりは劣っていた。ブデソニドを含む 2 つの治療群の喘息増悪発生率は同様であり,テルブタリン頓用よりも低率であった。ブデソニド-ホルモテロール頓用による吸入ステロイド投与量はブデソニド維持療法よりも大幅に減少していた。(AstraZeneca 社から資金援助あり。SYGMA 1 臨床研究登録番号 NCT02149199)

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

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