新型コロナは心臓病、がんに次ぐ死因第3位(JAMA誌より米国の報告)
2021年4月現在、新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数が世界で最も多い国が米国です。その米国から2020年の暫定死亡統計が発表されました。
それによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が死因第3位に突如として現れました。予想された事態とはいえ、ここまでとは思わず、正直驚きました。
以下に、全文を翻訳、私なりの解説を加えます。
The Leading Causes of Death in the US for 2020
2020年米国における主要死因
Farida B. Ahmad, MPH; Robert N. Anderson, PhD
Published Online: March 31, 2021. doi:10.1001/jama.2021.5469
「人口統計データは、毎年の死亡率を最も完全に評価できるものであり、公衆衛生上のパンデミック時の直接的および間接的な死亡率を測定する上で重要な役割を果たす。これまで死亡率の統計は毎年行われてきたが、COVID-19の大流行により米国保健統計センター(NCHS)の全国人口統計システム(NVSS)は、信頼性の高い暫定死亡率データを迅速に発表することに迫られた。暫定的な推計では2020年の死亡者数は2019年と比較して17.7%増加し(年齢調整後死亡率の増加は15.9%)、多くの主要死因で増加している。2020年の主要死因ランキング(暫定版)によると、COVID-19は米国で心臓病、がんに次ぐ第3位の死因となった。」
⇨2020年米国の暫定的な死亡統計が発表されました。米国は世界で最も新型コロナウイルスが流行している国であり、感染者数と死亡者数がともに世界一となっています(2021年4月時点)。その影響が死亡統計にすでに現れており、死因第3位がCOVID-19という驚くべき事態となっています。
NVSSによる死亡データ
NVSSは、米国50州およびコロンビア特別区で提出された死亡証明書に基づく生命統計の収集、処理、集計、普及を行っている。死亡証明書に記載されている死因は、「疾病および関連保健問題の国際統計分類第10版」に従ってコード化されています。 死因データは、死に至る一連の出来事を引き起こす原因となった疾病または病状である根本的な死因に基づいている。ここに掲載されている死亡率の統計は、2021年3月21日時点で各州からNCHSに提供されている死亡証明書のデータに基づいた暫定的なものである。最終的な死亡率データは、データ年度終了から約11カ月後に入手可能となる。
⇨日本でいうところの死亡診断書に記載されている死因に基づいて、統計を取っています。最終データは約1年後にでるようです。
死亡率の傾向の変化
米国居住者の中で2020年に米国内で死亡した人数の暫定値は3,358,814人で、2019年の2,854,838人から503,976人(17.7%)増加した(表)。今までの死亡率の推移を見ると、1年を通して死亡者数には季節性があり、冬に死亡者数が多く、夏に死亡者数が少なくなる。2015年から2019年までの週別の死亡数は通常の季節パターンに従っており、第1週から第10週(n=58,366)および第35週から第52週(n=52,892)の平均死亡数は、第25週から第34週(n=50,227)よりも高かった。一方、2020年の死亡者数の増加は3つの異なる波に分かれており、、第15週(n=78,917)、第30週(n=64,057)、第52週(n=80,656)をピークとし、最後の波のみが過去の季節パターンと一致した。
⇨2020年の死亡者数は2019年より約50万人増加していました。2019年までは冬に死亡者数が増加したのに、2020年だけは4月4~10日(第15週)、7/18-24(第30週)に多いパターンを示しました。これは、新型コロナが冬だけではなく、春や夏にも流行することと関連があると思われます。
表. 主要死因による死亡者数(米国、2015年~2020年)
主要死因の推移
表には、2015年から2020年までの米国における主要な死因も表示されいる。 暫定データによると、2019年と比べて2020年の死亡者数や死因順位に顕著な変化が見られた。COVID-19は2020年の死因第3位であり、推定死亡者数は345,323人、2019年から2020年にかけての総死亡者数の大幅な増加に大きく関与していた。その他いくつかの主要な死因でも2019年から2020年への大幅な増加が起きていた。心臓病による死亡者数は4.8%増加しており、2012年以降で最大の増加となった。不慮の事故(11.1%)、アルツハイマー病(9.8%)、糖尿病(15.4%)でも死亡者数が増加した。2020年のインフルエンザおよび肺炎による死亡者数は2017年および2018年に比べて減少したものの、2019年より7.5%増加した。2019年から2020年にかけて、慢性下気道疾患による死亡は3.4%減少し、自殺による死亡は5.6%減少した。
⇨2020年の米国死因ランキングに突如としてCOVID-19が出現し、約35万人が亡くなりました。このようなことは100年前のスペイン風邪以来ではないでしょうか?心臓病、不慮の事故、アルツハイマー、糖尿病による死亡も増加しています。
パンデミックの状況下での死亡数の理解
主要死因における死亡数の推移は、死亡パターンの変化を示す重要な指標である。COVID-19のパンデミック期間において、主要死因が変化したという知見により、パンデミックが死亡負荷に与えた直接的および間接的な影響をうかがい知ることができる。2019年から2020年にかけての死亡数の増加は、ほとんどがCOVID-19に直接起因するものであった。しかし、他のいくつかの主要死因でも増加が見られた。これらの増加はある程度COVID-19の報告不足を示している可能性がある。つまり、パンデミック初期には検査数が限られていたため、COVID-19による死亡数が過小評価されていた可能性がある。その他の主な死因、特に心臓病、アルツハイマー病、糖尿病の増加は、早期発見や治療管理を妨げた医療崩壊を反映している可能性がある。2020年の不慮の事故による死亡数増加は、主に薬物の過剰摂取によるものである。最終的な死亡統計において、薬物過剰摂取による死亡が同時に増加傾向であれば、パンデミックの影響かどうか判断するのに役立つであろう。
⇨2019年と比べ、2020年の米国内死亡者数は約50万人も増え、そのうち約35万人がCOVID-19が原因だったという事実。心臓病などその他の死因も増加しています。医療が崩壊すれば、他の病気の治療の妨げになり、さらに死亡数が増加するという予測されていた事態が米国では現実化しているのです。
現在(2021/4/11)、COVID-19による米国死亡者数は56万人にさらに増加しています。日本におけるCOVID-19死亡者数も1万人弱に増加してきました。
「暫定的な全国死亡統計によると、COVID-19パンデミックは2020年の死亡数に大きな影響を与えた。2020年1月から6月までの暫定データに基づく、出生時平均余命の初期推定値は第二次世界大戦(1942年から1943年)以来の歴史的な減少を示している。COVID-19は今年すでに10万人以上の死亡者を出しているため、パンデミックの影響は2021年も続くと考えられる。しかし、死亡トレンドに対するCOVID-19による影響は、自然免疫やワクチン関連免疫の上昇、検査法や治療法の改善により、2021年には緩和される可能性がある。」
⇨2020年1〜6月のデータから、新生児があと何年生きられるかを推計すると、第2次世界大戦の時代と同じとのこと。検査、治療、免疫(ワクチン)という3つの武器がウイルス対策には必須です。
文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)
新型コロナウイルスについても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから