メニュー

タバコや大気汚染などが、肺がんや喉頭がんの発生率や死亡率にどれぐらい影響するのか:世界疾病負荷調査2019(Lancet Resp Med誌)

[2021.08.22]

今回紹介する論文は、肺がんや喉頭がんなど呼吸器系のがんの発生率および死亡率と、関連するリスク因子を、世界中の国々と地域で比較した研究です。

発展途上国でも、先進国でも、タバコが呼吸器系ガンのリスクになることは同じです。しかし、問題は途上国で呼吸器系ガンの発生および死亡率が上昇傾向にあることです。

下図のように、タバコが原因の肺がんによる死亡率は、日本や欧米では減少傾向にあります。しかし、アフリカ、インド、中東、中国、東南アジアでは上昇傾向です。中国やインドは人口が多いので、禁煙政策を進めないと、肺がんによる死亡がどんどん増加します。

 

 

呼吸器系ガンの原因はタバコだけではありません。PM10やPM2.5など大気汚染物質もリスクになります。大気を汚さない政策を途上国においても実施する必要があります。途上国の女性にとって、料理が呼吸器系ガンのリスクになっています。屋内で固形燃料を燃やして料理をするからです。汚れた空気がガンのリスクになるという教育も必要なのかもしれません。

 

Global, regional, and national burden of respiratory tract cancers and associated risk factors from 1990 to 2019: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019

1990年から2019年における、呼吸器系のがんと関連する危険因子が世界、地域、国に与える影響:世界疾病負荷調査2019の系統的解析

 

Published online: August 16, 2021

GBD 2019 Respiratory Tract Cancers Collaborators

DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(21)00164-8


概要

背景

呼吸器系のがんを予防・制御・治療することは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標3.4(2030年までに非感染性疾患による早期死亡を3分の1に減らす)を達成するために重要なステップである。今回の研究目的は、1990年から2019年における気管・気管支・肺がん、喉頭がんの疾病負荷とその関連リスクについて、世界、地域、国別に推計することであった。

方法

Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study(GBD)2019の手法に基づき,呼吸器系がん(気管・気管支・肺がん,喉頭がん)の発生率,死亡率,障害を伴う年数,失われた生命年数,障害調整寿命(DALYs)を評価した。各危険因子に起因する気管・気管支・肺がんおよび喉頭がんの死亡数は、204の国と地域から入力されたリスク曝露量、相対リスク、および理論上の最小リスク曝露レベルに基づいて推定され、性別および社会人口統計学的指数(SDI)で層別された。1990年から2019年までのトレンドを、2010年から19年の期間に重点を置いて推定した。

調査結果

世界では、2019年に気管・気管支・肺がんの新規症例が226万人(95%不確実性区間 207~245万)、気管・気管支・肺がんによる死亡者が204万人(188~219万)、DALYsが4590万人(4230~4930万)であった。2019年の世界の喉頭がんの新規症例数は209,000例(194,000~225,000例)、喉頭がんによる死亡者数は123,000例(115,000~133,000例)、DALYsは326万(303~351万)であった。2010年から2019年にかけて、気管・気管支・肺がんの新規症例数は世界で23.3%(12.9~33.6%)増加し、喉頭がんの症例数は世界で24.7%(16.0~34.1%)増加した。世界で過去10年間、男性の気管・気管支・肺がんの年齢標準化罹患率は7.4%(-16.8→1.6)減少、男性喉頭がんの年齢標準化罹患率は3.0%(-10.5→5.0)減少した。しかし、同期間において、女性の年齢標準化罹患率は、気管・気管支・肺がんで0.9%(-8.2~10.2)増加し、喉頭がんで0.5%(-8.4~8.1)減少した。

