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好中球性喘息とは・・・Thorax誌の総説を紹介(その1)

[2021.08.11]

喘息とは

 

簡潔にいうと、何らかの原因で気管支に炎症が起こり、気管支が狭窄する病気が喘息です。そして、炎症が治まると、気管支狭窄が元にもどること(=可逆性の気管支狭窄)が、喘息の特徴です。

 

喘息における気管支の炎症には、大きく分けて2種類あることが分かってきました。「2型炎症」「非2型炎症」です。好酸球(白血球の一種)が主役の2型炎症は病態の解明が進み、生物学的製剤といった治療の選択肢が増えてきています。しかし、非2型炎症については分からないところも多く、治療に難渋することが多いのです。

 

非2型炎症の代表が、好中球性です。好中球性喘息の患者さんの喀痰には好酸球よりも好中球が多く認められ、好中球が主役と考えられます。今回紹介する論文は、好中球性喘息についてまとめた総説です。

 

喘息における好中球:善玉、悪玉、細菌

Neutrophils in asthma: the good, the bad and the bacteria

 

(余談ですが、「続・夕陽のガンマン」の原題「The Good, the Bad and the Ugly」をもじっているようです)

 

Thorax 2021;76:835-844.

http://dx.doi.org/10.1136/thoraxjnl-2020-215986

 

概要を翻訳し、私の解説を加えます。

概要

気道炎症は喘息発症に重要な役割を果たしているが、多様性をもっている。好酸球優位の2型喘息に関しては、吸入コルチコステロイドから新規の生物学的製剤まで、科学的根拠のある有効な治療法が発見されてきた。

しかし、成人喘息患者の約5人に1人は、気道内の好中球の割合が増加していることが示唆されている。このような患者は高齢で、病原菌を気道内に持っている可能性があり、従来の治療法にはあまり反応しない傾向がある。現在のところ、好中球を標的とした生物学的製剤など、これらの患者に特異的な治療法はない。

 

⇨喘息の5人に1人が好中球性(非2型)というのは、私には意外でした。こんなに好中球性が多いのだとすると、今までの診療方針を考え直さなければなりません。ただ、海外では5人に1人でも、日本でもそうなのかデータがありません。

 

好中球は循環血液中の白血球の70%を占め、炎症や感染の際に重要な防御機能を果たす。そのため、好中球を治療薬の標的にするのは問題である。

さらに、好中球の機能は加齢とともに変化し、微生物の殺傷能力の低下、活性酸素の遊離の増加、高齢では細胞外トラップの産生の低下が見られる。そのため、患者の年齢層によって、異なる治療戦略が必要となる可能性がある。

 

⇨白血球の一種である好中球も細胞なので、老化します。年をとると、若いときの同様には、好中球は働いてくれません。

 

成人喘息患者における好中球優位の気道炎症の病因は、好中球による微生物殺傷能力の加齢に伴う低下を補う効果を反映しているのかもしれない。その結果、宿主の気道細胞にバイスタンダーな損傷を与え、その後の粘液分泌過多や気道リモデリングを引き起こす。

しかし、小児の喘息患者では、好中球は病気に負の効果を与えてはおらず、小児では好中球の病原性が低い可能性が考えられる。

 

⇨老化した好中球は、若い好中球と異なり、細菌などに対して効率的な攻撃を与えられなくなっているようです。細菌だけでなく、周りの正常な気管支粘膜にもダメージを与えてしまいます。

 

この総説では、好中球動員のメカニズム、一生における細胞機能の変化、そして現在および将来の喘息管理への影響について検討している。また、オーストラリア、ニュージーランド、北米の先住民族に焦点を当て、世界における好中球性喘息の有病率についても述べる。

その2につづきます

好中球性喘息とは・・・Thorax誌の総説を紹介(その2)[2021.08.15]

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

喘息についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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