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モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンは94.1%の有効性(NEJM誌より報告)

[2021.01.10]

 

今回のモデルナ社のワクチンはファイザー社と同じmRNAワクチンであり、構造はほぼ同じです。論文を見る限り治療効果や副反応も見分けがつかないほどほとんど同じです。

 

まずは、同じNEJM誌に掲載されたHaynes氏による論説(Editorial)から抜粋して翻訳します。

A New Vaccine to Battle Covid-19.COVID-19と戦うための新しいワクチン DOI: 10.1056/NEJMe2035557

なお、2020/12/28 日本感染症学会が「COVID-19ワクチンに関する提言」を出していますので、こちらも参照してください。

 

「米国および世界の多くの地域では、SARS-CoV-2が経呼吸器的に伝染し、マスク着用やソーシャルディスタンスなどの効果的な公衆衛生対策を一貫して実施していないため、COVID-19パンデミックの制御ができなくなっている。SARS-CoV-2に感染した人は無症状であることが多いが、呼吸器系のウイルス量が多く、ウイルス拡散の主要な媒介者となっている。これらの要因により、現在ではCOVID-19による入院と死亡が爆発的に増加しており、COVID-19は米国での主要な死因となっている。私たちの唯一の希望は、安全で効果的なワクチンを広く普及させ、ウイルスの蔓延を抑制できる集団免疫を獲得することである。」

⇨新型コロナ感染者は無症状であることが多く、公衆衛生対策では限界があります。ワクチンによる集団免疫が必要です。

 

「最近、2つのワクチンの有効性試験が完了し、食品医薬品局(FDA)から緊急使用承認を取得した。承認を受けた最初のワクチンであるファイザー社とビオンテック社による脂質ナノ粒子(LNP)中のmRNAワクチンBNT162b2は、95%のワクチン効果を示した。本日のNEJM誌においては、2番目のmRNA-LNPワクチン、モデルナ社による「mRNA-1273」の有効性を立証する試験結果を発表した。mRNA-1273コロナウイルス有効性試験(COVE試験)では、30,420名のボランティアがワクチンまたはプラセボのいずれかの投与を受ける群に無作為に割り付けられた(各群15,210名)。プラセボ群の185人、mRNA-1273群の11人に、症状のあるCOVID-19が確認され、ワクチンの有効率は94.1%(95%信頼区間、89.3~96.8)であった。18歳以上65歳未満では95.6%、65歳以上では86.4%の有効率であった。モデルナのワクチンと ファイザー-ビオンテックのワクチン両方とも、1 回目の接種から約 10 日後に予防効果が始まり、2 回目の接種で最大の予防効果が得られる。」

⇨モデルナのワクチンは94.1%の有効率でした。ワクチン接種後に発症したCOVID-19患者は11人いましたが、すべて軽症でした。

 

⇨累積発生率をみると、2回目のワクチン接種前の20日目頃から2つのグラフに明らかな差が開き始めています。

 

「mRNA-1273ワクチンの2ヶ月間(中央値)の追跡調査における安全性プロファイルでは、安全性に関する懸念は認められなかった。注射後28日間における有害事象の自発的報告および重篤な有害事象の頻度は、ワクチン群とプラセボ群でほぼ同じであった。注射部位での有害事象の非自発的報告の頻度はプラセボ群よりもワクチン群の方が高く、2回目の接種後に88.6%の人に発生していた。」

⇨2ヶ月間の観察では、問題となる大きな副反応はありませんでした。

 

「SARS-CoV-2パンデミックを抑えるためにCovid-19ワクチンの可能性については、大きな問題がいくつか残っている。
 第一に、SARS-CoV-2に対する予防的免疫反応の性質はどうか、持続期間はどれくらいあるのか?ワクチン接種されたサルにおける研究結果では、SARS-CoV-2に対する中和抗体が予防の主な機序であり、CD8 T細胞反応が防御を増強することを示唆している。中和抗体がどのくらいの期間持続するかはまだ不明だが、第 1 相試 験の追跡調査では2 回目のワクチン投与後 3 ヵ月間は中和抗体が持続していた。」

 ⇨ワクチン接種によって中和抗体が体内で産生され、感染を予防すると考えられています。中和抗体が何ヶ月もしくは何年間もつのか、まだはっきりとはわかりません。もし半年しか中和抗体がもたないとすると、4週間あけて2回、半年ごとに接種しないといけなくなるのでかなり大変です。インフルエンザワクチンのように1年毎くらいが実現可能な接種スケジュールではないでしょうか。

 「第二に、ワクチン投与群の方に免疫反応がよくみられたため、軽い症状がでても Covid-19 によるものであるとは考えずに、コロナ検査を受けるために来院しなかった可能性がある。」

⇨参加者にはワクチンを投与されたのか、偽薬(生理食塩水)を投与されたのかわからないようにしています。しかし、ワクチンを投与された方が注射部位が痛くなったり赤く腫れたりする確率が高く、自分はワクチンを投与されたに違いないと思う人がいてもおかしくありません。ワクチン投与されると重症にならないはずだから、検査しに行かなくてもいいかと考えた人がいるかもしれません。そうすると、ワクチンの有効率が実際より高くなってしまいます。

