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イスラエルでの新型コロナウイルスワクチン集団接種の有効性(NEJM誌の報告)

[2021.02.28]

 

BioNTechとファイザーによる新型コロナウイルスワクチンの詳細なデータがNEJM誌より発表 2020.12.13

モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは94.1%の有効性(NEJM誌より報告)2021.01.10

 

ランダム化臨床試験はエビデンスレベルが高く、薬剤の承認には必須のデータです。ファイザー社のmRNAワクチンの第3相試験には、ワクチン接種群、ワクチン非接種群にそれぞれ約2万人と比較的多数の参加者が登録されました。しかし、患者背景別の解析では人数が少なく確定的なことが言えなかったり、状態が安定していない合併症をもつ人は参加できなかったり、臨床試験と実際の集団接種では結果が異なることが否定できません。

 

今回は、新型コロナウイルスワクチンの集団接種が世界で最も進んでいるイスラエルからの報告を紹介します。2020年12月20日から2021年2月1日までにワクチン接種を受けた約60万人と、年齢性別や居住環境、併存疾患の数などの背景を一致させたワクチン未接種者を約60万人を抽出し、その後のCOVID-19の状況を調査しています。

 

 

その結果、ワクチンを接種することにより、COVID-19のPCR陽性者を92%、症候性のCovid-19を94%、COVID-19による入院を87%、重症のCovid-19を92%抑えることができました

 

ここでは、無症候性のCOVID-19感染も抑えることができることが示されています。これは、前述の第3相試験では評価されなかった項目であり、重要な情報かと思われます。ただ、COVID-19のPCR検査を参加者全員に対して定期的に行ったわけではなく、解釈に注意が必要です。発熱や咳などCOVID-19を疑う症状ではない何らかの軽微な症状がある人や、発症前の感染を疑う人に対して、医師や看護師の判断でPCR検査を行ったと論文に記載されています。

 

BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting

全国的な集団接種における新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2mRNA)の効果

 

February 24, 2021

DOI: 10.1056/NEJMoa2101765

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2101765?query=TOC

 

概要

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対する集団予防接種キャンペーンが世界中で開始されるにつれ、治験のように管理されていない環境における多様な集団、様々な項目について、ワクチンの有効性を評価する必要がある。 本研究では、イスラエル最大の医療機関からのデータを使用して、BNT162b2 mRNAワクチンの有効性を評価した。

 

方法

2020年12月20日から2021年2月1日までの間に、初回の予防接種を受けた全員と、人口統計学的および臨床的特徴によって対照として選んだワクチン未接種の人を、1:1の比率でマッチさせた。 研究評価項目には、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染の記録、症候性Covid-19、Covid-19関連の入院、重症化、および死亡が含まれた。 カプランマイヤー法を使用して、各評価項目に対するワクチンの有効性を、1からリスク比を引いたものとして推定した。

 

結果

各群596,618人が登録された。 初回ワクチン投与の14日から20日後、および2回目のワクチン投与の7日後以上において、それぞれの評価項目に対するワクチンの推定有効率は次のとおりであった:記録された感染について、46%(95%信頼区間[CI]、40~51)および 92%(95%CI、88〜95);症候性Covid-19について、57%(95%CI、50〜63)および94%(95%CI、87〜98);入院について、74%(95%CI、56~86)および87%(95%CI、55~100); 重症化について、それぞれ62%(95%CI、39〜80)および92%(95%CI、75〜100)。 Covid-19による死亡を予防する効果の推定値は、初回ワクチン投与の14日から20日後で72%(95%CI、19~100)であった。 記録された感染および症候性Covid-19について、特定の亜集団において評価された有効性の推定値は、年齢別のグループ間では一致しており、複数の合併症をもつ人では潜在的にわずかに低かった。

 

結論

全国的なワクチン集団接種の設定で行った本研究は、BNT162b2 mRNAワクチンがCovid-19に関連する広範囲の項目で有効であることを示唆しており、ランダム化試験の結果と一致していた。

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

COVID-19についても言及している拙著「その息切れはCOPDです ―危ない「肺の隠れ慢性疾患」を治す!」はこちらから

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