喘息とは?
喘息(ぜんそく)は、アレルギー疾患の一種であり、何らかのアレルギー反応を持つ人によく見られる病気です。
喘息の人は通常、普段の生活には支障をきたしませんが、何らかの誘因によって咳が止まらなくなったり、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴)が聞こえたり、呼吸が困難になったりすることが特徴です。
気管支喘息とセキ喘息の違い
気管支喘息とセキ喘息はともに同じ原因で起こる疾患であり、診断や治療方針には違いがありませんが、症状の表れ方が異なります。セキ喘息は咳だけが症状として現れ、気管支喘息は咳に加えて喘鳴や呼吸困難などの症状が伴います。
セキ喘息であっても軽症であるとは限らず、重症化することもあります。また、気管支粘膜に不可逆的な変化(リモデリング)が起こり、発作がなくても症状が持続することもあります。
長期間にわたる咳や喘息の症状にお悩みの方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
喘息の症状と特徴
喘息の症状が急に現れることを発作と呼びます。患者さんによって症状の程度は異なりますが、喘息の発作によく見られる症状は次の3つです。
- 息苦しい感じがする。
- ゼイゼイする呼吸音がする。
- 咳が出て、止まらないことがある。
これらの典型的な症状があると、喘息の可能性が疑われます。
息苦しい
炎症によって気道が狭くなり、それが原因で十分な呼吸ができずに息苦しく感じます。息を吐くときに苦しいと感じる人もいれば、息を吸うときに息苦しさを感じる人もいます。
また、横になると症状が悪化することがあり、寝るとますます苦しく感じることもあります。このため、十分な睡眠をとることが難しくなり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
夜間や早朝に息苦しさを感じる方は、できるだけ早く医師に相談してください。
息をするときにゼイゼイする
息をするときに、のどや胸からゼイゼイ・ヒューヒューといった音が聞こえることがあります。これを喘鳴(ぜんめい)と呼びます。
特に子どもの場合は、気道が細いため、喘息以外の呼吸器疾患でも喘鳴が起こりやすい傾向にあります。しかし、大人の場合は、喘鳴があるときは喘息の可能性が高いです。
また、喘鳴に加えて次のような症状もよく見られます。
- のどや胸がゴロゴロする感じがする。
- 痰が絡むような咳が出る。
これらの症状がある場合は、胸やのどに不快感を感じることがよくあります。
咳が出る
激しい咳が出て、止まらなくなることがあります。特に運動など激しい動作をするときや、冷気や煙にさらされたときに息苦しくなり、咳が出やすくなることがあります。
また、以下のような症状も喘息を疑う要因となります。
- 夜、寝ていても咳で目が覚めることがある。
- 明け方に症状が悪化する。
- 3週間以上、咳が続く。
これらの症状にお悩みの方は、生活に支障をきたす前に一度当院で検査を受けることをおすすめします。
喘息の原因
喘息はアレルギー疾患の一つですが、実際には検査をしても原因となるアレルゲンが特定できない場合もあります。
アレルゲンが特定できるタイプを「アトピー型喘息」、特定できないタイプを「非アトピー型喘息」と呼びます。どちらも発作が起こる原因は炎症であり、その点では同じです。
一部の患者さんは「風邪をひいたときだけ喘息になる」と考えていますが、風邪の時だけ炎症が引き起こされ、喘息になるわけではありません。実際に、喘息の症状があってもなくても、喘息患者さんの気管支粘膜は慢性的に炎症を起こしています。風邪ウイルスの感染が加わると、炎症が悪化し、気管支の内側が肥厚して狭くなります。その結果、喘鳴や咳などの症状が現れることになります。
喘息の検査診断
咳や呼吸の困りごとは呼吸器科へ
喘息の診断には決め手となる検査や数値がありません。日本喘息学会は、詳細な問診が喘息の診断に重要だと指摘しています。まず、喘息の症状(喘鳴、咳、痰、胸苦しさ、息苦しさ)があるかを確認し、胸部X線写真や胸部CTで異常がないことを確認します。また、吐く息の中の一酸化窒素(NO)濃度を測定する呼気NO検査を行い、高い値が出た場合は喘息の可能性が高いと考えられます。さらに、肺活量や呼気の速さから呼吸機能を評価する「呼吸機能検査」を行うこともあります。また、喘息にはアレルギーが関わっていることが多いので、アレルギーの有無を調べることも役立ちます。ただし、アレルギーがあるからといって必ずしも喘息と診断されるわけではないので注意が必要です。
以下のような問診や検査結果を考慮して、喘息の可能性が高い場合は治療を開始します。
問診で生活全般の様子を確認
- 過去に吸入ステロイド薬を使って症状が良くなった経験があるか
- 喘鳴を感じたことがあるか
- 3週間以上続く咳や夜間の咳の経験があるか
- 症状が一日の中で変動するか
- 症状に季節の変化があるか
- 香水や線香などの香りで症状が出るか
など、詳しく確認します。
喘息は体質や環境と密接に関係しています。症状だけでなく、日常の生活や習慣なども詳しくお聞きすることで、検査結果や診察から総合的な判断ができます。
呼吸器の検査
呼気中の一酸化窒素(NO)検査や、気管支拡張剤を吸入した前後の呼吸機能検査、血液中の好酸球数などの検査結果を参考にします。また、症状が再発した際に喘息治療が効果的であるかを確認します。これらのプロセスを経て、喘息という診断を確定していきます。
喘息は診断や完治が困難な病気?
喘息は個々の患者によって異なる増悪因子を持っているため、診断や治療が難しいとされています。
たとえば、ダニに対するアレルギーが喘息の原因である場合、ダニに対するアレルゲン免疫療法(減感作療法)を行うことで、喘息を根治できる可能性があります。しかし、喘息の原因はさまざまで、単一の原因で発症するわけではありません。
喘息の気管支粘膜では、白血球の一種である好酸球が活性化されている好酸球性炎症が特徴とされています。この炎症はアレルゲンだけでなく、喫煙や大気汚染、ウイルス感染などによっても誘発されます。さらに、一部の喘息患者さんは好酸球性炎症ではなく、好中球が多い好中球性炎症が気管支粘膜に生じていることが分かっています。
喘息の治療
薬物療法と生活習慣の改善の両立が大切
喘息の管理目標は、日本アレルギー学会によると、「症状のコントロール」と「将来のリスク回避」の2つが挙げられています。
喘息を完治させるのは難しいですが、症状が出ないようにコントロールして、健康な人と同じような日常生活を送ることが最初の目標です。これにより、増悪(発作)や喘息による死亡を予防し、将来の呼吸機能低下を抑えることが目指されます。
危険因子をできるだけ除去または回避し、適切な薬物治療を行うことで、気管支の炎症を鎮めて気道を正常に拡張させることが、症状をコントロールするための重要な方法です。
喘息は体質や環境と密接に関わっているため、薬物治療だけでなく、日常生活での自己管理も非常に重要です。どちらか一方にだけ力を入れても、良い治療結果は得られません。無理をして生活すると、薬だけでは症状をコントロールするのが難しくなります。同様に、生活改善に力を入れても、薬を自己判断で中断すると再び発作を引き起こすリスクがあります。薬物療法と生活上の自己管理の両方が重要であり、バランスを保つことが重要です。
喘息の薬物療法について
喘息の可能性がある場合、医師は吸入薬を処方します。3日以上吸入薬を使って症状が改善すれば、喘息の可能性が高いですが、まだ確定ではありません。
喘息の治療では、気管支の慢性炎症を抑える吸入ステロイド薬が主に使われます。吸入薬は直接気管支の炎症に作用するため、内服薬よりも効果が高く、全身への副作用を最小限に抑えることができます。喘息の症状が十分にコントロールできない場合には、吸入気管支拡張剤や抗アレルギー薬を追加することがあります。現在、さまざまな吸入薬が開発されており、患者さんのニーズや好みに合わせて、適切な薬を選ぶことができます。
生活習慣の改善について
普段の生活習慣には、発作の原因が潜んでいることがあります。アトピー型や非アトピー型の方も、自分の生活スタイルを見直して改善しましょう。
喘息の悪化につながる生活の中のいくつかの原因を紹介します。
喫煙
タバコの煙には有害な物質が含まれており、気道の炎症を悪化させ、咳や痰の症状を引き起こす可能性があります。また、吸入ステロイド薬の治療効果を低下させることが知られています。喘息を持っている人は禁煙が重要です。受動喫煙にも注意が必要なので、周囲の人にも協力してもらいましょう。
過度なアルコール摂取
アルコール誘発喘息と呼ばれる現象があります。多くの人がアルコールを摂取すると喘息の症状が悪化することが報告されています。普段からよく飲む方やお酒に強いと思っている方でも、飲み過ぎには気をつけましょう。お酒が苦手な方や控えている方は、禁酒を試してみることも治療の一つです。
過労やストレス
不規則な生活を送ると、喘息が悪化するだけでなく、体の抵抗力も低下します。体調を崩しやすくなるため、過密なスケジュールや寝不足には注意が必要です。
また、過度なストレスも気道を収縮させ、喘息の発作を引き起こす大きな要因です。不安や心配から寝つきが悪くなり、喘息が悪化するという悪循環に陥ることもあります。
無理をせずに適度に休息をとり、ストレスを溜め込まないようにすることが大切です。不安や心配事があれば、遠慮なく相談してください。
喘息に関するよくあるご質問
大人の喘息は治りますか?
子供の喘息と比べると、完治が難しい病気です。
幼少期に喘息と診断された子供が、成長に伴い、治療をしなくても喘息発作が起こらなくなることがあります。しかし、中学生以上で喘息が始まった場合、喘息の完治は難しく、一度良くなったとしても、数か月や数年後に再発することがほとんどです。
喘息の発症や悪化には、様々な要因が関与します。アレルゲン(ダニやハウスダスト、花粉など)、大気汚染、タバコの煙、ペット飼育、肥満、睡眠時無呼吸症、鼻炎、胃食道逆流症、感冒、飲酒、ストレス、運動、気象変化などがあります。これらの要因を一つずつ排除することで、喘息の悪化や発作を予防することが可能です。
喘息の薬には何がありますか?
主に吸入薬(気管支に直接噴霧する薬)が使われます。
吸入薬には、ICS(吸入ステロイド)、LABA(長時間作用型β2刺激薬)、LAMA(長時間作用型ムスカリン拮抗薬)の3つの種類があります。これらの薬は、患者の状態に応じて選択されます。軽度の喘息には通常、最初にICSが使われます。喘息の症状がコントロールできない場合、LABAを追加し、それでも改善しない場合は、さらにLAMAを追加することがあります。
薬を追加する場合、ICSとLABAを別々に吸入することもできますが、患者さんにとって手間がかかります。そのため、ICSとLABAが混合された吸入薬がよく利用されています。最近では、ICSとLABA、LAMAの3つが一つになった吸入薬も販売されています。
吸入薬以外にも、抗ロイコトリエン拮抗薬やテオフィリン製剤といった内服薬があり、必要に応じて処方されます。
自分で喘息かどうか分かる方法はありますか?
喘息の原因はさまざまです。疑わしい場合は早めに医師の診察を受けましょう。
症状や検査結果だけでは喘息と診断できません。呼吸がゼーゼーするなどの症状があれば喘息を疑うことはできますが、それだけでは確定できません。喘息の診断には何週間も時間がかかることも少なくありません。
自分で喘息を疑った場合は、早めに医師の診察を受けることをお勧めしますが、症状を自覚してすぐに受診しても、すぐに診断が出るとは限りません。治療をしながら、診断を確定していくことも珍しくありません。
心臓喘息という病気を聞いたことがあるのですが、普通の喘息と違うのでしょうか?
心臓喘息は、気管支喘息やセキ喘息とは全く異なる病気です。
心臓の機能が低下し、心不全の状態になると、肺に水がたまります。この水のような痰によって気管支が狭くなり、呼吸音がゼーゼー・ヒューヒューと音がするようになるため、喘息という言葉が使われています。治療方針が全く異なるため、喘鳴を来した患者を診るときには、まず心臓喘息を否定することが必要です。