さらに、気管がん、気管支がん、肺がん、喉頭がんについては、世界レベルでは2010年から2019年にかけて、年齢標準化された罹患率と死亡率が男女合わせて低下していたが、一部の地域、特にSDIレンジの下限に位置する地域では、罹患率が上昇していた。喫煙は、2019年の気管・気管支・肺がんによる全死亡者の64.2%(61.9-66.4)、喉頭がんによる全死亡者の63.4%(56.3-69.3)に寄与していると推定された。男性において、また男性女性を合わせた場合において、2019年のすべてのSDIおよびGBD地域において、10万人あたりの気管・気管支・肺がんによる年齢標準化死亡の主要な特定危険因子は喫煙であった。しかし、女性においては、2019年の低SDIおよび3つのGBD地域(サブサハラ・アフリカ中央部、東部、西部)では、固形燃料による家庭用大気汚染が最大の特異的危険因子であった。

解釈

気管・気管支・肺がんおよび喉頭がんの罹患者数および死亡者数は、過去10年間で世界的に増加している。さらに気になるのは、気管・気管支・肺がんおよび喉頭がんの年齢標準化された発生率と死亡率が、一部の集団、特にSDIの低い集団と女性で増加していることである。このような環境では、喫煙対策、主要な大気汚染源に焦点を当てた大気の質管理プログラム、クリーンエネルギーの普及などの予防策が優先されるべきである。

資金提供

ビル&メリンダ・ゲイツ財団

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

大気汚染についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

院長の著者ページはこちらから

プレゼント原稿が無料でダウンロードできます

 

最新の記事

小児の下気道感染(気管支炎など)に対する抗菌薬は無効(英国プライマリケアでの研究 LANCET誌より)
COVID-19ワクチンの3回目接種によって、重症化と死亡を防ぐ(イスラエルの報告)
新型コロナワクチンの接種時期が2ヶ月違うだけで、デルタ株の感染率と重症化率が異なる(イスラエルからの報告)
サイレントキラーである大気汚染の問題に取り組む時がきた(Lancet Respir Med誌の論説より)
IL-33を阻害する抗体薬イテペキマブは中等症~重症喘息に有効かもしれない(NEJM誌の報告)
睡眠時無呼吸と認知症は関連するのかー睡眠時無呼吸が重症になると、大脳白質病変が増加するー(JAMA誌の報告)
ぜん息も時差ボケをする?(周囲環境とは無関係に、体内時計における夜間に喘息は悪化しやすい;PNAS誌の報告)
ステロイド(ブデソニド)+ホルモテロールの必要時吸入療法は、ブデソニド毎日吸入療法よりも、重度のぜん息増悪をおこしにくい:システマティックレビューおよびメタアナリシス
ハイリスクのCOVID-19患者に対する吸入ブデソニド療法(PRINCIPLE試験;LANCET誌の報告)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) に対する抗体カクテル療法とは;カシリビマブ+イムデビマブ (ロナプリーブ🄬)による治療

ブログカレンダー

2021年12月
« 11月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

HOME

最新の記事

小児の下気道感染(気管支炎など)に対する抗菌薬は無効(英国プライマリケアでの研究 LANCET誌より)
COVID-19ワクチンの3回目接種によって、重症化と死亡を防ぐ(イスラエルの報告)
新型コロナワクチンの接種時期が2ヶ月違うだけで、デルタ株の感染率と重症化率が異なる(イスラエルからの報告)
サイレントキラーである大気汚染の問題に取り組む時がきた(Lancet Respir Med誌の論説より)
IL-33を阻害する抗体薬イテペキマブは中等症~重症喘息に有効かもしれない(NEJM誌の報告)
睡眠時無呼吸と認知症は関連するのかー睡眠時無呼吸が重症になると、大脳白質病変が増加するー(JAMA誌の報告)
ぜん息も時差ボケをする?(周囲環境とは無関係に、体内時計における夜間に喘息は悪化しやすい;PNAS誌の報告)
ステロイド(ブデソニド)+ホルモテロールの必要時吸入療法は、ブデソニド毎日吸入療法よりも、重度のぜん息増悪をおこしにくい:システマティックレビューおよびメタアナリシス
ハイリスクのCOVID-19患者に対する吸入ブデソニド療法(PRINCIPLE試験;LANCET誌の報告)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) に対する抗体カクテル療法とは;カシリビマブ+イムデビマブ (ロナプリーブ🄬)による治療

ブログカレンダー

2021年12月
« 11月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME