COPD に 対して3 剤同時吸入療法と 2 剤同時吸入療法では治療効果に差があるのか(IMPACT試験)
今回は、この5月から日本でも使用可能となるテリルジー®が承認される根拠となった論文を紹介します。COPDの患者さんは感冒などを契機に増悪し、喘鳴を主とした症状が悪化します。その際には抗菌薬やステロイド薬の投与が必要になり、ひどい場合には入院して治療します。テリルジー®はレルベア®、アノーロ®と比較して、そのようなCOPD増悪を予防する効果を認めました。症状があり(CAT score 10以上)、今までCOPD増悪を経験したことがあるようなCOPD患者さんにはテリルジー®の効果があると思われます。ただし、ICS(吸入ステロイド)が入っているので、肺炎には注意が必要です。
May 3, 2018
N Engl J Med 2018; 378:1671-1680
DOI: 10.1056/NEJMoa1713901
COPD に 対して3 剤同時吸入療法と 2 剤同時吸入療法では治療効果に差があるのか(IMPACT試験)
背景
慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する3 剤併用療法(吸入ステロイド〔ICS〕+長時間作用性抗コリン薬〔LAMA〕+長時間作用性β2 刺激薬〔LABA〕)が、 2 剤併用療法(ICS/LABAまたは LAMA/LABA)と比較して有効かどうかは不明である。
方法
10,355 名のCOPD 患者を対象として、1 日 1 回 52 週間のフルチカゾンフランカルボン酸エステル(ICS)100μg/ウメクリジニウム(LAMA)62.5μg/ビランテロール(LABA)25μg を併用する群(3 剤併用療法群)と、ICS(100μg)/LABA(25μg)を併用する群またはLAMA(62.5μg)/LABA(25μg)を併用する群と無作為化試験で比較した。いずれの治療でも,専用吸入器(エリプタ)により薬剤を投与した。主要評価項目は、治療期間中にCOPDが中等度または重度の増悪をきたす率とした。
結果
中等度または重度のCOPD増悪の発生率は,3 剤併用療法群で0.91/年であったのに対し,ICS/LABAでは 1.07/年 (3 剤併用療法群との率の比 0.85,95%信頼区間 [CI] 0.80~0.90,差は15%,P<0.001)、LAMA/LABA群では 1.21/年 (3 剤併用療法群との率の比 0.75,95% CI 0.70~0.81,差は25%,P<0.001)であった.入院するような重度のCOPD増悪の年間発生率は,3 剤併用療法群で0.13であったのに対し,LAMA/LABA群では0.19(率の比0.66,95% CI 0.56~0.78,差 34%,P<0.001)であった。ICSを用いた群ではLAMA/LABA群よりも肺炎の発生率が高かった。また、生存期間(time-to-first-event)解析によると、3 剤併用療法群の方がLAMA/LABA群よりも肺炎になるリスクは有意に上昇していた(ハザード比 1.53,95% CI 1.22~1.92,P<0.001)。
結論
今回の対象患者において、ICS/LABAまたはLAMA/LABAの 2 剤併用療法と比較して、ICS/LAMA/LABAの 3 剤併用療法は中等度または重度のCOPD増悪の発生率が低下していた。また、LAMA/LABA群よりも3 剤併用療法群ではCOPD による入院の発生率が低下していた。(GlaxoSmithKline 社の研究助成あり。IMPACT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02164513)