「第三に、防御免疫反応から回避するウイルスの解析と、まれな安全性イベントの長期追跡調査が必要である。」

⇨ワクチンが効かなかったウイルスはどういうものなのか、2ヶ月ではなく半年後や1年後に副反応がでないのか確認する必要があります。

 「最後に、この試験ではmRNA-1273が無症候性感染を予防できるかどうかを判断するためのデータは得られていない。この疑問に答えるために設計された研究が現在進行中または計画されている。」

⇨今回の94%という有効率は、症状のあるCOVID-19を予防できたという数字です。症状のないCOVID−19は予防できていないかもしれません。もしそうであれば、ワクチンを集団接種しても無症状感染者を予防できず、COVID-19は終息しない可能性があります。

「mRNA-1273COVID-19ワクチンとBNT162b2COVID-19ワクチンは、ほぼ同じ94~95%のワクチン効果を示し、両方のワクチンが1年以内に開発・試験されたことは、科学的にも医学的にも驚異的な勝利といえる。これは、科学界がHIVやインフルエンザ、RSウイルス、ジカウイルスなどの他のワクチンの技術開発に長年の準備をしていたことと、Covid-19の有効性試験を迅速に実施する臨床試験コンソーシアム(共同事業体)が設立されていたためである。もしmRNA-LNPワクチンがパンデミックの制御に大きく貢献するならば、mRNA技術は将来のウイルス感染症の発生に対するワクチン設計を根本的に変える可能性を秘めている。」

⇨このワクチンが成功すれば、mRNAワクチンが今後の主流になっていくのかもしれません。

 

「現在、Covid-19パンデミックが猛威を振るっているが、今回のパンデミックと将来のパンデミックを制御する見通しは明るい。先日、非常に予防効果の高い今回のワクチンのために緊急使用承認をFDAが発出したことは、多くの人々が苦しんでいる時に、とても必要とされている希望を私たちに与えてくれる。次の課題は、今回のワクチンと次のCOVID-19ワクチンを、最も危険にさらされている人々にできるだけ早く届けることである。」

⇨効果が高く、問題となる副反応のないワクチンであることを期待しています。

 


次に、本論文の要旨を翻訳しました。

ORIGINAL ARTICLE

Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine

mRNA-1273 SARS-CoV-2ワクチンの有効性と安全性について

December 30, 2020

DOI: 10.1056/NEJMoa2035389

 

要旨

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)を予防し、合併症のリスクが高い人を守るためにはワクチンが必要である。mRNA-1273ワクチンは脂質ナノ粒子カプセル化mRNAベースのワクチンであり、Covid-19の原因である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の膜融合前の安定化スパイク蛋白の全長をコードする。

 

方法

この第 3 相無作為化、観察者盲検、プラセボ対照試験は、米国内の 99 施設で実施された。SARS-CoV-2感染リスクまたはその合併症リスクが高い人を1:1の割合で無作為に割り付け、mRNA-1273(100μg)を28日間隔で2回筋肉内注射する群とプラセボを28日間隔で投与する群に分けた。主要エンドポイントは、SARS-CoV-2 に感染したことのない参加者において、2 回目の注射から14 日以上経ってから発症するCovid-19の予防とした。

 

結果

この試験では、30,420人のボランティアが登録され、1対1の割合でワクチンまたはプラセボのいずれかの投与を受けるように無作為に割り付けられた(各群15,210人)。96%以上の参加者が両方の注射を受け、ベースライン時にSARS-CoV-2感染の証拠(血清学的、ウイルス学的、またはその両方)を持っていたのは2.2%であった。症状のあるCovid-19感染がプラセボ群の185人(1000人年あたり56.5人;95%信頼区間[CI]、48.7~65.3)およびmRNA-1273群の11人(1000人年あたり3.3人;95%CI、1.7~6.0)で確認され、ワクチンの有効性は94.1%(95%CI、89.3~96.8%;P<0.001)であった。主要な副次的解析、すなわり初回接種から 14 日後の評価、ベースライン時に SARS-CoV-2 感染の証拠を有する参加者を含む解析、65 歳以上の参加者を対象とした解析において、有効性は同様であった。重症Covid-19は30人の参加者に発生し、1人が死亡した;30人全員がプラセボ群であった。ワクチン接種後の中等度で一過性の反応原性は、mRNA-1273群でより頻繁に発生した。重篤な有害事象はまれであり、発生率は両群で同程度でした。

 

結論

mRNA-1273 ワクチンは、重症を含むCOVID-19の予防に 94.1%の有効性を示した。一過性の局所反応および全身反応を除き、安全性に関する懸念は認められなかった。(アメリカ生物医学先端研究開発局および国立アレルギー・感染症研究所より資金提; COVE ClinicalTrials.gov番号、NCT04470427)

文責:院長 石本 修 (呼吸器専門医)

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