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新型コロナワクチンを接種すると、COVID-19の発症を予防し、症状を軽くできる(アメリカ実臨床での研究,NEJM誌より)

[2021.07.22]

日本で使用されている新型コロナワクチン

には、ファイザー社のBNT162b2とモデルナ社のmRNA-1273の2種類があります。両者とも無作為化プラセボ対照第3相試験において,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の発症予防に高い効果(94−95%)があることが示されており、本ブログにおいても紹介しました。

 

BioNTechとファイザーによる新型コロナウイルスワクチンの詳細なデータがNEJM誌より発表

モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは94.1%の有効性(NEJM誌より報告)

 

しかし、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の重症化予防、ウイルスRNAの量、ウイルスRNA検出期間の短縮などについて、mRNAワクチンがどのくらい役立つのか、あまり分かっていませんでした。

 

今回紹介する論文

では、米国の6つの州で、医療従事者、救急隊員、その他の医療最前線で働く人々を対象とした前向きコホート研究を報告しています。

研究の目的は3つありました。第一は、ワクチンを1回もしくは2回接種すると、SARS-CoV-2感染をそれぞれどの程度予防できるのか。第二には、SARS-CoV-2感染が確認された場合,1回または2回のワクチン接種者と、ワクチン未接種者とで、体内ウイルスRNA量は異なるのか。第三には、SARS-CoV-2感染者において、1回または2回ワクチンの接種者と未接種者とで、発熱の頻度、罹病期間は異なるかでした。

 

その結果、mRNAワクチンを2回接種して2週間以上経った完全接種者では91%の感染予防効果を示しました。1回接種または2回接種して2週間未満の不完全接種者でも81%の感染予防効果でした。

この研究では1回接種でも十分な効果を示したことになりますが、デルタ株など強力な変異株を考慮していません。最近の研究では、変異株の予防には2回の接種が必要と報告しています

Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant デルタ変異株に対するCOVID-19ワクチンの効果

DOI: 10.1056/NEJMoa2108891

 

ワクチンを接種したにもかかわらず、SARS-CoV-2 の感染が確認された参加者は少数(16名)しかいませんでした。その少数例の解析において、感染してもウイルスの増殖は抑えられ、有症状期間は短くなったことが示されています。

一回でもワクチンを接種すると、ワクチンを接種していない人と比べて、ウイルス RNA 量が 40%低下し,1 週間以上にわたってウイルス RNA が検出されるリスクが 66%低下、発熱するリスクが58%低下、症状が出た日数が約6日短縮、病気で寝込んだ日数が約2日短縮されました。これは、ワクチンにより重症化リスクを下げられると考えて良いでしょう。

 

 

ワクチンを2回接種して2週間以上経過すれば、新型コロナウイルスに感染するリスクが減少し、たとえ感染しても症状が軽くなります。ワクチン接種により、自分が守られるだけではなく、感染してもウイルスが体内で増殖しにくいため、体内ウイルス量が少なく、他人にウイルスを伝播させる可能性も低くなります。

ただし、ワクチン接種者は、コロナウイルスに感染しても発熱といった症状に乏しく、感染に気づかないことがあることに要注意です。ワクチンを接種した後も、自分が無症状感染者かもしれないと考え、マスク着用など感染対策がしばらく必要だと思います。

 

Prevention and Attenuation of Covid-19 with the BNT162b2 and mRNA-1273 Vaccines

BNT162b2ワクチンおよびmRNA-1273ワクチンによるCovid-19の発症予防と重症化予防

July 22, 2021

N Engl J Med 2021; 385:320-329

DOI: 10.1056/NEJMoa2107058

 

概要

背景

リアルワールド(実臨床)において、2種類のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであるBNT162b2(ファイザー-ビオンテック社)とmRNA-1273(モデルナ社)を投与した場合、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染を予防できるのか、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の重症化を防ぐのかに関する情報は少ない。

 

方法

3,975名の医療従事者、救急隊員、その他の重要かつ最前線で働く人々を対象に、前向きコホート研究を実施した。2020年12月14日から2021年4月10日まで、参加者は毎週,定性および定量的な逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析のために中中鼻甲介鼻腔スワブを提供し、SARS-CoV-2検査を行った.ワクチンの有効性はは100%×(1 ー ワクチン接種者と非接種者におけるSARS-CoV-2感染のハザード比)で計算し、ワクチン接種状態、地域、職種,地域のウイルス流行状況で調整した。

 

結果

204 名(5%)でSARS-CoV-2 が検出され、そのうち完全接種者(2 回目の投与後 14 日以上)が 5 名、不完全接種者(1 回目の投与後 14 日以上,2 回目の投与後 14 日未満)が 11 名、未接種者が 156 名であった。また,接種状況が不明(1 回目の投与後 14 日未満)な 32 名は除外した。調整後のワクチン効果は完全接種者で91%(95%信頼区間[CI],76~97)、不完全接種者で81%(95%CI,64~90)であった。SARS-CoV-2に感染した参加者において、不完全または完全接種者の平均ウイルスRNA量は、未接種者に比べて40%低かった(95%CI,16~57)。さらに、発熱リスクは58%低く(相対リスク,0.42;95%CI,0.18~0.98)、罹病期間が短く、寝込んでいた日数が2.3日少なかった(95%CI,0.8~3.7)。

 

結論

認可されている mRNA ワクチンはリアルワールドにおいて就労成人の SARS-CoV-2 感染予防に高い効果を示し、ワクチン接種後に感染した人のウイルス RNA 量、発熱リスクおよび罹病期間を減少させた

 

資金提供

国立予防接種呼吸器病センター(National Center for Immunization and Respiratory Diseases)

アメリカ疾病予防管理センター (Centers for Disease Control and Prevention)

 

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

 

COVID-19ついても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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